公明党大会 守るべき一線を示せ

朝日新聞 2014年09月22日

公明党大会 実利の政治を超えて

公明党がきのう、東京都内で党大会を開いた。11月に結党50周年を迎える今年は、自民党との連立15年の節目でもある。

党大会には安倍首相が駆けつけ、連立の絆を強調した。山口代表の4選も正式に承認され、自公連立は当面、安定軌道に乗ったように見える。

連立離脱の可能性が指摘されていた集団的自衛権の問題で行使容認の閣議決定を受け入れ、最大の危機は乗り越えたという安堵(あんど)感に包まれているようだ。

だが、「戦後レジームからの脱却」をめざす安倍政権と、戦後日本の価値観を大切にしてきた公明党とは、大本の理念で相いれない面がある。両者の亀裂を埋め合わせる明確な道筋が見えたわけではない。

公明党はこれまで、もっぱら実利を求めることで、自民党への違和感を封印してきた。与党の一角で予算編成に関わり、児童手当の拡充や地域振興券などの政策を実現した。

そこで重要なのは、福祉であり、景気対策であり、自民党との選挙協力を通じた候補者の勝利だった。

そのためには連立維持が最優先となる。イラク戦争への自衛隊派遣など大きな流れは自民党の判断にゆだね、ときに妥協もいとわない。その代わり、実利のからんだ政策では微修正を重ね、成果を勝ち取る。

しかし安倍政権のもとで、そんな政治モデルへの不安が強まってきたのではないか。とくに集団的自衛権の行使容認は、この党に改めて、自らのあり方を問い直している。

7月の閣議決定の直後、自公系候補が前民主党衆院議員に敗れた滋賀県知事選で、多くの公明支持者は投票所に足を運ばなかった。憲法解釈の変更を与党だけで推し進めた姿が、支持者らを落胆させたことは想像にかたくない。

安倍首相が「経済優先」を強調している分には、手を組む余地もあるだろう。だが、憲法改正や靖国参拝などで首相の思いが前面に出ると、底流にひそむ亀裂が浮かび上がる。

党大会では、反戦平和、社会的公正などの意味を込めたという「中道」の政治理念が強調されたが、どこまで貫けるか。

目を向けるべきは、安倍首相の意向でもなければ、支持母体である創価学会の組織防衛でもない。草の根の人々の素朴な信条を大切にしなければ、この党は存在意義を失う。

実利の政治を超えられるのか。結党半世紀、「大衆とともに」と言い続けてきた公明党の原点にかかわる。

毎日新聞 2014年09月21日

公明党大会 守るべき一線を示せ

党の節目の大会である。公明党大会が21日開かれ、山口那津男代表の4選が了承される。自民党の1強状態が際立つ中、山口氏ら執行部は党の存在感発揮の手腕が問われる。

読売新聞 2014年09月22日

公明党大会 政権の合意形成へ役割果たせ

政治の安定と重要政策の遂行に向けて、公明党は連立政権の合意形成に引き続き努力し、役割を果たしてもらいたい。

公明党が第10回全国大会を開き、山口代表の4選と新役員人事を正式決定した。井上義久幹事長、石井啓一政調会長は留任し、国会対策委員長には大口善徳国対委員長代理が昇格した。

山口代表はあいさつで、安倍改造内閣について「連立与党としてしっかり支え、国民のための政策実現に不退転の決意で邁進まいしんする」と語った。来賓の安倍首相も、「与党と協力して結果を出したい」と述べ、結束を呼びかけた。

山口、井上両氏は2009年9月の就任以来、3年余の野党時代を含め、自民党との連携・協力関係を維持してきた。

小渕内閣で自公両党が連立してから、来月で15年を迎える。主張が異なる政策についても、双方が協議を重ねて歩み寄り、合意を形成してきたことは、政治の安定に貢献したと評価できる。

安倍政権は今、経済再生、地方創生、震災復興、社会保障制度改革など、多くの政策課題に直面している。これらを着実に前進させるため、公明党には、一段と建設的な取り組みが求められる。

安全保障政策でも、安倍政権は今年4月、武器輸出3原則に代わる防衛装備移転3原則を、7月には集団的自衛権の行使を限定容認する政府見解を決定した。いずれも歴史的な意義を持つものだ。

50年前の結党以来、「平和の党」を標榜ひょうぼうする公明党には、特に集団的自衛権の憲法解釈変更について慎重・反対論が強かった。

だが、山口執行部は、地方組織代表を交えた会議を何度も開き、粘り強く説明と説得を繰り返して党内の意見をまとめた。政権与党として責任ある対応だった。

党大会での井上幹事長報告は、公明党の中道路線の「今日的意義」として「政治の左右への揺れや偏りを正す」「時代の変化に応じた新しい政策提言」などを挙げた。集団的自衛権をめぐる対応はその実例だとも指摘した。

今後は、新政府見解に基づく安全保障法制の整備が課題となる。日米同盟の抑止力を強化し、自衛隊が実効性ある活動をできる法制となるよう、公明党には、一層の前向きな対応を期待したい。

山口代表は、消費税率を10%に引き上げる際の軽減税率の導入を目指す方針を改めて強調した。

公明党は与党内で、軽減税率の具体的な制度設計の議論を主導することが重要である。

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