米シリア領空爆 「テロとの戦い」に結集しよう

朝日新聞 2014年09月25日

シリア空爆 安定化への道筋探れ

中東のシリア領内で、米軍が過激派組織「イスラム国」の拠点への空爆に踏み切った。

米軍は隣のイラクで、8月に空爆を始めたばかりだった。今回は、その単なる延長というだけではすまない。

イラクやアフガニスタンからの撤退を進めた米オバマ政権にとって、新たな国での軍事行動という大きな方針転換である。

戦争を終わらせると公言してきた大統領だが、中東の脅威をこれ以上は見過ごせない。そう判断せざるを得なかった。イラク戦争による秩序崩壊の重荷から、米国は逃れられないという現実があらわになっている。

シリアが内戦状態に陥って3年以上たつ。この間、国際社会は有効な手を打てないまま、19万を超える人命が失われた。

米国はこれを機に、シリアの和平に向けた道筋づくりに本腰を入れるべきだ。アラブ諸国や国連、欧州連合(EU)などとともに、イラクを含めた秩序の再生を探らねばならない。

「イスラム国」を危険視する認識は各国に共通しており、空爆への批判は今は少ない。ただし今後について、明確な青写真が描けているわけではない。

空爆にはサウジアラビアなどアラブ5カ国も加わった。米国は、対立してきたシリアのアサド政権にも事前に伝えた。自衛権の行使とする説明に、国連事務総長も理解を示している。

ただ、本来は軍事行動に必要な国連安全保障理事会の決議はない。英仏などが参加していないのも、そのためだ。

これまでシリア問題でしばしば決議を阻んできたロシアと中国にも、「イスラム国」に対する問題意識は少なからずある。米国は国際社会の一致した合意を築く努力を続けるべきだ。

さらに、空爆の軍事的な効果も見通せない。地上戦をゆだねるシリア反体制派の働きがどうなるかは未知数だ。

市民の犠牲が増えると、地元の世論の反発を招く。逆に「イスラム国」への支持を強める結果ともなりかねない。

そもそも、軍事行動だけでは問題は解決できないことを自覚すべきだ。むしろ重要なのは、シリア各派間の対話と、崩壊した社会再建のための環境を整える国際的な外交努力である。

そのためには、アサド政権との妥協や、ロシアとの協力といった現実的な選択も視野に入れざるを得ないだろう。

中東の安定化をめざすうえで最大の政治力をもつのは、今に至るも米国である。オバマ政権はその使命を忘れず、外交の指導力こそ発揮してほしい。

毎日新聞 2014年09月26日

テロとの戦い 明確な展望が必要だ

米国がアラブ5カ国と連携してシリア領内の空爆に踏み切った。イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」との戦場をイラクからシリアにも広げたのである。と同時にオバマ米大統領は国連安保理で異例の首脳級会合を主宰し、「イスラム国」などの武装組織に外国人が流入することを防ぐ決議採択にこぎ着けた。オバマ政権版の「テロとの戦い」が本格的に始まったといえよう。

読売新聞 2014年09月25日

米シリア領空爆 「テロとの戦い」に結集しよう

長期に及ぶ困難な「テロとの戦い」が、新たな段階に入った。

米国が、イスラム過激派組織「イスラム国」に対する空爆をシリア領へ拡大した。艦船搭載の巡航ミサイルやステルス戦闘機、無人機などが、イスラム国の司令部や軍事施設を破壊した。

欧米へのテロ攻撃を計画していたとされるアル・カーイダ系組織も攻撃目標となった。

オバマ米大統領は、「流血をもたらす過激思想を弱体化させ、壊滅する」と強調した。

オバマ政権は、イラク駐留米軍を撤収させ、国民を弾圧したシリアのアサド政権への空爆も見送った。だが、イスラム国の脅威が世界に広がる中、中東への軍事関与を強める路線転換を迫られた。

作戦には、サウジアラビア、ヨルダンなどアラブ5か国が加わった。反米感情を高める単独行動を避けたい米国と、国境や体制の変更を図るイスラム国の脅威に直面する5か国の利益が合致した。

米国は、アラブ世界との連携を保ちながら、「有志連合」の結束を強めることが求められよう。

米国は、空爆について「自衛権の行使」と説明する。シリアのアサド大統領も「反テロの努力を支持する」として自国領内への攻撃を容認した。敵対勢力の弱体化を期待しているのだろう。

懸念されるのは、空爆の効果が限定的なことだ。イスラム国の壊滅には地上戦が避けられない。

米国は、シリアの穏健な反体制派を組織化し、軍事訓練を行って、イスラム国との地上戦の主体とするとともに、いずれアサド政権に代わる勢力に育てたい考えだ。

ただ、それには相当な時間と労力を要するだろう。国際社会が、米国と緊密に連携し、後押しすることが重要である。

テロとの戦いには、軍事面に加え、外交の強化が欠かせない。

米国は、外国の戦闘員や資金がイスラム国に流入することを防ぐため、国境管理の強化やテロリストの資産凍結を訴えてきた。

国連安全保障理事会は24日の首脳級会合で、国境管理に関する決議の採択を目指している。軍事作戦に参加していない他の中東や欧州の国々も協力すべきだ。

安倍首相がイスラム国の蛮行を非難し、今回の空爆に「理解」を示したのは妥当である。

イスラム国は、大量の犠牲者と難民を生むなど、中東に重大な危機をもたらしている。日本も、難民への人道支援などで、従来以上に積極的に貢献したい。

産経新聞 2014年09月26日

「イスラム国」決議 各国結束し包囲網狭めよ

国連安全保障理事会はイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」など過激派への外国人戦闘員の参加を阻止する決議を全会一致で採択した。

イラクからシリアに拡大して米国主導で展開されている空爆作戦に劣らず重要な、過激組織打倒の柱となるものだ。

100カ国以上が共同提案国として名を連ねたことは、国際社会の確固たる決意を示したものといえる。対イスラム国包囲網が確実に形成されつつあることを歓迎したい。

各国は決議を忠実に履行し、結束して世界の脅威であるイスラム国を弱体化させ、最終的には壊滅に追い込んでもらいたい。

決議はテロ目的での海外渡航やその幇助(ほうじょ)、資金提供や戦闘員募集などの行為を「重大犯罪」として国内法で規制し処罰するよう求めている。踏み込んだ内容だ。違反国への強制措置にも道を開く国連憲章7章の下で行動するとしている点にも注目したい。

イスラム国の勢力急拡大の背景の一つには、多数の外国人戦闘員の参加がある。今夏だけでその数が倍増したともいう。オバマ米大統領は、シリアには80カ国から1万5千人以上の外国人戦闘員が流入していると指摘した。

このうち数千人と推計される欧米出身の戦闘員が母国でテロを起こす恐れも強い。実際、オーストラリアでは、イスラム国の関係者が拉致した市民の殺害とその映像のネット上での公開を企てたとして摘発されている。悪夢のシナリオが現実となる寸前だった。

オバマ大統領が国連総会の一般討論演説で「死のネットワークを解体する」と宣言したように、決議はこうしたイスラム国の組織網を断つのが目的である。

オバマ氏は演説で、イスラム国壊滅へ向けた軍事力行使を、これまでより強い調子で明言した。

中東に限らず世界秩序の安定には、やはり力を背景にした米国の強い意志が必要である。

その意味で、断固たる姿勢を示しつつ、有志連合への参加を「世界に求める」とした今回のオバマ演説は評価できよう。

だが、難民を抱えるシリア周辺国への人道支援や、イスラム国への資金の流れの阻止など、国際社会が取り組むべき課題は山積している。安保理決議の採択に表れた国際協調態勢をさらに強化しなければならない。

産経新聞 2014年09月24日

シリア空爆 アラブ参加で掃討加速を

オバマ米政権がアラブの友好諸国とともに、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」のシリア領内の拠点に対して空爆作戦を開始した。

この組織の勢力急拡大で危機感を共有したスンニ派諸国の参加は、作戦の正当性を高め国際的な説得力を強めよう。

イスラム国打倒を目指し、アラブ諸国を含む有志連合の構築を進めてきた米国の取り組みが実を結んだ意義は大きい。この共闘態勢を強め、過激組織を弱体化に追い込んでもらいたい。

作戦に加わったのは、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダンなど穏健派の4、5カ国だとされる。ともすれば反米感情に流されやすいアラブの国々が、米軍とともに立ち上がったことを評価したい。

イスラム国は、シリアとイラクにまたがって実効支配地域を広げている。米軍はイラク領内で約190回に及ぶ空爆を続けてきたものの、イスラム国の戦闘員はシリア側の「聖域」に逃げ込んで態勢を立て直せる。シリア領への空爆拡大は不可欠だった。

イスラム国が新たにトルコと国境を接するシリア北部に進撃し、少数民族のクルド人が多数トルコ側に逃れる事態も起きている。こうした人道的危機の拡大も、シリア領内への空爆が急がれた理由のひとつであろう。

ただ、イスラム国の討伐には課題も多い。

シリア領内には、米軍が手を組める地上の現地勢力はないに等しい。空爆後に地上で掃討作戦が行われなければ、敵の支配地域を奪還することは難しい。

オバマ政権は、シリアのアサド政権との協力を否定し、地上戦の担い手としてはあくまで「穏健な反政府勢力」を育成する構えだ。サウジが訓練への協力を申し出ているが、最も弱小な反政府勢力をいかにイスラム国に対峙(たいじ)できる部隊に仕立て上げるのか。

空爆で生じた空白を、別のイスラム過激派やアサド政権が埋める懸念も強い。米国は穏健武装勢力を育てるため、かけ声倒れに終わらない実現性の高い計画を立て、着手を急がねばならない。

避難民らへの人道的支援の緊急性も忘れてはならない。オバマ大統領は国連総会などの場で、その面でも有志連合からの強力な支援を引き出してほしい。日本の協力の出番もそこにある。

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