予想外のマイナス成長である。景気の停滞が一段と鮮明になった。
内閣府が発表した7~9月期の実質国内総生産(GDP)速報は、前期比0・4%減、年率では1・6%減と、2四半期連続のマイナス成長だった。
安倍首相は、来年10月に予定される消費税率10%への引き上げを1年半程度先送りする考えだ。その判断の是非や、安倍政権2年間の実績の評価を問い、衆院解散・総選挙に踏み切る意向である。
厳しい経済情勢が確認された以上、消費増税よりも、それが可能な経済体力の回復を先行させるのは、合理的な判断と言える。
GDPは年率2%程度のプラス成長が見込まれていた。マイナスにとどまった要因の一つは、4月に消費税率を8%に上げた後、急減した民間消費の回復が鈍かったことである。
天候不順で夏物の販売が振るわないなど、増税以外の要因も重なった。円安による輸入価格の上昇で食品などの値上げも相次ぎ、消費者心理が一段と冷え込んだ。
販売不振で積み上がった在庫を減らすため、企業が生産を抑えたことも、成長を押し下げた。
企業の設備投資も2四半期連続でマイナスだった。消費不振が長引いているため、投資をためらっている面もあるのだろう。
民主党の枝野幹事長は、「アベノミクスの限界が証明された」と批判している。
これに対し、甘利経済再生相は「企業業績が賃金に反映され、消費を後押ししていく循環を考えている。それは成功しているが、完成形ではない」とし、景気を下支えするための経済対策が必要だとの考えを示した。
政府は、円安や燃料費高騰など消費低迷の原因に焦点を絞り、有効な施策を講じるべきだ。
一方、上場企業の業績が、円安の追い風もあって、最高益を更新する勢いなのは心強い。
肝心なのは、企業が利益を内部にため込まず、新たな成長に活用することだ。
賃上げを通じて従業員に還元することで、家計の収入増が消費を刺激し、企業の利益を押し上げる好循環の実現に期待したい。
企業が、稼ぐ力を高める設備投資を積極化することも大事だ。
政府は、事業拡大に挑戦する企業を、政策で後押しすべきだ。法人税の実効税率引き下げの着実な実行はもとより、新規事業の展開を阻む規制の撤廃など、成長戦略の一層の充実が急務である。
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