衆院解散表明 安倍政治の信任が最大争点だ

毎日新聞 2014年11月19日

解散を表明 争点は「安倍政治」だ

安倍晋三首相が消費増税を1年半延期し、21日に衆院解散に踏み切る考えを表明した。衆院議員任期の半分、2年を残しての解散である。

読売新聞 2014年11月19日

衆院解散表明 安倍政治の信任が最大争点だ

◇消費再増税できる環境が要る

日本経済や安全保障の課題を設定し、政策を遂行する体制を立て直す。これが、国民に信を問う目的だろう。

安倍首相が、来年10月に予定される消費税率10%への引き上げを2017年4月に先送りする方針を発表した。この判断や経済政策「アベノミクス」を争点とし、21日に衆院解散を断行する意向も表明した。

首相は記者会見で、解散の理由について「国民生活に大きな影響を与える税制で重大な決断をした以上、国民の声を聞かねばならないと判断した」と強調した。

◇体制をリセットする

衆院議員の任期を2年以上残した時点の解散は珍しい。12年の前回衆院選で大勝した自民党は議席を減らすリスクも高い。

首相が長期外遊中で不在の永田町に「解散風」が吹き荒れ、与野党が一斉に衆院選に走り出す――そんな展開もまた異例である。

首相には、「政治とカネ」の問題を巡る女性2閣僚辞任などによる混乱や行き詰まりから政治をリセットする狙いがあろう。

首相は一時、安定政権を目指し、再来年の参院選との同日選などの可能性も検討した。だが、同日選への拒否感が強い与党の公明党の意向や、野党の候補擁立が大幅に遅れている現状を勘案し、最も早い解散を選択した。

野党は「大義なき解散」と批判するが、それは当たらない。

首相自身が指摘するように、「国民の理解と協力なくして、政策を進めていくことはできない」のが政治の本質である。

◇アベノミクスどう補強

安倍政権は今、多くの難しい課題に直面している。消費増税先送りと連動したアベノミクスの補強、集団的自衛権の行使容認を反映する新たな安全保障法制の整備、原発の再稼働などである。

あえて国民の審判を受け、勝利することで、政策遂行の推進力を獲得し、政治を前に進めようとする首相の決断に異論はない。

長年のデフレからの脱却を最優先して、経済政策を総動員する。「積極的平和主義」を体現し、日米同盟や安保政策を実質的に強化する。こうした安倍政治の信任を得ることが解散の大義だろう。

首相は、自らの言葉で、こうした意図を国民に繰り返し説明することが求められる。

そもそも「伝家の宝刀」と呼ばれる解散の判断は、首相の専権事項である。「常在戦場」の構えを怠り、選挙準備が遅れている野党が「党利党略」と首相を批判しても、説得力を持つまい。

衆院選は12月2日公示―14日投票の日程で行われる。

12年衆院選と同様、来年度予算編成と税制改正の作業が遅れ、越年するのは確実だ。来年度予算の成立のずれ込みや「政治空白」を最小限に抑えるため、できる限り早い日程を選んだのは適切だ。

衆院選の争点で、特に重要なのがアベノミクスの評価である。

7~9月期の国内総生産(GDP)が2期連続のマイナス成長となったことで、民主など野党は、「安倍政権の経済失政が明らかになった」と批判を強めている。

金融緩和、財政出動、成長戦略の「3本の矢」によって、大幅な円安・株高や、企業業績の好転、雇用情勢の改善などを実現したアベノミクスの基本的な方向性は支持できる。

だが、今回明らかになった景気回復の足踏み状況という「誤算」を踏まえ、与党は、政策をどう修正・強化するかを示すべきだ。

安倍首相は、消費増税の先送りについて「デフレから脱却するアベノミクスの成功を確かなものにするため」と語った。

「財政再建の旗を降ろさない」として、17年4月の増税は再延期せず、20年度の財政健全化目標を堅持する方針も明言した。

◇社会保障財源の確保を

今月に5回開かれた政府の「点検会合」では、有識者45人のうち30人が予定通りの来年10月の増税に賛成し、多数を占めた。

だが、消費の落ち込みによる景気の腰折れを防ぐことを優先し、増税を先送りするというのが首相の政治判断だった。

増税の再延期を明確に否定し、財政健全化や国債の信認にも配慮したのと合わせ、評価できる。

重要なのは、17年4月までに景気を安定した回復軌道に乗せ、着実な賃上げなどによって、増税が確実に実施できる経済環境を作り出すことである。

先送りに伴う歳入減の影響を受ける子育て支援、医療、介護などの社会保障財源についても、きちんと手当てをする工夫が要る。

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