閣僚ダブル辞任 失態を謙虚に反省せよ

朝日新聞 2014年10月21日

閣僚同時辞任 首相が招いた異常事態

2人の閣僚が、有権者への利益供与や寄付を疑われて同時に辞める。極めて異例、いや異常というべき事態である。

安倍首相は「国民に深くおわびする」と頭を下げたが、その任命責任は極めて重い。

小渕経産相は、疑惑が報じられてから5日目の辞表提出だ。苦しい言い訳を重ねた過去の例に比べれば、引き際はよかったと言えるのかもしれない。

しかしそのことは、今回の疑惑がもはや国会で説明ができぬほど悪質だったことの裏返しだろう。

閣僚を辞めても、小渕氏は衆院議員としての説明責任から逃れることはできない。

いくつかの疑惑の中でもっとも重大なのは、後援会員の観劇会の費用の収支が大幅に食い違っていることだ。

小渕氏はきのうの記者会見で、観劇の費用は「参加者から全額集めている」と説明。公職選挙法が禁じる選挙区の有権者への利益供与は否定した。だが、観劇会は毎年催されているのに、その収支が報告書に全く記載されていない年もあり、「大きな疑念があると言わざるを得ない」と認めた。

報告書への不記載は政治資金規正法に違反するし、利益供与の疑いも晴れたわけではない。

まさに小渕氏自身がいうように「知らなかったではすまされない」重大な行為である。

松島法相は、自身の似顔絵入りのうちわを選挙区内で配ったことが、公選法が禁じる寄付にあたるのではないかと国会で追及された。それが「雑音」であるかのような発言までして、法務行政の責任者が刑事告発される倒錯した事態を招いた。

先月までの第2次安倍内閣は、1年8カ月あまり閣僚が1人も交代しない戦後最長記録をつくった。ところが、改造したとたんに閣僚の問題行為が次々と明るみに出ている。

小渕氏も松島氏も、「女性が輝く社会」を掲げる安倍首相の肝いりで入閣した。

改造内閣の看板づくりを優先するあまり、資質を十分に吟味せず、不祥事の芽を見逃してはいなかったか。

ほかにも、江渡防衛相の政治資金収支報告書の訂正や、山谷国家公安委員長が「在日特権を許さない市民の会」の元幹部と一緒に写真撮影していた問題などが発覚している。

安倍政権の気の緩みやおごり、あるいは体質そのものが一連の事態を招いているとしたら、極めて深刻だ。

こうした疑念をぬぐい去る責任もまた、首相にはある。

毎日新聞 2014年10月21日

閣僚ダブル辞任 失態を謙虚に反省せよ

異常な事態である。不明朗な政治資金や地元での物品配布がそれぞれ問題になっていた小渕優子経済産業相、松島みどり法相が同じ日にダブル辞任に追い込まれた。

読売新聞 2014年10月21日

女性2閣僚辞任 早急に政権の態勢を立て直せ

政治とカネの問題を巡り、改造内閣の発足後、わずか1か月半で女性2閣僚が辞任した。安倍政権への大きな打撃だ。

首相は、早急に態勢を立て直し、国政運営に取り組まなければならない。

小渕経済産業相は記者会見で、「経済、エネルギー政策に停滞は許されない。大臣を辞し、疑念を調査する」と語った。調査は弁護士ら第三者に委ねるという。

小渕氏の関連政治団体の収支報告書では、判明分だけで、支援者向け観劇会の4年分の支出が会費収入を約4200万円上回っている。団体が差額を補填ほてんしていれば公職選挙法違反の恐れがある。

小渕氏は、参加者から実費を徴収していたと説明し、公選法違反の疑いを否定した。ただ、その場合でも、報告書への収入の過少記載や不記載により、政治資金規正法に抵触する可能性がある。

政治資金の管理を会計担当者などに任せ切りにし、これほど杜撰ずさんな報告書を提出し続けた小渕氏の監督責任は極めて重い。

小渕氏は、資金管理団体による地元特産のネギやベビー用品などの購入について、「公私の区別はつけている」と釈明しているが、より丁寧な説明が求められる。

辞任による問題の幕引きは許されない。衆院政治倫理審査会での弁明などを検討すべきだろう。

小渕氏は衆院当選5回で再入閣し、女性首相候補と目されていた。元首相の次女として恵まれた環境にあった。自らをより厳しく律するべきではなかったのか。

今後の調査次第で、一層厳しい局面を迎えることもあろう。

松島法相は、地元行事で「うちわ」を配布したとして公選法違反の疑いが持たれている。民主党は、東京地検に刑事告発している。

松島氏は、辞任の理由について「私の言動で国政に遅滞をもたらした」と語る一方、配布については「問題になる寄付行為とは思わない」と強調した。違法かどうかを明確にする必要がある。

安倍首相は、両氏の辞任について「任命責任は私にある」と語り、国民に陳謝した。過去最多の女性閣僚5人の起用は「女性が輝く社会」の象徴とする狙いがあった。閣僚起用に関する事前調査が甘かったと言えよう。

後任の経産相に自民党の宮沢洋一政調会長代理、法相には、上川陽子・元少子化相が起用される。野党は今後、国会で政権批判を強めるだろう。首相と全閣僚は、政策の遂行を最優先し、緊張感を持って職務に専念すべきだ。

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