マンション管理 公平性重視した妥当な判決だ

毎日新聞 2010年01月31日

マンション協力金 公平な負担は当然だ

マンションを所有しているのに居住していない不在所有者に協力金の支払いを求めた裁判で、最高裁は管理組合側の主張を認め、協力金は適法との判断を示した。管理組合業務に参加しない不在所有者については、ほとんどの分譲マンションが同様の問題を抱えている。判決は大きな影響を及ぼすことになりそうだ。

舞台となったのは1971年から分譲された大阪市北区のマンションで、総戸数868戸のうち約180戸は所有者が住んでおらず、賃貸に出されたり、空室になっている。高齢化も進んでおり、管理組合の役員になる人が不足し、負担が一部所有者に集中するようになったという。

それに対する不満を背景に、マンションの管理組合は2004年の総会で、不在所有者から協力金を取ることを決め、規約改正を行った。

その是非をめぐり3件の訴訟が起こされ、大阪高裁は1件について協力金は有効と認めたが、残り2件では規約改正は無効の判断を示した。

この訴訟について最高裁は、「マンションの管理組合の運営費や業務は本来、組合員全員が平等に負担すべきだ」と指摘し、不在所有者は「役員になる義務を免れて組合活動に貢献していない。居住所有者が貢献した利益のみを享受している」との判断を示した。

販売に有利になるようマンションの修繕積立金などを低く設定するケースが多くみられる。その結果、資金不足に悩む管理組合も多い。管理組合の役員のなり手不足も絡み、不在所有者側の敗訴確定を受けて、協力金を導入するマンションが全国に広がることになりそうだ。

マンションが大量に供給されるようになって久しく、老朽化マンションの建て替えが社会問題化したのを背景に、建て替えをスムーズにするための法整備などが進められた。

一方、マンションの管理運営については、国土交通省が管理規約の見本をつくり、管理費や修繕積立金の負担義務などを例示している。しかし、実際の運営については、マンションごとに対応していくしかない。

今回の判決で最高裁が認めた協力金の額は月額2500円だった。しかし、協力金が適法であっても、その額についてはマンションごとに事情が違うはずで、トラブルに発展することも懸念される。

年数を経るにつれ、マンションでは居住者の高齢化と賃貸に出す比率が高まる。今回の最高裁判決によって管理組合の空洞化を防ぐ効果が期待されるが、快適な居住環境はマンション全体で取り組むのが基本で、公平な負担を図りつつ、スムーズなマンションの管理・運営ができるように心がけたい。

読売新聞 2010年01月28日

マンション管理 公平性重視した妥当な判決だ

どのマンションでも起こり得るトラブルについて、最高裁が一つの解決策にお墨付きを与えたということだろう。

分譲マンションの住民で構成する管理組合が、部屋を所有しながら賃貸目的などで自らは住んでいない不在組合員の管理費を、「協力金」名目で増額できるか――。

これが争点だった訴訟で、最高裁は、「必要性、合理性が認められる」として、増額を認める判断を示した。

不在組合員の実態について、最高裁は、「管理組合の役員になる義務を免れているばかりでなく、組合の活動に、日常的に労務を提供するなどの貢献をしていない」と指摘した。

管理組合の運営に当たっては、組合員全員が平等に負担を分かち合うべきだが、不在組合員は「利益のみを享受している」との見解も示した。

住民の間の不公平感を(ぬぐ)うことを重視した妥当な判断である。

問題となっていたのは、大阪市内にある築40年ほどのマンションだ。2004年時点で、868戸のうち、不在組合員が約2割を占めていた。

この管理組合は、月額1万7500円の組合費に加え、不在組合員に対しては、2500円の協力金を求めたが、5人の不在組合員が支払いを拒み続けていた。

マンションの保守管理や住環境の維持のために、管理組合の存在は欠かせない。組合の役員は、建物の修繕計画や防犯対策にかかわるほか、マンションを代表して町内会の催しなどへの参加を求められることも多い。

そうした負担と責任は、決して軽くはない。その運営に寄与していない不在組合員は、協力金の支払いによって、管理組合の活動に報いるべきだ。それが最高裁判決の趣旨といえる。

賃貸の増加のほか、居住者の高齢化により、管理組合の役員を務めることができない世帯が増えてきたマンションも少なくないのではないか。小規模なマンションほど、役員の担い手不足が、より深刻であろう。

一部の住民に管理組合の運営の負担が偏れば、不公平感が募り、どうしても住民同士のあつれきが生じやすくなる。

今回の判決を契機に、マンションを巡る訴訟が増えるのは、好ましいことでない。大切なのは、賃借人も含め、住民が協力し合って、実情に沿った住みよいルールを作っていくことである。

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