卑劣な組織暴力は、断じて許されない。警察は「頂上作戦」を突破口にして、組織の壊滅を図ってもらいたい。
福岡県警が、九州最大規模の指定暴力団「工藤会」の最高幹部2人を殺人などの容疑で逮捕した。2人は1998年、配下の組長らに指示し、北九州市で漁協元組合長の男性を射殺させた疑いが持たれている。
福岡県内では、市民や企業が拳銃などで襲撃される事件が後を絶たない。県警は、その多くに工藤会が関与しているとみているものの、ほとんどが未解決だ。警察の威信に関わる事態である。
警察庁は16日、福岡県警や、関係する他の県警幹部に対し、総力を挙げて、工藤会に致命的な打撃を加えるよう指示した。福岡県警は、全職員の3割にあたる3800人を捜査に投入している。
トップの逮捕により、工藤会の反撃も予想される。県警は、市民に危害が及ばぬよう、繁華街の警備などを強化する必要がある。
今回の逮捕容疑となった事件は、北九州市の港湾施設整備事業を巡り、利権を得ようとする工藤会の要求を、元漁協組合長が拒んだことへの報復とされる。
市民や企業に利益提供を強要し、従わなければ暴力に訴える。言語道断である。工藤会のやり口を封じるため、2012年に改正暴力団対策法が施行された。
企業襲撃に関与した疑いがある暴力団を「特定危険指定暴力団」に指定し、構成員が企業などに不当要求をすれば、即座に逮捕できる「直罰規定」を盛り込んだ。
構成員560人の工藤会は全国で唯一、特定危険指定暴力団となったが、直罰規定に基づく逮捕は2件にとどまる。効果を上げているとは言い難い。
福岡市や北九州市などでは、飲食店への暴力団員の入店を禁止する県条例も施行された。しかし、暴力団排除に協力的な店の経営者が刃物で襲われたり、「次はおまえの番だ」などと電話で脅されたりする事件が相次ぐ。
工藤会の排除が思うように進まないのは、市民や企業が報復を恐れ、警察への情報提供をためらうためだろう。「通報しても、警察は自分たちを守ってくれない」という市民の警察に対する不信感も背景にあるのではないか。
警察は、資金源を断つなど、あらゆる手段を講じて、工藤会を弱体化させ、市民の信頼を回復せねばならない。
工藤会対策を全国の暴力団排除のモデルとすることが重要だ。
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