ウナギ養殖規制 資源保護の実効性が問われる

毎日新聞 2014年09月19日

ウナギ養殖削減 資源保護への第一歩だ

絶滅が懸念されているニホンウナギの養殖量を削減することに日本、中国、台湾、韓国が合意した。ニホンウナギの資源管理に関する国際的枠組みが初めてできることになる。

読売新聞 2014年09月19日

ウナギ養殖規制 資源保護の実効性が問われる

ウナギを食べ続けられるよう、資源保護の取り組みを強化したい。

日本と中国、韓国、台湾が、ニホンウナギの養殖量を、2015年から2割減らすことで合意した。ニホンウナギの資源管理に関する初の国際的な枠組みだ。

養殖に使う稚魚の「シラス」は乱獲で激減している。日本の13年の漁獲量は約5トンで、1970年代半ばの10分の1にすぎない。日本にウナギを輸出する中国などでも漁獲量は低迷している。

資源の枯渇を防ぐため、最大の消費国である日本が非公式協議で提案し、養殖場に入れるシラスの量を規制することになった。

法的拘束力のない「紳士協定」とはいえ、4か国・地域が危機感を共有し、資源保護で足並みをそろえたことは評価できる。

資源管理で合意した背景には、ニホンウナギの乱獲に対する国際社会の厳しい見方がある。

国際自然保護連合(IUCN)は今年6月、ニホンウナギを「絶滅危惧種」に指定した。このため2016年に開かれるワシントン条約の会議で、輸出入制限の対象になる可能性が出ている。

対象になれば、国内消費の6割を輸入に頼る日本が困るだけでなく、輸出が制限される中国などの養殖業者も打撃を受ける。

日本提案に当初は反対した中国や台湾が受け入れたのは、自国の養殖業者を守る狙いだろう。

ワシントン条約の制限を受けないためには、養殖量の削減を着実に実行し、資源保護の成果を上げることが重要だ。

2割の削減幅には科学的な根拠はないという。資源回復の効果を検証し、不十分な場合は削減幅の上積みが求められよう。

資源管理の対応は、各国・地域の業者などに委ねられる。

規制の順守状況の確認は、養殖業者らが作る民間の自主管理組織が担う。これらの上部団体として国際的な非政府組織を設立し、状況を報告し合うという。

規制を徹底せずに、ニホンウナギの減少が続くようだと、養殖業者は自らの首を絞めることになる。それを自覚し、積極的に取り組んでもらいたい。

合意を国際条約に基づく協定に格上げし、拘束力を持たせることも、今後の検討課題だ。

養殖規制によってウナギが品薄になり、価格が高止まりするとの見方は多い。消費者の懐に響くのは確かだが、ウナギという大切な日本食を守るために、必要なコストである。

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