消費税率引き上げ後の景気減速は長引くのではないか。そんな懸念を抱かせる内容である。
9月の日銀企業短期経済観測調査(短観)は、景況感を示す大企業・製造業の業況判断指数が13と、前回6月調査より1ポイント改善した。
小売りやサービスなど国内需要への依存度が高い大企業・非製造業は、6ポイントの大幅悪化だった。中小企業は製造業、非製造業とも2四半期連続で指数が低下した。
3か月先の予想は、大企業も中小企業も、景況感の変化が横ばい圏内だった。しばらく景気の足踏み状態が続くと、先行きを慎重に見る企業が多いようである。
景況感がさえないのは、個人消費が低迷しているためだ。消費税率引き上げ前の駆け込み需要で急増した後、反動減で落ち込み、回復の足取りは重い。
大雨など夏の天候不順の影響もあるが、消費増税分を含め約3%の物価上昇に、収入の伸びが追いついていないことが、消費を冷え込ませている主因と言える。
政府・日銀は、景気の緩やかな回復シナリオを描いているが、楽観は禁物だ。日本経済の変調に対する警戒を強め、景気最優先の政策運営に徹してもらいたい。
企業の利益が賃上げとして働く人に還元され、家計の所得増が消費を押し上げる「好循環」を生み出さないと、民需主導の持続的成長は実現できまい。
短観では、企業の「人手不足感」が、1992年以来の高水準になったことが分かった。賃金は上がりやすくなると期待される。
ただし、人員不足による事業縮小など副作用の恐れもある。影響を注視することが重要だ。
円相場は一時、約6年ぶりに1ドル=110円台まで円安が進行した。輸出企業には追い風だが、輸出や海外事業を手がけない内需型産業や中小企業は、輸入原料の高騰などで経営が圧迫される。
政府は、法人税実効税率の引き下げや規制緩和など、国内の事業環境を改善させる成長戦略を、着実に推進する必要がある。
安倍首相の提唱する「地方創生」や女性の活躍支援は、人口減など構造的な変化への対応策を講じ、成長力を底上げする狙いがある。政府は、実効性のある具体策作りを急がねばならない。
首相は年内に、消費税率を来年10月から10%に引き上げるかどうか判断する。再増税に踏み切るのなら、今度こそ食料品などの生活必需品に軽減税率を導入し、家計の負担を和らげるべきだ。
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