反捕鯨国の攻勢を受けて、日本は一段と苦しい立場に追い込まれた。
国際捕鯨委員会(IWC)の総会で、日本による南極海での調査捕鯨再開を先延ばしするよう求める決議が、賛成多数で採択された。
決議は、強硬な反捕鯨国であるニュージーランドが提案したもので、2016年の次回総会で審議されるまで、日本の調査捕鯨を認めないとする内容だ。
日本は今年3月に国際司法裁判所から中止を命じられた調査捕鯨を、15年から再開する方針を表明している。決議は、これに待ったをかける狙いがあるのだろう。
決議に拘束力はなく、日本は予定通り調査を再開する構えだ。とはいえ、「決議に反する」などとして、国際社会の風当たりが強まることは避けられまい。
あくまで再開を目指すのなら、調査捕鯨の意義を裏付ける科学的なデータを示し、説得力のある主張を展開する必要がある。
日本は、クジラが大量の魚を食べ、漁業資源に打撃を与えている実態の解明など、調査捕鯨の成果を強調してきた。
こうした実例をもっと示し、国際理解を広げることが大事だ。このままでは南極海だけでなく北西太平洋の調査捕鯨についても、中止を迫る声が強まりかねない。
日本は南極海での調査捕鯨の年間捕獲枠を約1000頭に設定してきたが、実際の捕獲数は4年連続で300頭を下回った。
反捕鯨団体「シー・シェパード」に妨害された影響を考慮しても、「必要なサンプル数を得るための捕獲調査」との主張が通りにくくなっているのも事実である。
日本は、11月までにIWC科学委員会へ調査捕鯨の新たな計画書を提出する。最低限の捕獲数に絞り込むなど、多くの国に認めてもらうための工夫が求められる。
日本は1988年に撤退した商業捕鯨の復活を掲げているが、国内の鯨肉需要は低迷している。商業捕鯨に対する水産会社や消費者のニーズは限られよう。
商業捕鯨の再開を期し、大規模な調査捕鯨を続けていく意味は薄れてきたのではないか。
調査捕鯨は多額の国費を投入して実施されている。政府は国内向けにも、継続する必要性を、丁寧に説明しなければならない。
北海道や和歌山県などでは、小型クジラを対象とした沿岸捕鯨が行われている。これらはIWCの管理対象外だ。日本の伝統に根ざした貴重な食文化を、しっかり後世に伝えていきたい。
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