2020年の温室効果ガス削減の中期目標について、政府は「90年比で25%削減」を国連の気候変動枠組み条約事務局に提出した。「すべての主要国による公平かつ実効性のある国際枠組みができ、意欲的な目標に合意すること」という条件がついている。
中期目標の提出は、昨年末にあった締約国会議(COP15)での「コペンハーゲン合意」が先進各国に求めているものだ。ただちに法的義務が生じるわけではないが、地球温暖化防止に向けた各国の姿勢が問われる。
「25%削減」は昨年9月、鳩山由紀夫首相が国連で表明し国際的に高く評価された。日本がそれを引き続き掲げることは、難航しているCOP交渉の打開にプラスに働くだろう。
ただ、数字そのもののインパクトがいつまでも続くわけではない。
すでに国際社会の一部に「日本の目標には実体がない」という冷ややかな声もある。こうした空気が広がるようだと、COP交渉における日本の発言力が損なわれかねない。
京都議定書に続く新たな国際枠組みづくりをリードするには、「25%削減」の政策的な裏付けをできるだけ早くはっきりさせるべきだ。
具体的には、国内排出量取引制度や環境税、自然エネルギー拡大など、必要な政策を総動員するための法的な基盤づくりを急ぐことが必要である。
鳩山政権は、3月までに地球温暖化対策基本法案を国会に提出する。
中期目標を絵に描いた餅にしないためには、それぞれの政策を基本法に盛り込むだけでなく、骨格や工程も具体的に示す必要がある。「50年に80%削減」という長期目標を見すえたものにすることも大切だ。
そのためにはグリーンな産業と雇用を創出する成長戦略を、そこに組み込んでいかねばならない。
COP交渉の先行きが不透明ないま、日本が高い目標を掲げることや、それに向けた大胆な政策を進めることには慎重な声も根強い。
だが、地球を低炭素時代に向かわせなければどうなるかを考えたい。
欧州では08年にできた包括的な温暖化対策の下、各国が社会や経済の低炭素化に向けた具体的な取り組みを着々と進めている。
米国でも、温暖化対策法案が連邦議会に提出ずみだ。オバマ政権を取り巻く厳しい政治状況の下で審議は停滞しているが、成立後は速やかに各種の政策が動き出すだろう。
高い目標に向かって政策を積極的に展開し、他国に先駆けて経済や社会を低炭素型に脱皮させる。そうすることで競争力を高めることこそ、新たな時代を生き抜く術(すべ)だ。
基本法は、新時代を引っ張る機関車の役割を担う。
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