きょう衆院解散 野党の協力はどこまで進むか

読売新聞 2014年11月22日

衆院解散 首相への中間評価が下される

◆「アベノミクス」論争を深めたい

デフレ脱却をいかに確実に実現するか。厳しさを増す安全保障環境にどう対応するのか。誤りなき日本の針路を定める機会としたい。

衆院が解散された。衆院選は12月2日に公示され、14日に投開票が行われる。事実上の選挙戦がスタートした。

2012年12月に自公連立の第2次安倍内閣が発足して以来、初の衆院選である。衆院選は本来、政権選択の選挙だ。09年と12年は2回連続で政権が交代した。

◆政策推進に必要な民意

今回は、安倍政権の2年間の評価が問われる選挙となる可能性が大きい。野党の選挙準備が大幅に遅れ、過半数の議席を得るには候補者が不足しているからだ。

自民、公明両党は、295小選挙区のほぼ全部に公認候補を擁立するが、野党第1党の民主党の候補は160~170人程度にとどまるとみられている。

無論、それで今回の衆院選の重要性が減じることはない。

安倍首相は、景気回復と財政再建の両立、持続可能な社会保障制度の構築、集団的自衛権の行使を限定容認する新たな安全保障法制の整備、原発の再稼働など、困難な政策課題を抱えている。

特に世論を二分する課題の前進には国民の理解と協力が欠かせない。衆院選で新たな民意を得て、政策の推進力を手に入れようというのが首相の総合的判断だ。

自民、公明両党で計326の解散時勢力をどこまで守れるのか。これが首相に対する国民の信任のバロメーターである。

前回、大惨敗した民主党は、どれだけ失地を回復できるか。離合集散を繰り返した維新の党や次世代の党などは、生き残りをかけた戦いとなる。

その結果は、今後の日本政治の行方に重大な影響を与えよう。

◆建設的な対案が必要だ

各党は、政権公約の策定を急ぎ、新たな国家像や様々な課題の処方箋を示すことで、国民に選択の判断材料を提供する責任がある。

中でも大きな争点は、経済政策「アベノミクス」である。

安倍首相は記者会見で、今回の解散を「アベノミクス解散」と名付け、「私たちの経済政策が間違っているのか、正しいのか、国民に伺いたい」と語った。「デフレ脱却には、この道しかない」とも強調している。

野党は、消費税率10%への引き上げ先送りは「アベノミクスの失敗の証明」と主張する。民主党の海江田代表は「この2年間、社会の格差は拡大し、15か月連続で実質所得が減った」と批判した。

より建設的な論戦にするには、野党が批判に終始せず、対案を示すことが大切である。

17年4月の消費再増税を可能にする環境を作るには何が必要か。各党は、効果的な成長戦略や、増大する社会保障費の効率化策などを競い合ってもらいたい。

自民、公明両党は、17年の再増税時に軽減税率の導入を目指すと共通公約に明記することで一致した。軽減税率は、消費者の負担感を和らげる対策として有効で、評価できる。野党も、この議論に積極的に参画することが求められよう。

論点は経済だけではない。

最近、日本の平和と安全が脅かされる事態が顕在化している。北朝鮮の核・ミサイル開発の進展や、中国の危険な示威活動を伴う海洋進出や軍備増強、国際テロなどである。

来年の通常国会は、新たな安全保障法制の整備が焦点となる。与党は、日米同盟の強化に向け、どんな法整備を目指すのか、丁寧に説明することが欠かせない。

◆野党は安保の見解示せ

民主党は、「集団的自衛権の行使一般を容認する憲法解釈の変更は認められない」との見解を発表したが、肝心な行使の是非の見解はまとめていない。

維新の党も、「自衛権の範囲の明確化」で対応するとの見解を決めているが、分かりづらい。野党は、早急に自らの立場を明示し、論戦に臨むべきだ。

今回の衆院選は、有識者の第三者機関が衆院選挙制度改革を検討中の段階で実施される。「1票の格差」是正は、小選挙区の「0増5減」にとどまった。

首相が衆院を解散した以上、抜本的な格差是正が持ち越しとなったのはやむを得まい。

だが、次の衆院選までには抜本改革を実現する必要がある。大衆迎合的な衆院定数の削減は、優先課題ではない。格差是正と切り離すのが適切だろう。

産経新聞 2014年11月22日

衆院解散 再生進める構想を競え 憲法改正、安保も重要争点だ

衆院が解散された。12月14日の投開票まで、安倍晋三政権の約2年間の実績や政策の方向性などを問う選挙戦に入る。

政権の受け皿としての野党の存在感が薄く、政権交代にはつながらない選挙との見方も少なくない。だが、日本が直面する内外の危機に目を向けてほしい。

アベノミクスは一定の成果を挙げつつあるが、途上にある。脱デフレの足取りをより確かにしなければ日本経済の再生は難しい。

力ずくで尖閣諸島の奪取などを図る中国から、国の平和と安全を守り抜くため、いかにして抑止力を高めるか。

≪集団自衛権の意義問え≫

必要な政策を強化し、改革を急がなければ、日本は衰退し、将来の不安を解消できない。

諸課題を担うにふさわしい政権とは何か。その政権にいかなる力を与えるべきか。重要な選択の機会であることに変わりはないと指摘したい。

安倍政権は今年、安全保障政策を大きく転換した。日米共同の抑止力を高め、同盟の絆を強めるため、憲法解釈によって禁じられていた集団的自衛権の行使を容認した。長年の懸案であり、中国に加え、核・ミサイル開発をやめない北朝鮮の脅威に対処する上でも必要だった。

来年の通常国会には安全保障関連法制の整備が控える。行使容認や法改正の意義、内容を国民に説明する機会ともなろう。

同時に掲げるべきものは、憲法改正だ。安倍首相は産経新聞のインタビューで「いよいよ、その橋を渡り、どういう条項を改正すべきかという段階に至っている」と語った。

改正の中核といえるのは、日本の安全保障を確かなものとするための9条改正だ。集団的自衛権の行使容認後も、自衛隊の「軍」としての位置付けを明確にするなどの課題は残されている。

集団的自衛権の行使容認の閣議決定をめぐり、菅義偉官房長官は「自民党はすでに憲法改正を公約にしており(信を)問う必要はない」と述べたが、争点化に慎重と受け取られないか。

憲法改正や安全保障法制の整備が実現するまで、その重要性は繰り返し訴えるべきだ。

民主党や公明党は、憲法改正への態度がはっきりしない。維新の党や次世代の党は、憲法論議のリード役を果たしてほしい。

消費税増税と一体で考えられてきた社会保障制度改革は、将来にわたる長期的な政策課題だ。税と等しく国民の関心は高い。

再増税延期で、社会保障と税の一体改革の道筋にどのような影響が生じるのか。各党はバラ色の公約ではなく、責任ある改革案を示すべきだ。社会保障制度改革の全体像も論じ合ってもらいたい。

≪責任ある社会保障論を≫

社会保障費は毎年1兆円のペースで伸び続けており、負担増や過剰なサービスの絞り込みは怠れない。一方で、個別政策では拡充が必要なものもある。

子育て支援策や、社会保障制度全体の基盤をなす国民健康保険への財政支援、介護職員の待遇改善などだ。これらの多くは、消費税率を10%に引き上げた際の増収分を当て込んでいた。

首相は「子ども・子育て支援新制度」について来年4月から予定通り実施すると表明したが、代替財源は明らかではない。

再増税の延期それ自体は各党も容認し、野党側はアベノミクス批判を前面に押し出す構えだ。

アベノミクス開始以来、日銀の金融緩和などを受けて円安・株高が進行し、大手輸出企業の収益は円安を追い風に過去最高を更新する勢いにある。

これを賃金増を通じた消費拡大につなげるのが「経済の好循環」とされ、首相はさらに前進させると強調する。だが、取り組みはまだ道半ばだ。地方の中小企業も十分な恩恵を受けられるようにするには、中小の価格転嫁を促し、賃上げを後押しするきめ細かな対策が必要だ。

民主党など野党に求めたいのは、具体的な対案である。民主党の「豊かな中間層をつくる」という訴えもそうだ。現金給付には財源がいる。過度な円高で製造業の海外逃避を広げた民主党政権時の失政をどう総括しているのか。

雇用を提供する企業をいかに活性化するかなど、経済再生に資する建設的論議を期待したい。

読売新聞 2014年11月21日

きょう衆院解散 野党の協力はどこまで進むか

衆院は21日、解散される。野党各党は、準備不足のまま、事実上の選挙戦に突入する。

12月2日の公示に向けて、選挙協力を地道に進めることが重要だ。

安倍首相の解散表明が引き金となって、みんなの党が解党を決めた。浅尾代表は、合併を視野に民主党との政策協議を進めた。自民党との連携を目指す渡辺喜美前代表らが反発し、行き詰まった。

政治路線がまとまらない以上、解党はやむを得まい。

党所属議員20人の行き先はバラバラだ。山内康一国会対策委員長ら2人は民主党に入党申請した。渡辺氏らは新党結成を模索している。維新の党や次世代の党への合流を検討する議員もいる。

2009年衆院選前に結党したみんなの党は、第3極の草分け的な存在だった。大胆な規制改革などを唱え、自民、民主の2大政党に飽き足らない有権者の受け皿となり、12年衆院選で躍進した。

だが、昨年12月に江田憲司衆院議員らが離党し、今年4月には渡辺氏が巨額の借入金問題で代表を辞任した。国会でも存在感を示せず、党勢は低迷していた。

日本維新の会も、路線の違いから、橋下徹大阪市長らと石原慎太郎元東京都知事らの勢力に分裂した。それぞれが、維新の党と次世代の党として衆院選に臨む。

「第3極」は死語と化した。これらの指導者はいずれも個性と自己主張が強い。主導権争いなどで離合集散を繰り返し、支持者の期待に応えられなかったのは、責任ある対応と言えまい。

12年衆院選の自民党圧勝の一因は、民主党や第3極の候補の乱立による非自民票の分散にある。自民党は、小選挙区で43%の得票率で約8割の議席を獲得できた。

民主党が今回、自民党に対抗するため、共産党を除く野党と選挙協力を進めるのは理解できる。

政策や政治路線の違いを棚上げにした政党再編は支持されない。相互推薦などは見送り、競合する候補者の一本化にとどめるのは、現実的な対応だろう。

ただ、民主、維新両党の調整は難航している。候補者が競合する選挙区は依然、20を超える。

民主党の候補擁立も遅れている。295小選挙区のうち、半数近くで候補者が不在だ。他の野党との競合を避けるため擁立を見送る選挙区を差し引いても、野党第1党として消極的過ぎないか。

有権者の選択の機会を確保する観点からも、候補の空白区を極力減らす努力が求められよう。

読売新聞 2014年11月20日

あす衆院解散 評価できる法律駆け込み成立

21日の衆院解散を前に臨時国会で、重要な法律が相次いで成立した。与野党が大局的見地から協力したのは適切だ。

19日の参院本会議では法律11本が成立し、条約1本が承認された。このうち、中国漁船のサンゴ密漁対策を強化する改正外国人漁業規制法・漁業主権法の成立は、全会一致だった。

小笠原諸島周辺での密漁急増を受け、与野党の議員立法で提出された。改正法は、外国人による日本領海内での操業や、排他的経済水域(EEZ)内での無許可操業に対する罰金を最高3000万円に引き上げる。

貴重な生物資源を乱獲し、地元漁業を脅かす中国密漁船の取り締まり強化は緊急性が高い。来年の通常国会への先送りは許されず、与野党が協力したのは当然だ。

野党8党は先週、「社会的・人道的に緊急を要する法案には協力する」との方針を確認した。この方針通り、エボラ出血熱患者らの検体の強制採取を認める改正感染症法や、リベンジポルノ被害防止法の成立に協力した。

食品などの不当表示への課徴金を導入する改正景品表示法や、危険ドラッグ規制を強化する改正薬事法も全会一致で成立した。

いずれも国民生活に影響する法律で、成立の意義は大きい。

一方、安倍内閣が最重要法案とする「まち・ひと・しごと創生法案」など地方創生関連2法案は参院特別委員会で、民主など4野党の議員が欠席する中、与党と次世代の党の賛成で可決された。21日に成立する予定だ。

民主党の川端達夫国会対策委員長は、審議拒否について「(首相が解散を表明し)国会の機能はいらない、と言った時点から、審議には参加しない」と主張する。

川端氏は「国会は首相の持ち物ではない」と批判したが、「民主党の持ち物」でもなかろう。首相の解散表明後とはいえ、安易な審議拒否はいただけない。

政府・与党は今国会で、与野党対決法案の提出を極力控えたが、「政治とカネ」を巡る女性2閣僚辞任などにより、国会審議が混乱し、大幅に遅れた。労働者派遣法改正案や女性活躍推進法案などは廃案となる見通しだ。

多くの法案を処理できなかった責任は、政府・与党にもある。

臨時国会は、閣僚らのスキャンダル追及ばかりが目立った。肝心の政策論争は低調で、国会改革の目玉として拡充するはずだった党首討論が一度も行われなかったのは、残念である。

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