慰安婦問題 誤解招かぬ対外発信を

朝日新聞 2014年10月19日

慰安婦問題 貴重な女性基金の精神

戦争の時代、日本軍の関与の下で作られた慰安所で性行為を強いられた元慰安婦らに対し、戦後50年を機に国民的な償いを試みたのが「女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)」だった。

その基金への参加を呼びかけた文書を、外務省がホームページ(HP)から突如削除した。

呼びかけ文には「10代の少女までも含む多くの女性を強制的に『慰安婦』として軍に従わせた」とあった。衆院予算委員会で、この記述が強制連行をほのめかすようだと批判されたための措置とみられる。

基金は、93年の河野洋平官房長官談話を受けてできた。慰安婦問題は法的に解決済みとの立場を保ってきた日本政府にとって、基金の活動は和解への後押しができる実践的な取り組みだった。

事業の柱は、元慰安婦に首相の「おわびの手紙」のほか、募金からの償い金を渡すこと、さらに政府資金から医療支援することだった。基金は7年前に解散したが、その後も外務省が呼びかけ文を掲載し続けてきたのは、これらの努力に意義を見いだしてのことだろう。

削除について岸田外相は、HPに政府が作った文書とそうでない文書が混在していたので構成を整理した、と説明する。だが、基金の関連文書の内容は政府も認めてきた。しかも大本の河野談話について、安倍首相自ら、見直す考えはないと明言している。

なのになぜ、呼びかけ文を削除しなければならないのか。国際社会からは日本政府が歴史認識をさらに後退させたと受け取られかねない。まして河野談話についても首相周辺からは、来年の戦後70年談話で「骨抜き」にすればいいとの発言さえ出ており、なおのことだ。

もとより海外での評価だけが問題なのではない。私たちが過去とどう向き合うのかが問われているのである。

基金解散後、元理事らがウェブ上で「デジタル記念館『慰安婦問題とアジア女性基金』」(http://awf.or.jp)を立ち上げ、本にもまとめられた。

基金に集まったのは約6億円。「入院のため振込(ふりこみ)が遅くなりました」「貧者の一灯です」。デジタル記念館には寄金した人のメッセージのほか、「おわびの手紙」に号泣した元慰安婦の話も紹介されている。

そんな心の交わりの起点となったのが、基金の呼びかけ文だった。外務省が問題意識に変わりはないというのなら、今からでもHPを元に戻すべきだ。

毎日新聞 2014年10月19日

慰安婦問題 誤解招かぬ対外発信を

慰安婦問題を巡り政府の情報発信のありようを考えさせられる事案があった。

読売新聞 2014年10月18日

慰安婦問題 韓国も自らの足元を見つめよ

重要な証言が明らかな誤りと分かった以上、修正するのは当然だ。

1996年に慰安婦問題に関する国連報告書をまとめたスリランカ人法律家、クマラスワミ氏に対し、日本政府が、報告書の吉田清治氏の証言部分の撤回を申し入れた。

多くの朝鮮人女性を慰安婦として強制連行したとする吉田証言は報告書作成時から疑問視されていた。最初に報じた朝日新聞も今年8月、虚偽を正式に認めた。

クマラスワミ氏は、撤回に応じなかった。吉田証言は「証拠の一つにすぎない」と主張している。首をかしげざるを得ない。

報告書で、元慰安婦を除けば、吉田氏は強制連行を認めた唯一の証言者だ。それが虚偽であることは、当事者以外の客観的証拠がないことを意味する。「証拠の一つ」との主張は説得力を欠く。

菅官房長官は「国際社会において、我が国の考えを粘り強く説明し、理解を得たい」と語った。強制連行を裏付ける証拠は存在しないという日本の立場を、強力に世界に発信することが大切だ。

人権問題を扱う国連総会第3委員会では、韓国大使が慰安婦問題について「今も解決していない紛争時の性暴力の主な事例だ」と日本を批判した。慰安婦問題を取り上げたのは4年連続だ。

だが、慰安婦を含む日韓間の請求権問題は、1965年の国交正常化により国際法上は「解決済み」だ。政府は、アジア女性基金を設置し、韓国人約60人を含む285人に「償い金」も支給した。

第3委員会で日本側は、朝日新聞が吉田証言の誤りを認めたことにも言及し、韓国に反論した。

そもそも、韓国が、日韓2国間の問題を国連の場に繰り返し持ち出すこと自体が異様である。

「性暴力」を問題視するなら、韓国国内はどうなのか。

今年6月、在韓米軍を相手にしていた「米軍慰安婦」らが、売春を強要されたなどとして国家賠償請求訴訟を起こした。支援団体によると、韓国政府が米軍専用の特定地域を設置し、慰安婦の管理なども行っていたという。

ベトナム戦争に派遣された韓国兵士らがベトナム人女性との間にもうけて、現地に残した子供は5000~3万人とされる。

売春や強姦ごうかんの例も含まれ、「日本に執拗しつように道徳的責任を問いながら、我々の暴力について免罪符を主張するのは自己欺瞞ぎまん」とするコラムを掲載した韓国紙もある。

韓国は、自らの足元を見つめるべきではないか。

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