円安ドル高 今こそ経営努力が必要だ

朝日新聞 2014年09月15日

進む円安 負の側面に配慮が必要

円安が進んでいる。1ドル=107円台と6年ぶりの円安ドル高水準にもなった。

年明けから102円前後で安定していた円相場が8月下旬から円安に傾いてきたのは、日米の景況感の差と、それに伴う金融政策の方向の違いが鮮明になってきたからだ。

米国の4~6月期の経済成長率は年率で前期比4・2%。中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は10月に量的緩和政策をやめ、来年には利上げに踏み切ると見られる。最近は、従来の想定以上のペースで利上げが進むのではないかとの見方も出てきた。

対する日本は4~6月期の成長率がマイナス7・1%。日銀は量的緩和からの出口については語らず、黒田東彦総裁が11日には将来の追加緩和の可能性に言及、円安の材料になった。

円が下がっているのとは裏腹に、株価は上昇傾向だ。円安で、輸出企業を中心に業績が回復するとの期待があるからだ。

確かに輸出が多い大手自動車メーカーなどでは、1円の円安が100億円単位の収益改善につながる企業もある。みずほ銀行産業調査部が昨年まとめた試算では、10円円安になると、営業利益は上場企業全体で約1兆9千億円増える。

一方、中小が多い非上場企業では約1兆2千億円減るという。輸入原材料価格が上昇するなど負の影響が大きいからだ。日本商工会議所の三村明夫会頭は記者会見で、円安について「中小企業の立場ではあまり望ましくない」と述べた。

円安は、輸入食品やエネルギーの価格上昇を招き、消費者の懐にも影響する。

輸出企業が賃金アップや設備投資の増加などで成長のエンジンとなり、持続的な景気拡大につながらなければ、円安は多くの消費者や中小企業にとって負担増の要因となりかねない。

円安が日本経済にとって必ずしもプラスと言えないことは、貿易統計などからも明らかだ。多くの企業が生産拠点を海外に移した結果、円安傾向でも輸出は伸びず、今年上期の貿易赤字は過去最大だった。

それでも日銀の黒田総裁は現在の円安について「日本経済にマイナスになるということはない」という立場だ。輸入物価の上昇は日銀の目標である「物価上昇率2%」の達成を後押しする。何より、金融緩和を起点とした円安・株高はアベノミクスの柱の一つだ。

しかし、経済状況は、円安の負の側面への配慮が必要になっていることを示している。

毎日新聞 2014年09月21日

円安の進行 負の側面を警戒しよう

かつて日本経済への朗報とされた円安が、ここへきて不安材料になっている。外国為替市場の円相場は対ドルで約1カ月間に7円近くも値下がりし、6年ぶりとなる1ドル=109円台を記録した。

読売新聞 2014年09月23日

円安の進行 景気への副作用に目配りせよ

日本経済の追い風となってきた円安も、行き過ぎれば手放しでは歓迎できなくなる。

政府・日銀は、円安の副作用にも目配りした政策運営に努めるべきだ。

1ドル=100円近辺で安定していた円相場が、ここ1か月で大きく円安に振れ、先週末には約6年ぶりの110円台に迫った。

景気が堅調な米国の利上げ観測が強まり、円売り・ドル買いが加速したことが主因である。

米連邦準備制度理事会(FRB)は、国債購入などの量的金融緩和策を10月で終えると表明した。ゼロ金利政策を解除し、異例の金融緩和を通常に戻す「出口戦略」の計画も公表した。

これに対し、日本は消費税率引き上げ後に景気がもたつき、黒田東彦日銀総裁が追加金融緩和も辞さない構えを見せている。

主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の記者会見でルー米財務長官は、「ユーロ圏と日本の成長には失望させられている」と述べた。「強いドル」の局面は当面、続くと見られる。

気がかりなのは、為替相場の動きが激しいことだ。乱高下につながる投機の動きはないか、政府・日銀は監視を強めてほしい。

円安は、企業の輸出代金や海外で上げた収益の為替差益を拡大させる。東京市場の平均株価が約8か月ぶりに1万6000円台を回復した。業績への円安メリットを素直に評価しているのだろう。

ただ、日本経済全体を見ると、円安には「負の側面」もある。

みずほ銀行の推計によると、円安が10円進めば、上場企業には計1・9兆円の増益効果がある一方、非上場企業は逆に1・2兆円の減益になるという。

輸出や海外展開に縁のない中小企業や、小売り、サービスなど内需産業は円安メリットが乏しい。それに加え、輸入原材料や電気料金の高騰などでコストはかさむため、経営は圧迫される。

過剰な円安で、中小企業が苦境に陥らないか心配である。

経済の構造的な変化も見過ごせない観点だ。生産拠点の海外移転が進み、円安でも国内生産や輸出が以前ほど増えなくなった。

円安の恩恵が、雇用増や賃上げとして国内に還元されにくくなったと言える。家計の所得が伸びない状況で、輸入食品やガソリンなど必需品の高騰が続けば、消費が低迷し、景気回復の足を引っ張る懸念があろう。

円安が景気に与える影響を、詳細に分析することが急務だ。

産経新聞 2014年09月14日

円安ドル高 今こそ経営努力が必要だ

外国為替市場の円相場の動きが激しい。米国経済の順調な回復を見据えてドルを買う動きが強まり、1カ月間で約5円も円安ドル高が進んだ。

日々の動きに一喜一憂すべきではないが、為替の変動があまりにも大きいと、経済の波乱要因となりかねない。経済にとって大切なのは相場の安定である。足元の速すぎる動きは気がかりだ。

円安になれば輸出企業のさらなる収益改善が期待できる。ただ輸入の多い企業には打撃だ。原材料や食料などの輸入価格が押し上げられることに注意が必要だ。

円安で物価が上昇するだけなら、もたつき気味の消費回復に水を差すことにもなりかねない。

所得を増やし消費拡大につなげる好循環を着実に果たしていくことが肝要である。

今春から夏まで安定していた円相場が一気に動いた背景には、日米の金融政策の違いがある。

景気や雇用の改善が顕著な米国では、10月の量的金融緩和終了はもちろん、利上げに転じる時期も意識されている。消費税増税の影響が長引き、日銀の追加金融緩和が取り沙汰される日本とは正反対の動きである。

米国の金利が高くなることを見越してドルを買おうとするのは自然な流れだ。当面は円安傾向が続くとの見方も多い。問題は、そんな動きにどう対応するかだ。

円安を輸出増の追い風とすべきなのはもちろんである。留意しなければならないのは、企業の海外生産が進み、円安による輸出拡大効果がかつてほどみられなくなったことだ。これまでの円安局面でも、輸出数量は伸び悩んだ。

経済のグローバル化が進展するなか、製造業が部品調達から最終製品の組み立てまで、生産体制を世界に分散させる構造変化は今後も続こう。単純に輸出を増やそうにも限界がある。大切なのは、製品の付加価値を高めて競争力を向上させる不断の経営努力だ。

足元の経済をみると、消費税増税の影響で家計の実質所得は減っている。食品価格の高騰や電気料金の負担も大きい。

脱デフレを確かにするには物価上昇が欠かせない。ただ、それは円安によるものではなく、経済成長に伴う需要拡大で果たさねばならない。そのためにも企業には、業績改善を賃上げにつなげる取り組みをさらに強めてほしい。

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