所信表明演説 地方創生の具体論が問われる

朝日新聞 2014年09月30日

臨時国会 課題は地方だけでなく

安倍内閣の改造から初めてとなる臨時国会が開会した。首相が論戦の中心テーマに掲げるのは「地方創生」と「女性が輝く社会」である。

首相はきのうの所信表明演説で、こう強調した。

「若者にとって魅力ある町づくり、人づくり、仕事づくりを進める。これまでとは次元の異なる大胆な政策をとりまとめ、実行していく」

「女性の活躍は、社会の閉塞(へいそく)感を打ち破る大きな原動力となる。その認識を共有し、国民運動を展開していく」

確かに、これからの日本の人口減少を考えれば、ともに重要な論点ではある。少なくとも方向性に異議はない。

ただし、このふたつをことさら強調する首相の姿勢には、来春の統一地方選をにらんだ得点稼ぎのにおいがする。この国会で議論すべき課題は、これだけにとどまるわけがない。

安倍首相は先の通常国会で、集団的自衛権の行使を認める閣議決定を会期内にすませるため、自民、公明の与党協議を急がせた。最終的に閣議決定は閉会後となったが、あまりに短兵急な運びだった。

ところが、首相は閣議決定の内容を実行に移すための関連法の改正は来年の通常国会に先送り。きのうの演説でも「切れ目のない安全保障法制の整備に向けた準備を進める」とあっさり触れただけだ。

法案づくりに時間がかかる事情はあるにせよ、根強い反対を抑えて突き進んだあの性急さはいったい何だったのか。

首相は、消費税率の10%への再引き上げを、臨時国会の閉会後に判断する構えだ。「アベノミクス」の成果を強調する首相だが、一連の政策が日本の経済再生に本当に有効だったのか、これからも成果が見込めるのか、論戦を通じて明らかにすべきだ。

首相はまた、原子力規制委員会が求める安全性が確認された原発は再稼働を進めると語った。だが、御嶽山の突然の噴火は、火山列島と呼ばれる国土で原発を稼働させることの危うさを改めて思い起こさせた。

この国会が政権の思い描く通りに進むかどうかは、ひとえに野党の力量にかかっている。

先の通常国会では「責任野党とは政策協議を行っていく」との首相の分断策に、野党は押され気味だった。

臨時国会を前に民主党は執行部を刷新、維新の党も政権との対決姿勢を見せる。野党は「多弱」の汚名を返上する気概を、論戦の中で示してほしい。

毎日新聞 2014年09月30日

首相所信表明 核心の説明が足りない

臨時国会が29日召集され、安倍晋三首相による所信表明演説が行われた。首相は地方と女性の活躍を重視しつつ経済成長を目指していく姿勢を強調した。

読売新聞 2014年09月30日

所信表明演説 地方創生の具体論が問われる

地方創生や「女性が輝く社会」の実現を通じて日本の成長力回復を目指す。安倍首相の狙いは理解できる。肝心なのは、その具体論である。

首相が衆参両院本会議で所信表明演説を行った。臨時国会を「地方創生国会」と位置づけ、地方の活性化と人口減対策のため、「これまでとは次元の異なる大胆な政策」を実行すると強調した。

「若者こそが危機に歯止めをかける鍵」と語り、若者に魅力的な町づくりや観光・地場産業の振興などに努める考えも示した。

首相の決意は伝わってくるが、各論の議論は始まったばかりだ。処方箋は明確ではない。今国会で成立を図る「まち・ひと・しごと創生法案」も、基本理念や国の役割などを定めるにとどまる。

日本の人口は50年後に8700万人と、現在の3分の2に落ち込み、全国の自治体の半数が消滅するとの推計もある。1億人程度の人口構造を保つ、という政府目標の達成は容易ではない。

政府は、自治体や民間とアイデアを出し合い、地域の実情に応じた対策を講じる必要がある。

過去の国土開発計画のように旧来型の公共事業や交付金をばらまくのでは効果は限られる。町づくりの成功事例を検証し、費用対効果の観点で有望な政策に重点的に予算配分することが大切だ。

首相は、女性の活躍を支援するため、子育て支援の拡充や、上場企業への女性役員数の公表義務づけに取り組む意向を表明した。女性の能力の活用は、成長戦略の一つの柱となろう。

大胆な規制改革や、安全性の確認された原発の再稼働も着実に進め、「経済最優先」の方針に有言実行で取り組んでもらいたい。

首相は、年内に是非を判断する消費税率の10%への引き上げに言及しなかった。どんな手続きと考え方で判断するのか、今後、丁寧に説明することが求められる。

外交面では、環太平洋経済連携協定(TPP)など、経済連携を戦略的に進める考えを示した。首相は就任以来、49か国を訪問し、原発、高速鉄道のトップセールスなど経済外交を重視してきた。

新興国の活力を取り込むことは日本経済の成長に資するし、経済力は外交カードとなる。外交と経済の好循環を目指したい。

中国、韓国との関係改善も急務だ。中韓両国にも前向きな兆候があり、11月の北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)は首脳会談の好機となる。静かな外交で中韓との調整を進めたい。

産経新聞 2014年09月30日

所信表明演説 地方消滅防ぐ青写真示せ

安倍晋三首相が「地方創生国会」と位置付ける臨時国会の所信表明演説で、「ふるさとを消滅させてはならない。もはや時間の猶予はない」との危機感を表明した。

わが国は人口減少という国難に直面している。超高齢化の問題と併せ、手をこまねいていれば人は地方を去り、衰退は加速される。それは日本全体が立ちゆかなくなることにつながる。

トップリーダーが、地方に焦点をあて、人口減少対策に積極的に取り組む姿勢を明確にした意義は大きい。政府が総力を挙げるのはもとより、与野党も「日本生き残りへのラストチャンス」になるとの認識を共有し、大いに論じあってほしい。

演説には気になる点もあった。多くの地方活性化の成功例を紹介したのは分かりやすい。だが、根っこにある人口減少などに対応しうる政策の青写真は、まだ見えてこない。

国家ビジョンを描く大きな構想力が問われている。東京圏では高齢者の激増で医療や介護施設の不足が懸念される。人口激減地域では、拠点市への人口集約が急がれる。こうしたヒトの移動をどう実現するかを語る必要がある。

首相は「景気回復の実感を全国津々浦々にまで届ける」ことの重要性も語った。地方経済を元気づける当面の対応は重要だ。しかし、地方創生を一時的な経済対策に矮小(わいしょう)化させてはならない。

数十年先を見越した地方の姿や人口減少対策の全体図を示してほしい。

首相が地方の自主的な取り組みの必要性を強調したのは妥当だ。地方が抱える課題はそれぞれに異なり、一律の「お仕着せ政策」を国が作ってもうまく機能しない。地方の力量も厳しく問われる。

使い道を自治体に任せる「一括交付金」も課題だ。人材の派遣や民間のアイデアを結集する必要もある。仕掛けづくりの後押しを国は惜しむべきでない。国家百年の計といえる地方創生には、腰を据えた取り組みが必要だ。

地方創生の関連法案も提出された。地方のやる気とアイデアを引き出せる、規制緩和や税財源移譲のあり方を具体化すべきだ。

集団的自衛権をめぐる安全保障法制や「イスラム国」など新たな国際情勢への言及は十分でなかった。代表質問などを通じて丁寧な説明を求めたい。

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