エボラ対策 感染防護体制の徹底を

朝日新聞 2014年10月19日

エボラ出血熱 国内外で態勢強化を

もはや、アフリカの話ではない。欧米の先進国でも感染の広がりが現実味を増してきた。

スペインと米国で、エボラ出血熱患者の治療にあたった看護師らへの二次感染がわかった。スペインでは一時、看護師搬送での「3次感染」も疑われた。

不穏な情勢ではあるが、やがて感染が大陸を超えて伝わる事態は考えられたことであり、浮足立つ必要はない。冷静かつ着実に対策を強めるべきだ。

日本にも、どんな経路で入ってくるかわからない。日本政府は、国内での備えを早急に固めるとともに、流行地での対策拡充をめざす国際行動に積極参加しなければならない。

世界保健機関(WHO)の報告では、今回これまで疑い例も含め9216人が感染し、うち4555人が死亡している。

患者の発生はリベリアなど西アフリカの国々に、スペインと米国が加わり7カ国に増えた。最も深刻なリベリアでは患者の数の把握さえ難しいという。

欧米で二次感染が確認されたことで、「先進国で、厳重な防護服を着ていても防げないのか」との不安も出ている。

必ずしも正しい解釈とはいえない。同じ患者の治療にあたった関係者は多く、そのなかで例外的に感染したにすぎない。

国際組織「国境なき医師団」によると、流行地の医療従事者の感染の90%以上は防護服の着脱が手順通りでなかったり、防護服が不適切だったりしたミスが原因という。米国でも同様の失敗が取りざたされている。

日本でも指定医療機関の関係者向け研修や訓練が始まった。スペインや米国から詳しい情報を得て万全を期したい。

潜伏期間が長いので入国時の検疫は効果が限られる。だが、入国後の体調悪化への対処法を正しく伝え、国内での感染リスクを抑えることが重要だ。

国内ではエボラウイルスの検査や研究ができる「BSL4」級の施設が動いていない。早急に整備すべきではないか。

一方、流行国への支援も待ったなしだ。リベリアなどでは隔離治療施設が足りず、感染拡大を防げずにいる。安倍首相は9月に国連の会合で4千万ドル(約42億円)の追加支援や専門家の派遣を表明した。国際機関と連携して具体化を急いでほしい。

エボラとの闘いは、負け続きではない。セネガルとナイジェリアでは約6週間、新たな患者の発生が途絶えている。

各国とも、渡航制限などで国の扉を閉めるような政策に走るのではなく、科学的で地道な対策を積み重ねることが大切だ。

毎日新聞 2014年10月16日

エボラ対策 感染防護体制の徹底を

エボラ出血熱の感染が拡大を続けている。米国とスペインでは、患者のケアにあたった医療従事者が感染するという新たな事態が起きた。これまでも、西アフリカの流行地では医療従事者の感染が大きな問題となっていたが、感染防御の装備も体制もきちんと機能しているはずの国で医療従事者の2次感染が起きたことで、危機感が増している。

読売新聞 2014年10月17日

エボラ出血熱 封じ込めへ世界の結束を急げ

エボラ出血熱の拡大が止まらない。ウイルスの封じ込めへ、国際社会の結束が問われている。

エボラウイルスが猛威を振るっているのは、リベリア、シエラレオネ、ギニアの西アフリカ3国だ。約9000人が感染し、半数が死亡した。

感染者は週に1000人のペースで増えている。適切な治療を受けられないまま、自宅などで死亡する人が多い。犠牲者が路上で放置されている例もあるという。

国連の緊急対策チームは、安全保障理事会への報告で、「今、エボラウイルスを抑え込まなければ、我々は前例のない事態に直面する」と警告した。

世界保健機関(WHO)は、このままでは2か月後に、感染者の発生が週1万人に増加すると試算している。極めて深刻である。

国境を越えた人の往来が活発になった現代社会では、感染症は世界規模で拡散しやすくなっている。エボラ出血熱の患者は、すでに欧米でも確認された。

世界的に不安が拡大している。国際経済にも悪影響が及びかねない。オバマ米大統領が英仏独伊首脳とのテレビ会議で、「国際社会の安全に対する脅威だ」と強調したのは、もっともである。

オバマ氏は、封じ込めに必要な資金や人員の確保のため、国際協力の強化を呼びかけた。何より重要なのは、患者の多い地域に治療の専用施設を整備し、医療スタッフを増強することだ。

米国は、軍隊を派遣し、治療施設の増設に乗り出した。兵員は4000人近くになる見込みだ。英国軍も同様の活動に着手した。

医療スタッフの感染が増えているのも問題だ。犠牲者は死者全体の約1割を占める。防護服が足りず、手を洗う水も十分でない。資機材の提供が急務である。

安倍首相はオバマ氏との電話会談で、「あらゆる支援を加速させる」と述べた。日本政府は、国連総会などの際に約束した4500万ドルの支援の実施を急ぐ方針だ。医師や看護師ら20人以上を現地に派遣することも計画している。

治療薬での貢献も求められる。期待されているのが、日本製の抗インフルエンザ薬だ。エボラウイルスにも有効とされ、現地政府などによる臨床試験が検討されている。積極的に協力すべきだ。

日本でエボラ患者が発生した時の備えも欠かせない。

発症していなければ、空港など水際での発見は難しい。医療機関での的確な診断と隔離、治療の体制を充実させておきたい。

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