御嶽山噴火 見せつけられた予知の難しさ

朝日新聞 2014年09月29日

御嶽山噴火 火山リスクの直視を

紅葉を楽しむ、楽しい登山が暗転し、30人以上の登山者が心肺停止状態で発見された。うち4人の死亡が確認された。

長野・岐阜県境の御嶽山(おんたけさん)の噴火は、多くの被災者を出す惨事になった。身を隠す場所が限られる山頂付近で、噴石に直撃されたのだろうか。

今回、噴火するまで御嶽山の警戒レベルは、5段階で最低の「レベル1」(平常)だった。

気象庁は噴火を予知することは困難だったとしている。火山性の地震が今月になって増えたが、ほかに異常がなく地震も落ち着いていた。地震の続発は、地元自治体に伝えてもいた。

もし地震が増えた段階で、火口周辺への立ち入りを規制する「レベル2」に警戒レベルを引き上げていたら、あるいは立ち入り自粛を呼びかけていたら、被害を減らすことができただろうか。検証が必要だろう。

自己責任にゆだねられる部分が多い登山で、こうした警戒情報をどのように伝え、万が一の事態にどう備えるのか。それぞれの火山で、地元自治体は気象庁や登山愛好者らと相談してみてはどうだろう。

火山噴火予知連絡会の拡大幹事会はきのう見解をまとめた。今回の噴火は、地下水がマグマで熱せられて起きた水蒸気爆発で、火砕流を伴った。今後も同程度の噴火や火砕流の発生に警戒が必要と呼びかけている。

国内の噴火で犠牲者が出たのは、1991年の長崎県の雲仙・普賢岳以来だ。110もの活火山がある日本だが、全体としては静穏な歳月が続いてきた。

火山噴火は比較的低いリスクと見なされ、他の災害に比べ対策が遅れている。火山予知連が監視強化を求め、気象庁が常時監視する47火山でさえ、必ずしも観測体制は充実していない。

地震よりまれにしか起きず、直接的で実証的な研究が進みにくい難しさもある。大学など研究現場で実用的な成果を短期間で求める風潮が強まるなか、火山研究者は減少の一途だ。

このままでいいはずはない。

300年前の1707年に起きた富士山の宝永大噴火は、噴火規模を0~8で示す火山爆発指数で5相当と考えられているが、横浜で10センチ、江戸で5センチもの火山灰が降り積もった。

現代なら電子機器や交通網、上下水道など、都市機能は壊滅的な打撃を受けるだろう。

世界有数の火山国である以上、政府は火山のリスクを軽視していてはならない。

火山の観測や研究を強化するとともに、噴火被害の軽減策を着実に図るべきである。

毎日新聞 2014年09月28日

御嶽山噴火 被害者救援に全力を

日本が火山国であることを改めて見せつけられる事態となった。

読売新聞 2014年10月03日

御嶽山惨事 火山情報の発信に工夫が要る

噴煙に巻き込まれたら逃げようにも逃げられない。火山の恐ろしさを改めて思い知る。

御嶽山噴火は戦後最悪の火山災害となった。死者は、1991年、93年に計44人の死者・行方不明者を出した雲仙・普賢岳の火砕流を上回る。

御嶽山は、日本百名山に数えられる人気の山だ。紅葉シーズンの週末、山頂に人が集まる昼食時間帯の噴火が被害を広げた。噴石が当たり、亡くなった人が多い。

警察や陸上自衛隊、消防などが懸命の捜索を続けている。火山灰が積もり、有毒ガスも発生している。再噴火や、降雨による土石流の恐れもある。くれぐれも二次災害には注意してもらいたい。

遭難者の安否情報は二転三転し、帰還を待ちわびる家族は振り回された。長野県の災害対策本部と県警、消防が連携を欠き、確認が不十分なまま、捜索状況が伝えられた結果だろう。

国内には110の活火山がある。活動性の高い要注意の火山を抱える自治体は、万一の噴火を想定した備えを強化すべきだ。

今回の噴火で、重要性が浮き彫りになったのが登山届である。登山者や同行者の氏名、行程、緊急連絡先などを記入し、登山口のポストなどに入れておく。

遭難時に、自治体や警察などは、誰が入山しているかを迅速に把握できる。登山計画を基に、遭難地点の割り出しにも役立つ。

遭難者が多い群馬県の谷川岳や富山県の剱岳では、県条例で登山届の提出を義務づけている。これらは例外で、他の山では登山者の自主性に任せているのが現状だ。未届けで入山する人は多い。

御嶽山でも、噴火時にどれだけの人がいたか、今も把握に手間取り、捜索に支障が生じている。苦い教訓である。

気象庁は、御嶽山の活動を24時間体制で監視してきた。9月中旬には、火山性地震を観測したと、3度にわたり周辺自治体に伝え、ホームページにも掲載した。

ところが、この地震が何を意味するか、具体的な解説がないこともあって、自治体側が重要視することはなかった。

異変を把握したら、その内容を分かりやすく伝える工夫が不可欠だ。登山口や山小屋に表示することも役立つだろう。登山者も、火山情報には十分留意したい。

安倍首相は国会で、「火山活動の監視を強化するなど、対策にスピード感を持って取り組む」と述べた。惨事を繰り返さぬよう、防災体制を再点検すべきだ。

産経新聞 2014年09月28日

御嶽山噴火 被害拡大防ぎ観測強化を

長野・岐阜県境の御嶽山が噴火した。

国土交通省中部地方整備局のカメラが、南側の斜面を這(は)うように噴煙が流れ下る噴火時の状況をとらえている。

この噴煙や降灰に登山者らが巻き込まれ、多くの被害が生じた。

安倍晋三首相は登山者の救助や安全確保を最優先に、状況の把握を急ぐよう指示した。

今後の火山活動にも十分注意しながら、降灰による農作物への被害なども拡大しないよう総合的な対策を講じるべきだ。

登山者にとって、今回の御嶽山の活動は「突然の噴火」であったに違いない。気象庁が御嶽山の警戒レベルを「平常」の1から「入山規制」の3に引き上げたのは、噴火から約40分が過ぎた27日午後0時半過ぎである。

気象庁によると、御嶽山では今月10日ごろから火山性の地震が増加し、今後の火山活動の推移に注意するよう呼びかけていた。

噴火の直前には、火山性微動とよばれるマグマの動きに伴う現象も観測されている。

ただし、これらの現象が必ず噴火に結びつくわけではなく、気象庁は「噴火の予測は難しかった」としている。

日本は地震や火山噴火の多発国であり、台風の接近や前線の活動に伴う風水害も多い。

観測技術の向上により、自然災害の予測がある程度可能になった分野もある。しかし、全ての災害を予測し、リスクを回避することは不可能だ。

竜巻や落雷、地震・津波などの自然災害に突然、巻き込まれる可能性は、日本列島のどこにいてもあることを、改めて認識する必要がある。

山に登るときは山のリスクと、海に行くときは海の危険と向き合う。起こり得る災害を正しく恐れ、自然と共存する道を探ることが大切だ。

噴火に備えるためには、火山を知らなければならない。御嶽山噴火を機に、火山観測の重要性を再認識したい。

御嶽山のような活動的な火山であっても、一定規模の大きな噴火が起きるのはまれだ。火山学は、平常時の地道な観測と、噴火前後の大きな変化を比較、検証することによって前進する。

政府としても、火山の観測と研究を支えるべきである。

読売新聞 2014年09月28日

御嶽山噴火 見せつけられた予知の難しさ

火山の猛威を、まざまざと見せつけられた。

長野県と岐阜県にまたがる標高3000メートル超の御嶽山が噴火した。

紅葉シーズンの週末とあって、登山客が大勢いた。高温の火山灰などで多数の重傷者が出ている。山小屋に退避した人もいるが、噴火が続いているため、救援活動は時間を要している。

政府は、首相官邸の危機管理センターに連絡室を設置し、被害の情報収集などを急いでいる。安倍首相は、被災者の救助や登山客の安全確保に全力を尽くすよう指示し、自衛隊を派遣した。

負傷者の搬送、行方不明者の捜索・救難を急ぎ、被害を最小限に食い止めねばならない。

噴火活動がいつ静まるのか、まったく予測はつかない。

山頂付近から噴煙が高く舞い上がり、大量の火山灰が猛烈なスピードで山腹を流れ下った。噴石も広範囲に飛散している。

引き続き火山活動の厳重な監視が必要だ。二次災害にも十分警戒してもらいたい。

気象庁は、今後も同規模の噴火が起きる恐れがあるとして、警戒を呼びかけている。5段階ある噴火警戒レベルを平常時の1から入山規制を伴う3に引き上げた。

活動性が極めて低い火山と考えられていた御嶽山は、1979年に突如噴火し、火山灰が広い地域に降った。91年と2007年にも小規模の噴火を起こしている。

気象庁は、全国に110ある活火山のうち、活動が活発な23火山の一つに御嶽山を選び、監視体制の充実を目指していた。だが、噴火の予兆は捉えられなかった。

噴火予知の難しさが浮き彫りになったと言えよう。

気象庁は今月上旬から、やや活発な地震動を観測していたが、過去の噴火データが乏しく、噴火につながると判断できなかった。噴火の明確な前兆となる地殻変動なども探知されなかった。監視体制の再点検が求められる。

日本は火山国なのに、監視に必要な予算や人材が不足しているとの指摘がある。充実した観測体制は、鹿児島県の桜島や長野・群馬県境の浅間山などに限られる。

8月に鹿児島県の口永良部島で新岳が噴火した際には、前兆を察知できなかった。噴火活動が続く小笠原諸島の西之島は、常時の観測さえしていない。

最近は、中高年の登山ブームもあり、登山客でにぎわう火山は多い。周辺には温泉など有名観光地もある。万一の事態があることも忘れてはならない。

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