この国がテロの温床に逆戻りしないよう、国際社会が粘り強く支援を続けることが重要だ。
アフガニスタン大統領選で、アシュラフ・ガニ元財務相の当選が決まった。来週にも就任する。
6月の決選投票では、ガニ氏がアブドラ・アブドラ元外相に大差をつけた。しかし、アブドラ氏が「不正投票」を主張し、選挙結果の確定がずれ込んでいた。
米国の外交圧力により、タジク系のアブドラ氏陣営が、2年以内に首相に格上げされる行政長官ポストを得る代わりに、パシュトゥン人のガニ氏の当選を認めた。
民族対立を避ける「挙国一致政権」の誕生を歓迎したい。投開票手続きに多くの問題があったにせよ、民主的な選挙で権力の移譲が達成されたことは意義深い。
ガニ氏の喫緊の課題は治安維持だ。旧支配勢力タリバンが南部などで勢力を維持し、首都カブールでもテロが後を絶たない。
イラクとシリアで伸長する過激派組織「イスラム国」がタリバンなどに共闘を呼びかけ、一部の武装勢力は呼応している。
米軍や北大西洋条約機構(NATO)主体の治安維持部隊計約4万人は、年内で撤収する。その後は、米軍の軍事支援要員約1万人が、約35万人のアフガン治安部隊の訓練に従事する見通しだ。
ガニ氏は、米軍の駐留継続に必要な協定を早急に締結し、治安部隊の能力向上を急ぐ必要がある。長期的な安定には、タリバンとの共存の道も探らねばなるまい。
経済と社会の基盤作りも急務である。世界銀行で勤務した経験もある国際派エコノミストのガニ氏の手腕が試されよう。
国家予算の約6割を外国の援助に依存する恒常的な財政難が、政府職員の汚職や、兵士や警官の離職・士気低下を生んでいる。
生計手段を欠く農民が、ケシを栽培し、麻薬を製造、販売する。これがタリバンの資金源となっている問題も深刻である。
国際社会は、財政支援に加え、警官などの人材育成、農業振興、教育・医療の充実などに重点的に取り組むことが大切である。
米国に次ぐ世界2位の支援国である日本の役割は大きい。
政府は2012年から、約5年で最大約30億ドル(約3300億円)の支援を実施している。
元タリバン兵に職業訓練を行い、社会復帰を促す事業は、高い評価を受けてきた。今後も欧米諸国と連携し、日本独自のノウハウを生かして国造りを支えたい。
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