再エネの購入 普及の機運をいかせ

朝日新聞 2014年10月04日

再エネの購入 普及の機運をいかせ

固定価格買い取り制度(FIT)が始まってから順調に伸びてきた再生可能エネルギーの普及にブレーキがかかり始めた。

再エネでできる電気を全量買い取ることが義務づけられている大手電力側で、送電線の受け入れ容量が足りなくなる地域が出てきたためだ。大手10社のうち九州電力など5社がほぼ全域で新規の契約をストップした。

容量不足は、再エネへの投資意欲や活用への期待が大きいことのあらわれだ。しかし、太陽光や風力には、季節や天候、時間帯によって発電量の差が大きい難点がある。うまく調節しないと周波数や電圧に影響して停電や機器の故障につながる。

解決手段のひとつは、送電網を増やして広域的に運用することで変動を吸収しやすくすることだ。電力会社の間の送電網を太くすれば、例えば九州だけだと余ってしまう再エネ発電による電気を、電力需要があるほかの地域に流せるようになる。

これまで送電網への投資は電力各社の経営判断に委ねられてきた。電力システム改革では送電と発電の部門が分離する。個別の事情に縛られず、全体を見た送電網が築けるようになる。

来年4月には各地の送電業者を束ねる広域的な運用機関ができて主要な送電線や電力会社をまたぐ連系線の整備を担う。国の政策上の必要性や発電事業者からの申し立てに基づいて送電網の増強もしやすくなる。

費用負担のあり方など、詰めるべき点は残っているものの、こうした電力改革を着実に進めることが大切だ。

もっとも、大規模な送電網の整備には時間がかかる。発電施設と接続する箇所での送電線の容量不足といった問題もある。

経済産業省は作業部会を設け、各社の受け入れ可能量の計算方法や条件を検証する。変圧器や蓄電池の増強なども電力会社任せにせず、前倒しでの実施を含めて考えてもらいたい。

事業申請が突出して多い大規模な太陽光発電に対しては、現在は年1回の買い取り価格見直しの頻度を増やすなど、価格メカニズムを通じて適正規模へと誘導するのも一案だろう。

原子力や化石燃料に代わるエネルギーの開発や温暖化対策の観点からも、再エネの促進は世界の潮流だ。

政府は新しいエネルギー基本計画で、13年から3年程度を「再エネの導入を最大限加速する」期間とし、2030年には発電量の2割以上にする目標を掲げてもいる。再エネ普及の機運をしぼませないよう、知恵を絞ってほしい。

毎日新聞 2014年10月07日

再生エネの普及 国は民間任せにするな

再生可能エネルギーの普及に暗い影が差している。

読売新聞 2014年10月09日

再生エネ中断 電力の安定供給が優先される

太陽光や風力など再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を巡り、大手電力会社が、新たな受け入れを中断する動きが広がっている。

電力10社のうち北海道、東北、九州など7社で、買い取り申請が急増し、受け入れ能力を超えた、と説明している。このままでは、電力需給バランスが崩れ、停電を起こす恐れがあるという。

再生エネはできる限り普及させたいが、電力の安定供給が最優先である。政府は買い取り制度の欠陥を早急に正さねばならない。

政府が認定した再生エネ発電所がすべて稼働した場合の供給能力は7000万キロ・ワットとなり、全発電量の2割を目指すという政府目標の9割を達成できる計算だ。

数字の上では再生エネ導入が順調に進んでいるように見えるが、落とし穴があった。

太陽光などは、天候や時間帯によって発電量が急激に変動する短所を抱えている。需要量と的確に均衡を保たないと、電気の周波数や電圧が乱れ、停電や設備の故障を引き起こす恐れがある。

再生エネが多いほど、火力など他の電源の発電量を調整し、需給均衡させることが困難になる。

再生エネ特別措置法が、電気の円滑な供給に支障が生ずるおそれがある場合は、電力会社が再生エネの買い取りを拒否できると定めているのは、このためだ。

再生エネ導入の急加速を受け、電力各社が、将来の安定供給に危機感を持ち、受け入れ制限に踏み切ったのは理解できる。

経済産業省は有識者による作業部会を設け、再生エネ買い取り可能量の調査を始めた。小渕経産相は7日の参院予算委員会で「年内に検証を終えたい」と述べた。

再生エネ発電の計画が中断を強いられ、窮地に立つ事業者も少なくない。正確なデータに基づき、しっかり検証してもらいたい。

再生エネ発電をより多く受け入れるには、大型蓄電池の設置や、電力会社間の送電線拡充による余剰電力の相互受け入れなどの手段がある。ただ、これらを本格的に実施するには、兆円単位の費用がかかると言われる。

再生エネを急激に拡大すれば、こうしたコストがかさむことは予想されていたが、それを賄うルールさえ決まっていない。

高すぎる買い取り価格や審査体制の不備なども含め、民主党政権時代に決めた制度設計の甘さが、問題の根幹にある。政府は制度を抜本的に見直し、現実的な再生エネ普及策に改めるべきだ。

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