エボラ出血熱 国内対策の再点検を

朝日新聞 2014年10月29日

エボラ対策 冷静な対処が試される

エボラ出血熱は、重い感染症である。だが、その対処はあくまで冷静でなければならない。そのことをいま一度、肝に銘じておきたい。

リベリアに滞在後、東京・羽田空港に着いた男性の感染が疑われ、おとといから都内の指定医療機関に入院している。

きのうまでの血液検査では陰性だったが、引き続き数日程度経過をみることになった。

世界保健機関(WHO)によると、リベリアとシエラレオネ、ギニアの西アフリカ3国での感染拡大は依然続いている。世界全体で今回の感染者は1万141人に達し、うち4922人の死亡が確認されている。

ただ、現状はこの3カ国におおむね封じ込められている。制御を失った状態ではない。

流行地との往来が盛んな欧米では、発熱などで感染が疑われる例が何人も出ているが、これまでのところそのほとんどがエボラではなかった。

欧米での発症確認は、米国4人、スペイン1人の5人、死者は米国の1人だけだ。

これはエボラが患者の血液などを介してしか感染しないからだ。新型インフルエンザのようにせきのしぶきなどで感染するわけではない。流行地以外では限られた患者に適切に対処すれば感染拡大は防げる。

もちろん、日本でも感染者がいつ確認されるかわからない。日本政府は、流行国への滞在歴がある入国者全員に毎日体温など体調を報告してもらうことにした。

国内で発症した場合、指定医療機関に誘導することを含め、現段階ではそうした措置を徹底することが肝要である。

一部の国や地域では、3カ国からの渡航を禁止したり、症状のない入国者を強制隔離したりする動きもある。だが、それは人権を極端に制限するだけでなく、感染症対策を徹底するうえで逆効果となりかねない。

過剰ともいえる隔離や検査を強要すれば、流行地に渡航した人たちが検疫などで虚偽申告したり、密航しようとしたりする可能性を高める。そうなれば流行の制御が難しくなる。

米ニュージャージー州では、流行地でエボラと闘った看護師が、症状もないのに一時強制隔離され、犯罪者のような扱いを受けたと訴えている。非科学的な対応で医療者の士気をくじくようでは、有効な態勢づくりはおぼつかない。

国内の備えを地道に整えつつ、流行地での対策には国際社会で結束して取り組む。その着実な努力が求められる。

毎日新聞 2014年10月29日

エボラ出血熱 国内対策の再点検を

遠い国の感染症が一気に身近になったと感じた人も多いだろう。流行地である西アフリカのリベリアから、ベルギー、英国を経由して羽田空港に到着した男性ジャーナリストが、エボラ出血熱の疑いで国立国際医療研究センターに搬送された。

読売新聞 2014年10月29日

エボラ熱対策 国内発生に万全の態勢整えよ

日本国内でエボラ出血熱患者が確認された際、速やかに対応できる態勢を築かねばならない。

エボラ出血熱の感染が西アフリカで拡大し続けている。欧米にも飛び火する深刻な状況だ。日本政府は28日、関係閣僚会議を開き、国内の対策を徹底する方針を確認した。

安倍首相は、感染症対策を担う塩崎厚生労働相に対し、国家安全保障会議にも状況を報告するよう指示している。患者が発生すれば、国内に不安が広がるだろう。経済活動にも支障が出かねない。

安全保障の観点を重視するのは当然と言える。

東京・羽田空港で27日、リベリア滞在後に欧州経由で到着した男性に発熱症状が見つかり、政府の指定医療機関に搬送された。検査の結果、幸い陰性だった。

国境を越えた人の往来が活発な中、日本もアフリカ発の感染症と無縁でないことを印象づけた。

男性は、リベリア滞在を自己申告したため、関係機関が速やかに対応できた。厚労省は、この男性が搭乗していた便の乗客名簿を確保して万が一の事態に備えた。機内の消毒も行われた。

ただ、陽性だった場合には、機内で乗客や乗務員に感染する可能性がゼロではない。申告がない場合の対処にも不安が残る。

厚労省は既に検疫を強化している。国際便が到着する空港では、入国者全員に流行国での滞在歴がないかを尋ねている。

エボラ出血熱は、発症までの潜伏期間が最長21日程度と長いため、該当者には、症状がなくても1日2回、健康状態を検疫所に報告するよう義務づけている。これを徹底せねばならない。

検疫所と入国管理局が連携を密にし、可能な限りの水際対策を講じることが求められよう。

対策を強化しても、検疫のすり抜けは起こり得る。国内の医療体制を充実させることが肝要だ。

全国に45か所の指定医療機関があるものの、9県では未整備だ。他県への搬送態勢を整えておく必要がある。西アフリカや欧米では医師や看護師の二次感染が多い。国内でも、防護服の着脱法などの訓練が欠かせない。

西アフリカでは感染者数が1万人を超え、死者は約5000人に上る。来年初めには感染者が140万人にまで増えるという最悪シナリオ通りの勢いである。国際社会が協力し、多発地域での感染封じ込めに当たらねばならない。

日本も、医療支援や治療法の研究開発などで貢献すべきだ。

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