長野・岐阜県境の御嶽山が噴火した。
国土交通省中部地方整備局のカメラが、南側の斜面を這(は)うように噴煙が流れ下る噴火時の状況をとらえている。
この噴煙や降灰に登山者らが巻き込まれ、多くの被害が生じた。
安倍晋三首相は登山者の救助や安全確保を最優先に、状況の把握を急ぐよう指示した。
今後の火山活動にも十分注意しながら、降灰による農作物への被害なども拡大しないよう総合的な対策を講じるべきだ。
登山者にとって、今回の御嶽山の活動は「突然の噴火」であったに違いない。気象庁が御嶽山の警戒レベルを「平常」の1から「入山規制」の3に引き上げたのは、噴火から約40分が過ぎた27日午後0時半過ぎである。
気象庁によると、御嶽山では今月10日ごろから火山性の地震が増加し、今後の火山活動の推移に注意するよう呼びかけていた。
噴火の直前には、火山性微動とよばれるマグマの動きに伴う現象も観測されている。
ただし、これらの現象が必ず噴火に結びつくわけではなく、気象庁は「噴火の予測は難しかった」としている。
日本は地震や火山噴火の多発国であり、台風の接近や前線の活動に伴う風水害も多い。
観測技術の向上により、自然災害の予測がある程度可能になった分野もある。しかし、全ての災害を予測し、リスクを回避することは不可能だ。
竜巻や落雷、地震・津波などの自然災害に突然、巻き込まれる可能性は、日本列島のどこにいてもあることを、改めて認識する必要がある。
山に登るときは山のリスクと、海に行くときは海の危険と向き合う。起こり得る災害を正しく恐れ、自然と共存する道を探ることが大切だ。
噴火に備えるためには、火山を知らなければならない。御嶽山噴火を機に、火山観測の重要性を再認識したい。
御嶽山のような活動的な火山であっても、一定規模の大きな噴火が起きるのはまれだ。火山学は、平常時の地道な観測と、噴火前後の大きな変化を比較、検証することによって前進する。
政府としても、火山の観測と研究を支えるべきである。
この記事へのコメントはありません。