米国による未曽有の金融緩和策が、大きな節目を迎えた。
米連邦準備制度理事会(FRB)が、国債購入などで大量の資金を世の中に供給する量的緩和策を、10月末で終了する。
2008年秋のリーマン・ショック以降、3段階にわたる異例の量的緩和策を打ち出し、「100年に1度」と言われた世界的な経済危機を、ひとまず収束させたことは評価されよう。
米国債などを買い続けた結果、FRBの資産は米国の経済規模の4分の1に相当する4・5兆ドル(約490兆円)に膨らんだ。
景気が回復した一方で、巨額の資金が市中に出回る「カネ余り」が常態化している。放置すれば、投機によるバブルや、インフレの引き金ともなりかねない。
ただ、これほど大量の資金を回収していく経験は、どの中央銀行にもない。FRBは今後、金融政策にとって「未知の領域」に踏み出すことになる。
当面の焦点は、政策金利の誘導目標を「0~0・25%」としている事実上のゼロ金利政策を、いつ解除するかである。
FRBは声明で、ゼロ金利政策を「相当の期間」維持するとし、これまでの表現を踏襲した。「早期利上げ」の観測を打ち消し、市場の動揺を避ける狙いだろう。
昨年5月には、当時のバーナンキFRB議長が量的緩和の縮小を示唆したことをきっかけに、世界的な株安を招いた。
ショックを与えぬよう、FRBの意図を少しずつ市場に浸透させることが大切だ。丁寧な「市場との対話」が求められる。
気がかりなのは、新興国に大量の「緩和マネー」が流入していることだ。米国の利上げ観測が一気に高まれば、米国への急激な資金還流を起こす恐れがあろう。
新興国の通貨や株価の急落などで、世界経済を揺るがす事態は避けねばならない。
FRBは、超金融緩和を脱却する「出口戦略」を、慎重に進めてもらいたい。
米国以外に世界経済の牽引役が見当たらないことも、市場を不安定にしている要因だ。
特に欧州は、経済政策で各国の足並みがそろわず、低成長とデフレ化の危機が拡大している。財政出動や一層の金融緩和など、機動的な対応が急がれる。
日本も消費を中心に内需が冷え込んでいる。民間企業を活気づける成長戦略を、さらに加速させることが何より重要である。
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