政治とカネを巡る小渕経済産業相の疑惑が浮上している。実態の解明を急ぎ、説明責任を果たさなければならない。
問題とされるのは、小渕氏の2関連政治団体が2010、11年に選挙区の支援者向けに開いた観劇会の収支だ。
収支報告書には、参加者の会費計742万円が計上されている。一方、会場の東京・明治座への支払額は計3384万円で、2642万円もの差額がある。
小渕氏は「実費を頂いていると思っていた」と説明した。「(差額分を団体が)補填していれば、法律に引っ掛かるという認識は持っている」とも語った。有権者への寄付を禁じる公職選挙法に抵触する可能性がある。
12年の観劇会が報告書に記載されていないことも判明した。政治資金規正法違反の恐れがある。
こうした杜撰な報告書を提出していたのは重大な問題だ。
小渕氏は、観劇会の実態や報告書作成の経緯を調査し、その結果を早急に明らかにすべきだ。
小渕氏の資金管理団体は、義理の兄が経営する服飾雑貨店から計384万円分のネクタイや書籍などを購入していた。
小渕氏は「政治活動の範囲だ」と主張するが、野党は「公私混同」と批判している。不適切な支出の有無を点検する必要がある。
9月の第2次安倍改造内閣の発足後、新任閣僚の政治とカネに関する問題が相次いで発覚した。
民主党は、松島法相が今夏、地元の祭りで「うちわ」を配ったと指摘し、公選法違反の疑いがあると追及している。松島氏は「議員活動を印刷した(うちわ型の)配布物だ」と釈明するが、法相就任後も作成していたという。
江渡防衛相の資金管理団体は先月、江渡氏への寄付350万円を、事務所職員らの人件費に訂正したことなどが批判されている。
第1次安倍内閣では、不透明な事務所費の問題などを巡り、閣僚が相次いで辞任した。政権が行き詰まる原因の一つともなった。
政治資金規正法が改正され、使途の透明性が今、一層求められている。国民の視線も厳しい。教訓が生きていないのは残念だ。
政権が、閣僚の不祥事の処理に追われれば、国政遂行に支障が出かねない。臨時国会は、地方創生、女性活躍推進など重要法案が多い。消費税率の10%への引き上げを判断する時期も控えている。
首相は、内閣が一致して、重要課題に取り組める体制を早急に整えることが求められる。
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