北朝鮮の不誠実な対応をいかに改めさせ、日本人拉致問題を前進させるか。政府には、したたかな外交が求められる。
日朝の外務省局長級協議が中国・瀋陽で行われた。北朝鮮の宋日昊日朝交渉担当大使は、拉致被害者らの再調査について「報告できる段階にない。詳細は平壌で特別調査委員会から直接聞いてほしい」と要請した。
政府は、外務省幹部らを平壌に派遣する方向で調整している。北朝鮮に真剣な調査を迫り、具体的な成果を上げるには、どんな措置を取るのが効果的なのか、慎重に見極めることが重要である。
外務省の伊原純一アジア大洋州局長は協議で、拉致被害者らの調査を迅速に行い、その結果を速やかに報告するよう求めた。
宋大使は「科学的かつ客観的な調査に着実に取り組んでいる」と語った。調査は「初期段階」にあり、個別結果を伝えることはできない、との主張も繰り返した。
より多くの見返りを狙って、情報を小出しにするのは北朝鮮の常套手段だ。そうした時間稼ぎを続けることは、許されない。
伊原局長は、「すべての調査が重要だが、特に拉致問題が最重要だ」と宋大使に伝えた。
調査は、拉致被害者のほか、拉致の可能性のある特定失踪者や日本人遺骨問題なども対象となる。この中で拉致被害者らの安否調査を優先するよう促したものだ。
政府は、北朝鮮による拉致被害者として17人を認定している。このうち横田めぐみさんら12人が未帰国だ。その安否に関する北朝鮮の過去の説明は信ぴょう性が乏しいものが多い。政府が最重点に位置づけたのは当然である。
菅官房長官は「(北朝鮮との)扉は簡単に閉ざさない方がいい。対話と圧力の姿勢で臨んでいきたい」と語っている。
北朝鮮は、伝統的な友好国とされる中国との関係が悪化し、韓国とは対話が進んでいない。米国との核協議も途絶えている。国際的な孤立から脱却するため、対日関係を改善したいとの思惑が依然としてあるのだろう。
この構図を踏まえ、拉致問題の具体的な進展につなげたい。
重要なのは、「行動対行動」の原則を貫くことである。北朝鮮が前向きな対応を取れば、日本も見合った措置を取りたい。
政府は、7月の調査開始時に北朝鮮に対する制裁の一部を解除した。北朝鮮が誠意のない対応を続けるなら、制裁を復活させることも選択肢となろう。
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