新たな自由貿易の枠組み作りが大詰めで足踏みしている。交渉を前進させるには、大胆な歩み寄りが必要だ。
ワシントンで行われた環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を巡る日米閣僚協議は、双方が折り合わないまま終了した。
今回の協議は、米国産の牛・豚肉の輸入が急増した場合に、関税率を元の高い水準に戻す緊急輸入制限措置(セーフガード)の発動要件など、最後まで難航している分野の決着を目指していた。
甘利TPP相は協議後、「当方は柔軟性のある提案をしたが、進展を得られなかった」と述べ、フロマン米通商代表の譲歩が不十分だったとの認識を示した。
甘利氏は「今後は(米国以外との)2国間協議を加速する」としたが、TPP交渉を主導する日米が正式合意しないと、12か国による交渉全体は前に進まない。
11月中の大筋合意という目標の達成は、今回の日米物別れで一段と不透明になったと言えよう。
日米両国は交渉を再開し、最終合意を急ぐべきだ。
米側がかたくなな背景には、11月4日の中間選挙を控え、日本に譲歩しにくい事情がある。
オバマ政権に対し、厳しい姿勢で交渉に臨むよう求める声が、議会や業界団体で高まっている。
中でも、政治力の強い畜産団体と、その関係議員は、日本が農産物の関税撤廃に応じない場合、TPP交渉から日本を排除するよう迫っている。
国内の過激な対日強硬論をどう抑え込むか。交渉妥結へ、オバマ大統領の指導力が問われよう。
大統領に通商一括交渉権(TPA)を与える法案が、与党・民主党の反対などで成立していないことも気がかりである。
日米協議が決着しても、議会の反対で合意を反故にされる懸念が残る。オバマ氏は責任を持って民主党を説得し、TPA法案の早期成立を図ってもらいたい。
TPPを実現し、アジア太平洋地域に世界の国内総生産(GDP)の約4割を占める巨大経済圏を誕生させる意義は大きい。
関税の引き下げや貿易・投資のルール共通化によって経済活性化のメリットが期待できる。
経済力を増す中国をけん制し、地域の安定に資するという戦略的な狙いもある。
国際交渉で各国がそれぞれ国益を主張するのは当然だ。しかし、最終段階においては、大局的な見地から譲歩し合い、合意に達することが重要だ。
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