日露首脳協議 G7協調前提に対話続けたい

朝日新聞 2014年09月24日

日ロ首脳対話 外交の理念を忘れずに

ウクライナ情勢のあおりで停滞していた日ロ関係が、再び動き出す兆しを見せている。

安倍首相とロシアのプーチン大統領が今週、電話で協議し、対話を続ける考えで一致した。首相は11月の北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)で会談することも提案した。

もともと合意していた今秋の大統領訪日は、困難になっている。首相は、就任後に5度会談したプーチン氏との個人的関係を守りつつ、来年以降の訪日へ目標を切り替えた形である。

ウクライナ紛争をめぐりロシアを批判する米欧に同調し、日本は2度の対ロ制裁に踏み切った。ロシアは、北方領土問題をめぐる日ロ次官級協議の延期などで反発を示した。

それでもロシアは、大統領の訪日予定は取り消さず、日本との建設的な対話の継続をさぐる姿勢は崩さずにきた。

米欧と対立するロシアは、中国と接近している。長年の交渉を決着させたロシア産天然ガスの供給合意は、その象徴だ。

しかし、膨張する中国はロシアにとって潜在的な脅威でもある。過度な依存はできず、アジアで第2の経済規模と進んだ技術をもつ日本との関係強化を望むのは、自然な選択だ。

そんな事情もにらみつつ対話のパイプを保つことは、日本の近隣外交にとって得策である。安全保障やエネルギー分野などで足場の強化に役立つだろう。

ただし、日本は守るべき原則を忘れてはならない。領土問題などでの「力による現状変更」を許すわけにはいかない。この理念を共有する米欧と緊密な連携を維持してこそ、ロシアとの対話も成果をあげられる。

ウクライナ東部では、先の停戦合意の後も、各地で戦闘が繰り返されている。米欧は、ロシアによる軍事介入が続いているとの見方を変えていない。

今週、国連総会の場で主要7カ国(G7)の外相会議が開かれる。停戦にロシアが十分な努力を果たしていないと見なされれば、日本も新たな制裁をためらうべきではない。

米欧とロシアは、中東で勢力を広げる過激派組織「イスラム国」対策をめぐっても駆け引きを本格化させる。今後の外交情勢は一層複雑になりそうだ。

どんな局面であれ、日本は米欧とともに、国際法の順守と、民主主義・人権の価値観を守る姿勢を貫く必要がある。

日ロ関係においては、ウクライナ情勢を安定させることが、両国の対話に役立つ。安倍首相はそのことを、プーチン氏にしっかりと伝えていくべきだ。

読売新聞 2014年09月23日

日露首脳協議 G7協調前提に対話続けたい

政府は、米欧との連携を重視しつつ、ロシアとの対話を続けることが重要である。

安倍首相がロシアのプーチン大統領と電話会談し、日露間の対話を継続することが大事だとの認識で一致した。

大統領は、早期の首脳会談の開催に意欲を示した。首相は、11月に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での会談を提案した。

首脳会談が実現すれば、2月のロシア・ソチでの会談以来となる。首相は、先に訪露した森元首相を通じて、対話を呼びかける親書を大統領に送っている。

日露関係は、3月のロシアによるウクライナ・クリミア半島編入を機に停滞している。

日本が4月に米欧の対露制裁に同調すると、ロシアは強く反発した。日露両政府は、既に今秋の大統領来日で合意しているが、今春以降、両国間の準備作業は事実上ストップしており、来日の実現は極めて困難な情勢だ。

首相が東京でなく、北京での首脳会談を提案したのは、プーチン大統領来日に強い不快感を示す米国に配慮したものだ。

オバマ政権は、ウクライナ東部への軍事的介入を続けるロシアを厳しく批判している。協調を基本としてきた冷戦後の対露政策の転換を余儀なくされたと言える。

今の段階で、プーチン大統領が来日すれば、日米関係がきしみかねない。日本としては、先進7か国(G7)内の協調関係を維持しながら、ロシアとの対話も断たないのが現実的な選択肢だろう。

米欧が今月中旬、金融やエネルギー分野が中心の厳しい対露追加制裁を発動したことを踏まえ、日本も、ロシアへの新たな制裁措置を検討している。

クリミア編入に関与したロシア政府関係者らに限定した現在の入国禁止や資産凍結の対象を拡大する案などが浮上している。

日本は、領土などに関して「力による現状変更」を許さない立場を堅持している。ロシアがウクライナ政策を修正しない以上、追加制裁を講じるのは妥当だろう。

日本は、G7の足並みを乱さない範囲で、米英など関係国との意思疎通を図りつつ、ロシアを孤立させず、2国間協議を続けることも大切である。

岸田外相は今週のニューヨークでの国連総会で、ラブロフ露外相との会談を調整している。会談した場合は、日露関係だけでなく、ウクライナ情勢についても突っ込んだ意見交換をすべきだ。

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