衆院代表質問 民主党は対案示して論争せよ

朝日新聞 2014年10月03日

代表質問 論争挑んでこそ野党

安倍首相の「安全運転」には終わらせまい。野党のそんな意気込みが見えた論戦だった。

きのうまでの衆参両院での代表質問は、1月の通常国会とはやや様子が変わった。野党第1党の民主党とともに、維新の党も安倍政権への対決姿勢を鮮明にしたからだ。

圧倒的な力を持つ安倍政権に向き合う立ち位置が、ようやく定まったということだろう。この姿勢をこれからも貫き、予算委などを舞台にさまざまな論点を示してほしい。

通常国会では「責任野党とは政策協議を行っていく」との首相の呼びかけに、野党の足並みが乱れた。だが、安倍政権は結局は議場外での自民、公明の与党協議ばかりを重視した。集団的自衛権の行使を認める閣議決定への過程はその典型だ。

衆参両院で多数を持つ以上、与党はそうしたやり方に傾きがちだ。そこで野党が存在感を示すには、政策論で切り込む正攻法しかあるまい。

民主党の海江田代表は、「地方創生」と「女性の活躍」を掲げる首相にこう問いかけた。

「各府省が地方創生という冠をつけて縦割りのバラマキ予算要求を行っている」「首相は子育てや介護に追われ、仕事との両立に疲れ果てている女性を忘れてはいないか」

地方や女性を重視すべきなのは総論ではその通り。だが、政権がこれから具体化するという政策が霞が関や大企業からの視点に偏ることはないのか。野党の側からも対案をぶつけていくべきだ。

維新の党の江田代表は、消費増税の必要性は認めつつ「とてもさらなる増税を行える経済体力にはない」と語った。同じ意見の野党は多い。

首相は所信表明演説で有効求人倍率の高水準や賃上げの実績を誇ったが、経済指標は明るいものばかりではない。アベノミクスの中間総括の意味でも、税率の再引き上げについては徹底的な議論が必要だ。

江田氏はまた、国会議員に毎月100万円支給されている「文書通信交通滞在費」について、使途を公開する法改正を首相に呼びかけた。

首相は「国会において議論を」との答弁にとどめたが、消費増税に伴い自民、公明、民主の3党が約束した「身を切る改革」は何ら実現していない。定数削減には賛否があるにしても、経費の透明化に何をためらう必要があろうか。

野党は、巨大与党が安閑としていられない提案を打ち出し、国会を活性化させてほしい。

毎日新聞 2014年10月02日

衆参代表質問 論点は見えてきた

「地方創生」や「女性の活躍」といった異論をはさみにくいテーマを前面に掲げる一方で、集団的自衛権の行使容認や消費税率の再引き上げなど国民の間でも意見が分かれる課題には触れたがらない。そんな姿勢が鮮明な安倍晋三首相に対して野党がどう論戦に挑むのか。臨時国会の焦点はそこにある。

読売新聞 2014年10月01日

衆院代表質問 民主党は対案示して論争せよ

批判するばかりでは、国会論戦が深まらない。民主党は、野党第1党の責任として、重要政策の対案を示したうえで、論争すべきだ。

衆院で安倍首相の所信表明演説に対する代表質問が始まった。

民主党の海江田代表は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」について「企業がもうけるのが最優先という考え方だ」と批判した。政府が目指す法人税率引き下げに関しても、多額の財源が必要として否定的な考えを示した。

首相は、アベノミクスによって「経済の好循環が生まれ始めている」と反論した。物価上昇を踏まえて、「賃金が毎年増える状況を実現する」とも強調した。

企業の収益増により賃金上昇や雇用拡大を実現し、消費拡大を景気回復につなげる「経済の好循環」は、デフレ脱却に欠かせない。企業の国際競争力を強化するには、法人減税が有効である。

所得格差の拡大など、副作用にも目配りしつつ、アベノミクスを推進することが重要だ。

民主党は今年5月、中間層と地域経済の再生を柱とする経済政策をまとめているが、海江田氏はこの詳細には触れなかった。

消費税率の10%への引き上げについて、海江田氏は、増税時の社会保障の充実を求めた。首相は、増収分の2割を新規の社会保障政策に充てる考えを示した。

首相は年内に、経済状況などを総合的に勘案し、増税の是非を判断する予定だ。景気や財政再建にも大きな影響を与える重要な判断となる。国会でも、多角的な議論を行うことが求められる。

集団的自衛権の行使を容認する安全保障法制の整備について、海江田氏は「国民には何も説明のないまま議論が棚上げされようとしている」と述べた。関連法案の提出を来年の通常国会に先送りする政府の方針を非難したものだ。

だが、「先送り批判」は民主党にこそ当てはまる。民主党は行使容認の是非について、今なお党の見解を集約できないでいる。早急に党内論議を行う必要がある。

維新の党の江田共同代表は、消費増税について「アベノミクスの失敗への決定的な引き金を引くかもしれない」と語った。安倍政権は「歳出のムダ削減が全く不十分だ」とも指摘した。

前身の日本維新の会は安倍政権に是々非々の立場だったが、維新の党は対決姿勢を強めている。仮に「責任野党」から転換する場合でも、健全な政策論争を仕掛ける姿勢は維持すべきだろう。

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