気候サミット 日本の知見を途上国の対策に

朝日新聞 2014年09月26日

気候サミット 2大国の責任は重い

地球温暖化対策のための新たな国際的枠組みをつくる目標時期は、来年末とされている。

あと1年余りに迫ったいま、温室効果ガスの2大排出国である米国と中国が取り組み強化に前向きな姿勢を示した。

異常気象や海面の上昇など、さまざまな影響が地球を覆っているといわれる。米中は、言葉だけでなく具体的な目標と行動で世界を率先してほしい。

主な温室効果ガスである二酸化炭素を出す量は、中国が1位、米国が2位だ。両国だけで世界の4割以上を占める。

今週、国連本部で開かれた気候サミットには120カ国以上の首脳が参加した。「気候変動は確実な現象である」(オランド仏大統領)といった認識や危機感が次々表明された。

オバマ米大統領は「米中は先頭に立つ特別な責任をもつ」とし、「来年の早い時期に(20年以降の)新たな削減目標を示す」と明言した。

米国は、先進国にのみ削減を義務づけた京都議定書から離脱した。だが、最近は石炭火力発電所に厳しい規制をかけるなど一定の努力も見せている。

一方、大気汚染が深刻な中国の張高麗副首相も「温暖化対策は我々の内なる要求だ」と述べ、できるだけ早く排出を減少に転じると表明した。

中国は従来、排出総量の削減義務は負わないとして、国内総生産(GDP)当たりの削減目標しか掲げてこなかった。しかし、新たな目標を来年1~3月の期間内に発表するとし、方針転換の可能性を示唆した。

新しい枠組みでは、すべての国が自ら約束した削減を進めることになっている。米中が目標を定め、本腰を入れることは、温暖化防止の実効性の面からも、国際的な政治・倫理面からも、必要不可欠である。

米国には野党共和党や産業界の強い反対があり、中国は削減の時期やペースが問題だ。両国は「特別な責任」を果たす努力を惜しんではならない。

サミットでは、化石燃料から再生可能エネルギーへの100%転換を表明した国もあった。

一方、安倍首相は温暖化に伴う災害の対策などでの貢献をアピールしたものの、削減目標は提出時期も示せなかった。

長期にわたる温暖化対策に取り組むには、まず国としての意思を明確にすることが重要だ。

原発の規制基準が強化され、原発に大きく頼った削減はもはや現実的ではない。再生可能エネルギーを中核にすえ、脱原発と削減の二兎(にと)を追う決断が求められている。

毎日新聞 2014年09月25日

気象サミット 新枠組みの交渉加速を

地球温暖化対策を巡る国際交渉に弾みがついたと言えるだろう。

読売新聞 2014年09月25日

気候サミット 日本の知見を途上国の対策に

異常気象や海面上昇、食糧危機、水不足――。地球温暖化は世界全体に深刻な影響をもたらす。各国が協力して対策を進めなければならない。

国連気候サミットが国連本部で開かれ、120を超える国・地域の首脳らが自国の温暖化対策をアピールした。

二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出削減を巡る最大の焦点は、京都議定書に代わり、2020年に発効する予定の新たな国際的枠組みの策定だ。

来年末のパリでの国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で合意を目指している。実効性のある枠組み作りの機運を高める上で、気候サミットの開催は一定の意義があったろう。

安倍首相は演説で、発展途上国に対し、気象予報や防災に携わる専門家など1万4000人の人材育成を支援する方針を表明した。海面上昇の影響が甚大な島嶼とうしょ国が主な対象となる。

日本は高潮や洪水の被害を何度も経験し、台風の進路予測の精度向上や護岸の強化などに努めてきた。災害対策が遅れている途上国に日本の知見を伝え、被害抑止につなげることは、有効な国際貢献と言えよう。

優れた省エネ技術など、日本の強みを生かした技術支援の拡充も、COPの交渉で存在感を示すためには欠かせない。

日本の温室効果ガスの新たな削減目標について、安倍首相は「早期に提出する」と述べたが、時期は明言しなかった。

温暖化対策上、CO2を排出しない原子力発電は、重要なエネルギーである。だが、東京電力福島第一原発事故のため、原発をどのようなペースで再稼働し、将来的に活用していくか、メドが立たない状況が続く。

削減目標の設定に時間を要するのはやむを得まい。鳩山政権が掲げた「25%削減」のような非現実的な目標は避け、実現可能な数値にすることが大切だ。

世界全体のCO2排出量のうち、日本の占める割合は4%に満たない。これに対し、2大排出国の中国、米国を合わせると、40%を超える。新たな枠組みで最も重要なのは、米中が排出削減に応分の責任を果たすことである。

オバマ米大統領も、今回のサミットで、「世界1、2位の排出国である私たちは、率先して行動しなければならない特別な責任がある」と述べた。国際社会は、排出削減に向けた米中の取り組み状況を注視していく必要がある。

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