工藤会幹部逮捕 凶悪集団を壊滅する突破口に

読売新聞 2014年09月17日

工藤会幹部逮捕 凶悪集団を壊滅する突破口に

卑劣な組織暴力は、断じて許されない。警察は「頂上作戦」を突破口にして、組織の壊滅を図ってもらいたい。

福岡県警が、九州最大規模の指定暴力団「工藤会」の最高幹部2人を殺人などの容疑で逮捕した。2人は1998年、配下の組長らに指示し、北九州市で漁協元組合長の男性を射殺させた疑いが持たれている。

福岡県内では、市民や企業が拳銃などで襲撃される事件が後を絶たない。県警は、その多くに工藤会が関与しているとみているものの、ほとんどが未解決だ。警察の威信に関わる事態である。

警察庁は16日、福岡県警や、関係する他の県警幹部に対し、総力を挙げて、工藤会に致命的な打撃を加えるよう指示した。福岡県警は、全職員の3割にあたる3800人を捜査に投入している。

トップの逮捕により、工藤会の反撃も予想される。県警は、市民に危害が及ばぬよう、繁華街の警備などを強化する必要がある。

今回の逮捕容疑となった事件は、北九州市の港湾施設整備事業を巡り、利権を得ようとする工藤会の要求を、元漁協組合長が拒んだことへの報復とされる。

市民や企業に利益提供を強要し、従わなければ暴力に訴える。言語道断である。工藤会のやり口を封じるため、2012年に改正暴力団対策法が施行された。

企業襲撃に関与した疑いがある暴力団を「特定危険指定暴力団」に指定し、構成員が企業などに不当要求をすれば、即座に逮捕できる「直罰規定」を盛り込んだ。

構成員560人の工藤会は全国で唯一、特定危険指定暴力団となったが、直罰規定に基づく逮捕は2件にとどまる。効果を上げているとは言い難い。

福岡市や北九州市などでは、飲食店への暴力団員の入店を禁止する県条例も施行された。しかし、暴力団排除に協力的な店の経営者が刃物で襲われたり、「次はおまえの番だ」などと電話で脅されたりする事件が相次ぐ。

工藤会の排除が思うように進まないのは、市民や企業が報復を恐れ、警察への情報提供をためらうためだろう。「通報しても、警察は自分たちを守ってくれない」という市民の警察に対する不信感も背景にあるのではないか。

警察は、資金源を断つなど、あらゆる手段を講じて、工藤会を弱体化させ、市民の信頼を回復せねばならない。

工藤会対策を全国の暴力団排除のモデルとすることが重要だ。

産経新聞 2014年09月17日

工藤会頂上作戦 壊滅目指し民間人を守れ

福岡県警は、殺人と銃刀法違反容疑で、北九州市を拠点とする特定危険指定暴力団「工藤会」のトップとナンバー2を逮捕した。

同県警以外からの応援を含む約3800人態勢の捜査本部を設置しての「頂上作戦」である。

先頭に立つ県警の樋口真人本部長は「日本警察にとって、これからが正念場だ」などと述べている。

暴力団は絶対的な社会悪だ。これを排除するには官民挙げての協力が不可欠だが、彼らの暴力は直接、民間に向かうこともある。壊滅を目指す警察には、徹底的に民間人や企業を守ってほしい。

最高幹部2人の逮捕容疑は、平成10年に北九州市で、港湾整備事業の利権に絡んで元漁協組合長が射殺された事件に関与したとされるものだ。事件後にナンバー2の男も殺人容疑で逮捕されたが、不起訴となっていた。県警は今回の逮捕を、起訴された3人の公判資料や関係者聴取から新証拠が見つかったためと説明している。あらゆる法規を駆使して臨むという、警察の真剣さがうかがえる。

福岡県内では北九州市を中心に、あいさつ料など不当な要求を断る事業者や住民を襲撃する事件が21~25年に50件近く相次いだ。県の条例に基づいて「暴力団員立入禁止」の標章を掲げた飲食店では経営者や女性従業員に対する殺人未遂事件やビルの不審火が続き、店には「次はお前じゃ」といった脅迫電話も繰り返された。

23年11月には建設会社会長が大相撲九州場所観戦の帰途に射殺された。24年4月には福岡県警で暴力団担当だった元警部が自宅近くの路上で銃撃された。これら事件の多くは解決していない。

今年7月に工藤会と最高幹部2人の資産凍結を発表した米財務省は、日本の暴力団を「6万人近い規模を持つ世界最大の犯罪組織」とし、工藤会については「中でも最も凶暴な団体」と記した。

日本は世界に、治安の良さを誇ってきた。だが、暴力団を放置する限り、その自負は怪しいものと言わざるを得ない。

暴力団対策法の改正や暴力団排除条例の施行などを通じて、法の網の目は確実に狭まりつつある。警察が凶暴化する組織に対峙(たいじ)し、民間人や企業を守るため、おとり捜査や通信傍受といった新たな捜査手法を導入することも、早急に検討すべきだ。

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