国民の「知る権利」を守りつつ、機密情報の漏洩防止と両立させることが肝要である。
政府は、特定秘密保護法を12月10日に施行することを閣議決定した。秘密の指定・解除のルールや手続きなどを定める運用基準と政令も決めた。
秘密保護法は、防衛、外交、スパイ防止、テロ対策の4分野の特定秘密を漏らした公務員らに最高で懲役10年を科すとしている。
日本の平和と安全の確保には、安全保障に関する情報を米国や関係国と共有することが不可欠だ。それには、政府全体で包括的な漏洩防止策を講じ、各国が日本に情報を提供しやすい環境を整え、信頼関係を築く必要がある。
運用基準と政令は、秘密指定の対象として55の細目を明示し、指定権限を持つ行政機関を61から外務、防衛両省など19に絞り込んだ。法律の拡張解釈の禁止、報道の自由への配慮、公文書管理法と情報公開法の適正運用も明記した。
秘密の対象が無制限に広がるとの主張があったが、かなり具体的な線引きが示されたと言える。
7月の運用基準素案の提示後、意見公募(パブリックコメント)に2万3820件の意見が寄せられた。その結果、「国民の知る権利の尊重」の明記や、違法行為の秘密指定禁止、5年後の基準見直しなど27か所が修正された。
国民の関心が高い中、建設的な提案を積極的に運用基準に反映したことは妥当である。
不適切な秘密指定に関する内部通報の窓口も、政府内に設置される。通報者が不利益を受けないよう配慮することが大切だ。
運用基準は、官僚による安易で恣意的な秘密指定や文書管理を防止するため、重層的な歯止め規定を盛り込んだと評価できる。
まだ不十分だ、という声も一部にある。しかし、具体的な基準が明示されないまま、各府省が独自の判断で秘密文書を扱っている現状と比べれば、手続きの透明性が高まることにより、身勝手な運用をしにくくなるはずだ。
無論、公務員が罰則に萎縮して取材に非協力的になったり、安易な秘密指定をしたりする懸念が完全に払拭されたとは言えない。
安倍首相や関係閣僚は、各行政機関が法律を適切に運用するよう指導力を発揮すべきだ。国民にも丁寧な説明を続けてほしい。
法律の運用状況をチェックするため新設される国会の情報監視審査会や政府の情報保全監察室も、緊張感を持って、その役割を果たすことが求められる。
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