アフガン新政権 名実ともに挙国一致で

毎日新聞 2014年09月23日

アフガン新政権 名実ともに挙国一致で

大統領選の第1回投票から5カ月余り。やっとアフガニスタンの新たな「顔」が決まった。同国を13年間率いたカルザイ大統領に代わってアシュラフ・ガニ元財務相が新大統領に就任し、同氏と決選投票を戦ったアブドラ・アブドラ元外相が新設の行政長官(首相に相当)になる。国家分裂を防ぐため権力を分け合う苦肉の策だが、双頭政治の悪弊に陥らぬよう、名実ともに挙国一致の体制を作ってほしい。

読売新聞 2014年09月24日

アフガン新政権 挙国一致で治安を確保せよ

この国がテロの温床に逆戻りしないよう、国際社会が粘り強く支援を続けることが重要だ。

アフガニスタン大統領選で、アシュラフ・ガニ元財務相の当選が決まった。来週にも就任する。

6月の決選投票では、ガニ氏がアブドラ・アブドラ元外相に大差をつけた。しかし、アブドラ氏が「不正投票」を主張し、選挙結果の確定がずれ込んでいた。

米国の外交圧力により、タジク系のアブドラ氏陣営が、2年以内に首相に格上げされる行政長官ポストを得る代わりに、パシュトゥン人のガニ氏の当選を認めた。

民族対立を避ける「挙国一致政権」の誕生を歓迎したい。投開票手続きに多くの問題があったにせよ、民主的な選挙で権力の移譲が達成されたことは意義深い。

ガニ氏の喫緊の課題は治安維持だ。旧支配勢力タリバンが南部などで勢力を維持し、首都カブールでもテロが後を絶たない。

イラクとシリアで伸長する過激派組織「イスラム国」がタリバンなどに共闘を呼びかけ、一部の武装勢力は呼応している。

米軍や北大西洋条約機構(NATO)主体の治安維持部隊計約4万人は、年内で撤収する。その後は、米軍の軍事支援要員約1万人が、約35万人のアフガン治安部隊の訓練に従事する見通しだ。

ガニ氏は、米軍の駐留継続に必要な協定を早急に締結し、治安部隊の能力向上を急ぐ必要がある。長期的な安定には、タリバンとの共存の道も探らねばなるまい。

経済と社会の基盤作りも急務である。世界銀行で勤務した経験もある国際派エコノミストのガニ氏の手腕が試されよう。

国家予算の約6割を外国の援助に依存する恒常的な財政難が、政府職員の汚職や、兵士や警官の離職・士気低下を生んでいる。

生計手段を欠く農民が、ケシを栽培し、麻薬を製造、販売する。これがタリバンの資金源となっている問題も深刻である。

国際社会は、財政支援に加え、警官などの人材育成、農業振興、教育・医療の充実などに重点的に取り組むことが大切である。

米国に次ぐ世界2位の支援国である日本の役割は大きい。

政府は2012年から、約5年で最大約30億ドル(約3300億円)の支援を実施している。

元タリバン兵に職業訓練を行い、社会復帰を促す事業は、高い評価を受けてきた。今後も欧米諸国と連携し、日本独自のノウハウを生かして国造りを支えたい。

産経新聞 2014年09月23日

アフガン新体制 イラクの二の舞い避けよ

アフガニスタン次期大統領にガニ元財務相が就き、対立候補だったアブドラ元外相が新設の首相格ポスト、行政長官に回る新体制が発足する。

米軍撤退が進む中、かつての実効支配組織でイスラム原理主義のタリバンが再び勢力を急拡大させている。新体制にとって、それへの対応が最大かつ緊急の課題となる。

イラクは米軍撤退後、民族、宗派融和の崩壊が進み、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が一気に台頭し危機的状況だ。

その二の舞いを避けるため、ガニ新政権は挙国一致で治安回復に全力を挙げてもらいたい。

アフガン大統領選ではタリバンによるテロの恐怖をはね返し、多数の有権者が一票を投じた。

だが、不正疑惑や候補対立で開票が混乱し、4月の初回投票から結果発表まで半年近くを要した。得票数も示されず民意が明確にならなかったのは残念だ。

政治空白の長期化はタリバンの思うつぼだ。ケリー米国務長官らが仲介し、2人でナンバー1、2のポストを分け合う妥協に導いたのは評価できる。

国内最多のパシュトゥン人ガニ氏と、2番目のタジク人アブドラ氏が手を握る意味は小さくない。民族融和を実現してほしい。

米国は2001年米中枢同時テロを受け、実行した国際テロ組織アルカーイダと庇護(ひご)者のタリバン体制を攻撃し崩壊に追い込んだ。これに伴いカルザイ氏が指導者になってから初の政権交代だ。

米軍は今年末、戦闘部隊を撤退させるものの、対テロ特殊部隊と現地軍訓練チームは引き続き駐留させる計画だ。カルザイ氏は、米兵の地位などを定めた安全保障協定の締結を棚上げしてきたが、ガニ氏は公言通り協定の調印を急がなければならない。

イラク駐留米軍は、米兵の刑事免責措置の延長を時のマリキ同国政権が拒否し、オバマ米大統領も兵士の帰還を急いだ結果、11年に全面撤退を余儀なくされた。それが今の危機の要因の一つになったと批判されている。

オバマ政権には、撤退計画を状況に応じて柔軟に履行し、イラクの轍(てつ)を踏まないよう望みたい。

日本政府は01年以降、世界第2位の50億ドル超をアフガンに投じ、インフラ支援、人材育成に当たってきた。そうした支援をアフガン安定につなげていきたい。

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