日本経団連 米倉改革に期待する

朝日新聞 2010年01月28日

米倉経団連 脱皮は献金の廃止から

5月末に退任する御手洗冨士夫・日本経団連会長の後任に米倉弘昌・住友化学会長の就任が内定した。政府・与党と経済政策について議論する役回りを演じることになる。

鳩山政権は、長らく二人三脚で歩んできた自民党政権に比べ、経済界と距離がある。経済政策も消費者をはじめとする需要サイドに力点を置く。経団連が企業活動の活発化を目指すだけの政策提言を繰り返すとしたら、議論はかみ合わないだろう。

企業益を最大化するための組織という従来の役割から、いかに脱皮できるのか。米倉経団連に問われようとしているのは、そのことである。

東西の冷戦が終わり、グローバル化が一気に加速したこの20年は、企業益と国民の利益とのギャップが広がった時代であった。中国などの新興国が成長し、グローバル競争は激化した。日本はバブル経済崩壊の傷が容易に癒えず、低成長の下で企業はリストラを伴う競争力強化で何とかしのいできた、というのが実情だ。

この間、国内の雇用は劣化した。働く人の3人にひとりが非正規雇用を余儀なくされた。企業は効率化した半面、働く人たちの生活は不安定になり、企業業績が改善した時期も生活の向上を実感しにくくなった。

戦後の長い間、企業の成長は国内の雇用を生み、所得を引き上げた。企業の成長と国民の豊かさが太いパイプでつながっていた。しかし、この20年は企業の成長が国民の豊かさに従前ほどは寄与しなくなった。企業益と国民益をつなぐパイプが細くなったのだ。

経団連は政権与党を中心に企業の政治献金を呼びかけ、企業活動に利する政策実現を求めてきた。企業益が国民益に直結した時代はともかく、国民益との隔たりが拡大した今、献金への理解は得られまい。

「政治とカネ」への疑惑と懸念が政権交代後にむしろ強まっていることも、企業献金に対する国民のまなざしを一段と厳しくさせている。しかも民主党は3年後をめどに企業・団体献金を廃止すると政権公約にうたった。米倉次期会長は、企業献金の廃止に向けて動き出さねばならない。

経団連は存在価値をどこに求めるべきか。経済界の利害も一枚岩でなくなった。地球温暖化対策では内部に厳しい対立を抱えている。

経済の語源は「経世済民」だ。経団連はそこに立ち返り、国民益に寄り添う社会的存在として政策提言に知恵を絞る組織に変わるべきだろう。

もしも経団連が企業益のために「おカネも出すし口も出す」という組織のままならば、存在価値を失うばかりではないか。国際感覚にあふれ、決断力が買われる米倉次期会長が大胆な組織改革に乗り出すことを期待したい。

毎日新聞 2010年01月28日

日本経団連 米倉改革に期待する

日本経団連の次期会長に経団連の評議員会議長で住友化学会長の米倉弘昌氏が内定した。5月の定時総会で正式決定し、就任するが、非財閥系の企業出身者が会長を務めてきた経団連としては、異例の起用と言っていいだろう。

サウジアラビアで大規模な石油化学コンビナート事業に乗り出すなど、住友化学はグローバルな展開を進めている。また、アフリカでのマラリア感染を予防する蚊帳のように、援助との両立を実現した事業も高く評価されている。

日本経済の成長のためには、新興国を含めた世界の成長を取り込む必要がある。地球温暖化問題に対応するには途上国との関係強化も重要だ。経済界のリーダーとして、米倉氏の経営手腕に期待したい。

現在の御手洗冨士夫会長は、現役の副会長の中から次期会長を起用することを表明していた。中村邦夫パナソニック会長や西田厚聰東芝会長などが有力視されていた。

しかし、一昨年の金融危機以来、世界的な景気悪化で企業経営は厳しい状況が続いている。財界活動よりも自社の経営に専念する必要があることや、政権交代が実現し、政治との距離のとり方が難しいという状況下で、人選は難航したようだ。

米倉氏は04年に経団連副会長に就任、2期4年間務めた後、08年から会長の諮問機関である評議員会の議長を務めている。現役の副会長からの起用を断念し、米倉氏を次期会長に選んだのは、そうした事情があったからだろう。

自民党政権時代に、経団連は与党や官庁と折衝を行い、産業界の意向を政策に反映させてきた。

しかし、民主党中心の連立政権が誕生し、自民党時代と政策決定の過程が大きく変わってしまった。業界団体が、官庁やつながりの深い与党議員に陳情するという従来の手法は通用しなくなってしまった。

そうした変化が、産業界の総意を取りまとめる役割を担ってきた経団連を揺さぶっている。

経団連は、企業が政治献金を行う際の目安となる政策評価を行ってきた。しかし、これを中止したように、政治との関係について見直しを余儀なくされている。経団連会長の政権への発言力も低下が指摘されている。経団連の存在自体が問われているとも言っていい状態だ。

失われた20年と形容されるように、日本経済に漂う閉塞(へいそく)感は深い。縮み志向で活力に欠ける状況を招いている。しかし、その原因のひとつは、企業家精神の劣化にもあるのではないだろうか。経団連の改革と同時に、企業家精神の活性化にも、米倉氏は力を注いでもらいたい。

読売新聞 2010年01月26日

米倉経団連 景気回復実現の先頭に立て

日本経団連の次期会長に、住友化学会長の米倉(よねくら)弘昌(ひろまさ)氏が就任することが固まった。近く内定し、5月に就任する。

経営者としてのすぐれた手腕に加え、経団連の副会長や、会長に次ぐナンバー2の評議員会議長を歴任した財界での実績が買われたのだろう。

日本経済は、デフレと内需低迷で厳しい状況にある。政権交代によって、財界と政治との関係も希薄化しつつある。

多事多難な折である。財界総理と呼ばれる経団連会長には、産業界をまとめ、成長回復に向けた政策の実現を政府に迫る、強いリーダーシップが求められよう。

住友化学は国内2位の総合化学会社で、医薬品などにも強い。

米倉氏は2000年に社長に就任すると、サウジアラビアでの石油化学コンビナート事業への進出を決断し、事業のグローバル化を大きく進展させた。

日本は、少子高齢化や人口減少で国内需要の先細りが懸念されている。発展を続けるには、輸出と、アジアをはじめとする海外での事業展開が欠かせない。企業経営で培った国際センスを生かし、日本経済のグローバル戦略の先頭に立ってほしい。

ただ、今回の人選には異例な点も多い。現役の副会長から選んできた従来の慣行と違うし、旧財閥系企業からは選ばないという不文律も初めて破られた。

新日鉄や東芝、トヨタ自動車など、これまで会長を輩出してきた企業より、住友化学は規模が小さく、指導力を危ぶむ見方もある。小粒とされる心配を「ピリリ」とした行動で振り払ってほしい。

まずは、鳩山政権との関係をどのように構築していくかが問われることになる。

家計重視を掲げる現政権は、公共事業の削減や温室効果ガス削減の強化など、企業に厳しい政策が目立つ。民主党の政権公約には、企業・団体献金の禁止が盛り込まれており、政治が企業から距離を置く姿勢も見える。

自民党時代のように、財界が政治に「カネも口も出す」関係は修正を迫られよう。

一方で、過剰な安売り競争がデフレを悪化させるなど、企業活動がもたらすマイナス面も目についてきた。雇用・所得の維持も、経済界の大きな責務である。

目先の企業利益を振りかざしていては、財界の影響力は低下するばかりだろう。日本全体の利益になる政策を提言していくことが、米倉経団連の使命である。

産経新聞 2010年01月28日

経団連新会長 鳩山政権に厳しく注文を

日本経団連の新たな会長に米倉弘昌住友化学会長の就任が内定した。日本経済がデフレ基調を強める中で明確な成長戦略を打ち出せない民主党政権に対し、厳しくモノ申す姿勢が求められる。

経団連会長は「財界総理」とも呼ばれる。米倉氏は経済同友会や日本商工会議所など他の経済団体との連携を主導し、財界全体の情報発信力を高めるように存在感を示してほしい。

これまで経団連会長は、融和を優先させる立場から旧財閥系企業からの起用を見送っており、初の財閥系企業出身となる。また、現職副会長からの選出を慣例としていたが、米倉氏は副会長を務めた後、現在は評議員会議長に就いており、その点でも異例だ。

国際会議では英語でスピーチをこなすなど、米倉氏は財界を代表する国際通として知られる。社長時代にはサウジアラビアに1兆円規模で石油化学コンビナートの建設を決め、産業界を驚かせた。国際化が課題の日本企業の中で自らそれを実践しており、慣例を排した人物本位の選出といえる。

しかし、5月に正式発足する米倉経団連の課題は多い。

これまで政策決定の司令塔だった政府の経済財政諮問会議には、民間から経団連会長らが参加していた。だが、民主党は諮問会議を廃止し、経済界と距離を置き、企業や経済の実態を把握して政策立案に反映する仕組みを持っていないのは問題だ。

経団連はデフレ脱却など日本経済が抱える問題について、実効性のある政策提言を打ち出し、政府・与党に実現を求める必要がある。とくに民主党は子ども手当など生活者重視の政策を掲げているが、経済の成長なくして国民への分配はない。新規産業の育成や海外進出の支援など、成長戦略の早期策定と実践が急務だ。

一方で経団連の求心力も問われている。これまで経済界は法人税減税など自らの利益につながる政策提言には熱心だった。今後は雇用の確保や非正規社員の待遇改善など、企業の社会的な役割について産業界が積極的に果たすような取り組みも重要だ。ときには身内の産業界に苦言を呈する姿勢も必要だろう。

財界の地盤沈下が指摘されるようになって久しい。米倉氏は経団連の存在感を高めるためにも日本経済の立て直しに向け、リーダーシップの発揮を望みたい。

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