参院選「違憲状態」 再びの警告受け止めよ

朝日新聞 2014年11月27日

参院違憲状態 国民の代表といえるか

鳥取で16万票得た候補が当選し、東京で55万票の候補が落選した。一人ひとりの投票価値に最大4・77倍の差があった。

昨年7月の参院選について、最高裁はきのう、違憲状態にあったと判断した。

最高裁は2年前、一票の格差が最大5・00倍だった10年の参院選について違憲状態とし、都道府県単位の区割りを改める抜本改正を促した。

しかし、参院は「4増4減」の手直しでとどめた結果、5倍近い格差を温存してしまった。今回の判決が「違憲状態解消には足りない」と断じるのも、もっともだ。

参院の一票の格差がここまで開くのは都道府県ごとに選挙区とし、半数ずつ改選するため、最低2人を割り振るためだ。

この点、判決は改めて都道府県単位の区割りの見直しに言及した。これを避けては是正は無理と考えてのことだろう。

違憲状態ではなく違憲だったと厳しく判断した少数派の中には、格差の大きい一部の選挙区について、選挙無効とまで踏み込む裁判官もいた。国会は「次はない」と覚悟するべきだ。

前回参院選後も、選挙制度の改正議論は滞ったままだ。

今年4月、参院選挙制度協議会で座長の脇雅史・自民党参院幹事長(当時)は、鳥取と島根など22府県の選挙区を統合する合区案を示した。しかし、自民党内の反発が強く、逆に本人が事実上更迭された。

参院が自ら抜本改革をしてのぞむと決めた次の参院選は、16年夏に迫っている。このままでは間に合わないのではないか。

「良識の府」と呼ばれた参院だが、選挙区と比例区からなる選挙制度はいまや衆院と重なり、政党色も強まっている。これも最高裁が参院の一票の格差により敏感になるゆえんだ。

二院制のもとで衆院と参院がどう役割分担するか、両者が議論することが不可欠だ。参院ならではの価値を生み出せる選挙制度にする改革が必要だ。

国会が怠ったままであれば、いずれ司法がはっきり「違憲」との判断を示すしか、是正の道はないだろう。

深刻なのは、衆院も同じだ。最高裁は2年前の衆院選も違憲状態とし、都道府県に定数をまず1人割り当てる「1人別枠方式」の見直しを求めたが、衆院は小選挙区定数の5減だけで解散し、総選挙を迎える。

弁護士グループは衆院選後、訴訟を起こすと明言した。選挙のたびに国会の代表性に疑問が出る状況はもう終わりにしなければならない。

毎日新聞 2014年11月27日

参院選「違憲状態」 再びの警告受け止めよ

参院選の「1票の格差」をめぐり、再び厳しい判断が示された。

読売新聞 2014年11月27日

参院1票の格差 国会の裁量権尊重した最高裁

参院の選挙制度改革を進展させられない国会に対し、司法が再び厳しい判断を示した。

「1票の格差」が最大4・77倍だった昨年7月の参院選について、最高裁大法廷は「違憲状態にあった」との判決を言い渡した。

15人の裁判官のうち、11人の多数意見だ。残り4人は「違憲」と判断した。国会は真摯しんしに受け止めねばならない。

最高裁は2012年10月の判決で、格差が5・00倍だった10年の参院選を違憲状態とし、都道府県を選挙区の単位とする現行制度の見直しを求めていた。

国会はその後、選挙区定数を「4増4減」したが、制度改革に手をつけないまま、昨年の参院選を迎えた。最高裁が今回、「違憲の問題が生じる著しい不平等状態を解消するには足りないものだった」と断じたのは無理もない。

最高裁判決が違憲にまで踏み込まなかったのは、制度の抜本改革には相応の時間がかかることを考慮したためだ。

最高裁は、12年の違憲状態判決から選挙まで約9か月しかなかった点を挙げた。4増4減の改正公職選挙法に「16年参院選に向け、選挙制度の抜本的見直しの検討を行い、結論を得る」との付則が設けられたことも重視した。

「高度に政治的判断が求められる」と、国会の裁量権を尊重しつつ、司法として制度改革を迫る姿勢を一層鮮明にしたと言える。

疑問なのは、違憲とした4人の裁判官のうち、元内閣法制局長官の山本庸幸氏が「選挙無効」と判断したことだ。議員1人当たりの有権者数が全国平均の8割に満たない選挙区の議員は身分を失う、という独自の見解を示した。

無効にしても非改選の議員らの身分は継続するので、参院の機能は停止しないとも主張している。再選挙の明確なルールがない中で非常識と言わざるを得ない。

一方、参院各党の選挙制度改革の協議は難航している。自民党の内紛と怠慢による面が大きい。

自民党は先月末、ようやく複数の改革案を他党に提示した。現行選挙区の定数配分を変える「6増6減」や、人口の少ない県と隣接県を一つの選挙区に統合する「合区」などである。

合区には、民主党なども理解を示す。自民党は第1党として、早急に改革案を絞り込み、各党との調整を主導する責任がある。

衆院と参院が役割や機能をどう分担するか。こうした本質的な議論も深めなければなるまい。

産経新聞 2014年11月27日

「違憲状態」判決 各党は参院改革案を示せ

昨年7月に行われた参院選の「一票の格差」をめぐる全国訴訟の上告審で、最高裁大法廷が「違憲状態」と判断した。

「4増4減」の定数再配分が事前に行われても最大格差が4・77倍だった選挙について、「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等」を認める一方、国会の裁量権の限界を超えてはいないとした。

15裁判官のうち4人は「違憲」と判断し、うち1人は「選挙無効」の厳しい意見を述べた。違憲判決に至らなかったことで、国会が司法の警告を軽視し、格差是正や選挙制度改革への取り組みを後退させることは許されない。

各党は衆院の定数削減や選挙制度改革の問題と併せ、二院制をどう位置付けるかの基本的な考えを国民の前に明らかにし、選挙戦を通じて論じあう必要がある。

最高裁は最大格差が5・00倍だった平成22年参院選についても、一昨年に「違憲状態」と判断している。今回の判決では、昨年の選挙も「なお5倍前後の水準」とみて著しい不平等と断じた。

改めて重く受け止めるべきなのは、4増4減の改正法の付則で「28年選挙に向け選挙制度の抜本的見直しについて引き続き検討する」と規定されていることだ。判決もこれを指摘し、重ねて、都道府県単位で定数を定める仕組みの見直しを求めた。

参院では、人口の少ない県同士の「合区」案の協議が合意に至らず、参院選挙制度協議会は近く議論を打ち切る。28年の新制度実施はとても見通せない状況だ。

4増4減のような小手先の再配分を繰り返し、抜本改革は先送りする国会の対応について、「真摯(しんし)な努力について疑問を持たざるを得ない」とされた意見は、当然の評価だろう。

与党として議論を主導すべき参院自民党は司法判断を受けて改革に乗り出すこと自体に抵抗感があるようだが、二院制の下での参院のあり方についても、積極的な検討はなされていない。

判決は、衆参がいずれも政党に重きを置いた選挙制度で、選挙区と比例代表の組み合わせが類似している問題点も挙げた。本紙の「国民の憲法」要綱は、間接選挙の導入などを通じて参院の役割を見直すことを提起している。

両院の制度改革に向けて政府の選挙制度審議会を再開させるなど新たな取り組みが必要だ。

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