安倍政権の政策の対案としては、新味や具体性に欠けるのではないか。将来、政権奪還を目指すなら、より徹底した党内論議が求められる。
民主党が衆院選公約を発表した。「今こそ、流れを変える時」として、経済、社会保障など10項目の重点政策を掲げている。
経済政策では、国内総生産(GDP)の2四半期連続のマイナス成長や、実質賃金の15か月連続減を踏まえ、「アベノミクス」を批判した。「厚く、豊かな中間層」の復活の必要性を強調する。
党の経済政策3本柱として「国民生活に十分留意した柔軟な金融政策」「(子育て支援、雇用の安定など)人への投資」「未来につながる成長戦略」を示した。アベノミクスの金融緩和、財政出動、成長戦略の3本の矢に対抗するものだ。
疑問なのは、「人への投資」の財政政策に、2009年衆院選で訴えた「コンクリートから人へ」の発想が残っていることだ。
子育て支援の拡充などは重要だが、公共事業や産業振興を軽視しては、雇用創出や所得向上を実現するのは難しい。「厚く、豊かな中間層」への道筋も見えない。
肝心の成長戦略も、13年参院選公約とほぼ同じ内容にとどまっている。この1年余の党内論議の成果がうかがえない。
社会保障では、最低保障年金制度の創設を今回も掲げた。「非現実的」と批判された09年政権公約の「月7万円」は12年以降、撤回され、金額は示されていない。
最低保障年金には大幅な増税が不可欠だ。党内に見直し論があるのに、財源問題を棚上げしたまま、看板政策に今なお固執しても、国民の幅広い支持は得られまい。
農家に補助金を配る民主党政権の「戸別所得補償制度」を維持したのも同様だ。バラマキとの批判に、どう答えるのだろうか。
原発については「30年代の稼働ゼロ」を踏襲したが、その道筋は依然、明確にはなっていない。
安全保障では、集団的自衛権の行使を限定容認する7月の新たな政府見解について、「立憲主義に反する」と撤回を求めている。
だが、政府の新見解は、従来の見解とも一定の整合性を維持した合理的な範囲内の憲法解釈の変更であり、批判は的外れだろう。
党公約は従来通り、「行使一般を容認する憲法の解釈変更は許さない」としただけで、行使容認の是非の判断は示さなかった。責任ある対応ではない。
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