太陽光や風力など再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を巡り、大手電力会社が、新たな受け入れを中断する動きが広がっている。
電力10社のうち北海道、東北、九州など7社で、買い取り申請が急増し、受け入れ能力を超えた、と説明している。このままでは、電力需給バランスが崩れ、停電を起こす恐れがあるという。
再生エネはできる限り普及させたいが、電力の安定供給が最優先である。政府は買い取り制度の欠陥を早急に正さねばならない。
政府が認定した再生エネ発電所がすべて稼働した場合の供給能力は7000万キロ・ワットとなり、全発電量の2割を目指すという政府目標の9割を達成できる計算だ。
数字の上では再生エネ導入が順調に進んでいるように見えるが、落とし穴があった。
太陽光などは、天候や時間帯によって発電量が急激に変動する短所を抱えている。需要量と的確に均衡を保たないと、電気の周波数や電圧が乱れ、停電や設備の故障を引き起こす恐れがある。
再生エネが多いほど、火力など他の電源の発電量を調整し、需給均衡させることが困難になる。
再生エネ特別措置法が、電気の円滑な供給に支障が生ずるおそれがある場合は、電力会社が再生エネの買い取りを拒否できると定めているのは、このためだ。
再生エネ導入の急加速を受け、電力各社が、将来の安定供給に危機感を持ち、受け入れ制限に踏み切ったのは理解できる。
経済産業省は有識者による作業部会を設け、再生エネ買い取り可能量の調査を始めた。小渕経産相は7日の参院予算委員会で「年内に検証を終えたい」と述べた。
再生エネ発電の計画が中断を強いられ、窮地に立つ事業者も少なくない。正確なデータに基づき、しっかり検証してもらいたい。
再生エネ発電をより多く受け入れるには、大型蓄電池の設置や、電力会社間の送電線拡充による余剰電力の相互受け入れなどの手段がある。ただ、これらを本格的に実施するには、兆円単位の費用がかかると言われる。
再生エネを急激に拡大すれば、こうしたコストがかさむことは予想されていたが、それを賄うルールさえ決まっていない。
高すぎる買い取り価格や審査体制の不備なども含め、民主党政権時代に決めた制度設計の甘さが、問題の根幹にある。政府は制度を抜本的に見直し、現実的な再生エネ普及策に改めるべきだ。
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