批判するばかりでは、国会論戦が深まらない。民主党は、野党第1党の責任として、重要政策の対案を示したうえで、論争すべきだ。
衆院で安倍首相の所信表明演説に対する代表質問が始まった。
民主党の海江田代表は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」について「企業が儲けるのが最優先という考え方だ」と批判した。政府が目指す法人税率引き下げに関しても、多額の財源が必要として否定的な考えを示した。
首相は、アベノミクスによって「経済の好循環が生まれ始めている」と反論した。物価上昇を踏まえて、「賃金が毎年増える状況を実現する」とも強調した。
企業の収益増により賃金上昇や雇用拡大を実現し、消費拡大を景気回復につなげる「経済の好循環」は、デフレ脱却に欠かせない。企業の国際競争力を強化するには、法人減税が有効である。
所得格差の拡大など、副作用にも目配りしつつ、アベノミクスを推進することが重要だ。
民主党は今年5月、中間層と地域経済の再生を柱とする経済政策をまとめているが、海江田氏はこの詳細には触れなかった。
消費税率の10%への引き上げについて、海江田氏は、増税時の社会保障の充実を求めた。首相は、増収分の2割を新規の社会保障政策に充てる考えを示した。
首相は年内に、経済状況などを総合的に勘案し、増税の是非を判断する予定だ。景気や財政再建にも大きな影響を与える重要な判断となる。国会でも、多角的な議論を行うことが求められる。
集団的自衛権の行使を容認する安全保障法制の整備について、海江田氏は「国民には何も説明のないまま議論が棚上げされようとしている」と述べた。関連法案の提出を来年の通常国会に先送りする政府の方針を非難したものだ。
だが、「先送り批判」は民主党にこそ当てはまる。民主党は行使容認の是非について、今なお党の見解を集約できないでいる。早急に党内論議を行う必要がある。
維新の党の江田共同代表は、消費増税について「アベノミクスの失敗への決定的な引き金を引くかもしれない」と語った。安倍政権は「歳出のムダ削減が全く不十分だ」とも指摘した。
前身の日本維新の会は安倍政権に是々非々の立場だったが、維新の党は対決姿勢を強めている。仮に「責任野党」から転換する場合でも、健全な政策論争を仕掛ける姿勢は維持すべきだろう。
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