「イスラム国」 テロ戦闘員の流入を阻止せよ

朝日新聞 2014年10月06日

テロリスト 生まない土壌つくろう

欧米各国や豪州、アジアの若者たちが続々と中東に渡り、イスラム過激派のために戦う。戦闘員として経験を積むと、今度は母国に戻って、市民社会を標的にテロを準備する――。

このような悪夢が、イラクとシリア国境地帯を本拠とする組織「イスラム国」の伸長で、現実のものとなりつつある。危機感を募らせた欧米などの主導で、国連安全保障理事会は、テロに対する措置を各国に求める決議を全会一致で採択した。

ただ、テロリストを摘発しようと治安対策ばかり強化しても、根源的な解決は導けない。なぜ若者が過激派に走るのか。その土壌となっているそれぞれの国内問題に取り組み、「テロリストを生まない社会」を築く努力が必要である。

そのためには、心理学者や宗教者、教師、カウンセラーら、若者たちと接してきた専門家との協力も求められるだろう。幅広い知恵を結集し、息の長い取り組みを続けてほしい。

「イスラム国」には、約80カ国から1万5千人以上が戦闘員として合流したとみられる。フランスや英国、ドイツなどからは数百人単位に達するという。

それぞれの国のイスラム系移民社会の出身者や、キリスト教からの改宗者が目立つ。多くは、貧困や失業に直面し、差別や偏見を受けて、母国で疎外感を抱いた若者たちだ。彼らに対して、過激派の巧妙な勧誘と宣伝が功を奏している。

安保理の決議は、このようなテロリストが国境を越えて移動するのを防ぐよう、各国に要請した。

確かに、テロを防ぐ司法・治安対策と、それに向けた各国の連携は必要だ。ただ、取り組みを進めるうえでは、細心の注意が求められる。目的を追求するあまり、それぞれの国が培ってきた市民の自由や人権が損なわれてはならないからだ。

テロ組織は暴力的で、動きも見えにくい。そのような相手に民主的な手法で対抗するのは、極めて難しい作業だ。

だとしても、欧米がテロ組織と同じレベルに立って力で応じれば、民主国家としての存在意義が問われるだろう。

ジレンマを抱えての、難しい戦いである。民主国家の耐久力が試される。

自由や人権の確保と、テロ対策とを、どう両立させるか。開かれた議論を重ねつつ、解決策を探る姿勢が欠かせない。

ボーダーレスのいま、日本人が攻撃に遭う可能性もある。テロと向き合う国際論議に私たちも積極的に参加すべきだ。

読売新聞 2014年10月06日

「イスラム国」 テロ戦闘員の流入を阻止せよ

中東のイスラム過激派組織「イスラム国」に、世界各地のテロリストや過激思想の持ち主が合流する。そんな危険な現状は放置できない。

国連安全保障理事会が、テロ目的の外国渡航者やその支援者を処罰するための法整備を加盟国に義務づける決議を採択した。

シリアなどで勢力を拡大するイスラム国への外国人戦闘員の流入を阻止するのが目的だ。イスラム国から出身国に戻った戦闘員によるテロを防ぐことも目指す。

オバマ米大統領は「80か国以上から1万5000人以上の外国人戦闘員がシリアに渡った」と指摘した。イスラム国の思想に共鳴する若者らがインターネットなどによる勧誘に応じている。

国際社会は、イスラム国の脅威に対する危機感を共有している。特に、多数のイスラム教徒移民を抱える欧州諸国は、決議を受けた法整備などに熱心だ。

フランス下院は、過激な活動を計画する仏国籍者の旅券の一時剥奪や、テロを正当化するウェブサイトの閲覧制限を柱とするテロ対策法案を可決した。英国も、過激派の旅券の一時剥奪や旅客機搭乗拒否などを検討している。

日本政府は、テロ目的の渡航を刑法など現行法で取り締まる方針だ。テロ組織への資金の流れを遮断する新法も制定する方向で調整している。日本でも、テロリストの動きを封じたい。

懸念されるのは、イスラム国がアジア太平洋地域のイスラム教徒に急速に浸透していることだ。

米太平洋軍司令官によると、この地域から約1000人が、イスラム国への参加を目的にイラクやシリアに向かったという。

世界最多の約2億人のイスラム教徒を抱えるインドネシアなど東南アジアの複数の過激派組織がイスラム国支持を表明している。支援金を集めている組織もある。

ウイグル族と当局との衝突が続く中国・新疆ウイグル自治区からイスラム国に参加したイスラム教徒も一定数いるとされる。

テロ拡散の警鐘となったのは、オーストラリア当局が国内でイスラム国支持者15人を拘束した事件だ。市民を標的にした無差別殺人テロを企てていたという。

アジアでイスラム国に対する共感が広がる背景に、貧困や腐敗の蔓延まんえんなど、社会の不条理への強い不満があるのは間違いない。

イスラム国の更なる浸透を防ぐには、こうしたアジア各国の土壌を中長期的に改革する、粘り強い努力も欠かせない。

マイキー - 2016/12/01 10:25
イスラム国にマイキーを入国させて♡
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