川内原発「合格」 再稼働へ課題の解決を急げ

朝日新聞 2014年09月14日

川内再稼働 山積する課題忘れるな

九州電力川内(せんだい)原発1、2号機の再稼働をめざす政府の手続きが先週、続いた。

まず、原子力規制委員会が新規制基準に適合する、とする審査書を正式決定。直後に原子力防災会議が事故時の住民避難計画について了承し、小渕経済産業相は川内原発の再稼働を政府として進める、と明記した文書を鹿児島県知事と薩摩川内市長に交付した。

あまりに前のめりに過ぎないか。

規制委の川内原発審査書は、巨大噴火の可能性や予兆観測について火山学者の異論を振り切ってのものだ。具体的な予兆観測の方法は決まっていないし、万が一、予兆が疑われた場合に核燃料をどこに運び出すか、その場所も決まっていない。

自治体任せだった避難計画に、自衛隊による現地急行を盛り込むなど国の関与を強めたのは当然である。とはいえ、実際にどの程度使える計画になったのか。放射線量が上がった場合の避難用にバスを確保する計画だが、避難者も運転者も被曝(ひばく)リスクが高くなっていいのか。

東京電力福島第一原発の事故について、政府の事故調査委員会が実施した関係者の聴取結果書(調書)も先週、一部が公開された。

当時の吉田昌郎(まさお)所長(昨年7月死去)の調書と政治家の調書を併せ読むと、「だれも助けに来なかった」(吉田氏)と孤立感や絶望感を抱きながら奮闘した現場と、東電本店や官邸との間の意思疎通が悪かったことがわかる。

意思疎通を巡る問題は、通信手段の強化など規制委の新規制基準に反映された部分もある。

しかし、電力会社と政府の役割分担の明確化や、自衛隊や消防との連携強化など、規制委の権限が直接及ばない分野での改善は十分ではない。再稼働の日程が浮上する今、早急に克服すべき課題と言える。

もう一つ、大きな教訓として読み取れるのは、原発事故のマニュアルにしても、住民の避難計画にしても、文書にまとめただけでは、危機的状況に至ったときに使いものにならない、ということだ。使えるようにするには、実地訓練を重ねなければならない。再稼働前にもその後にも必須の取り組みだ。

政府事故調の調書の公開は、今後も続く。何を教訓として得て、事故時の詳細なマニュアル類にどう反映したのか、政府は改めて説明するべきだろう。

川内再稼働を前に、「想定外」を「想定内」に変える努力の余地は、まだまだ大きい。

毎日新聞 2014年09月11日

川内原発再稼働 なし崩し的に進めるな

九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の安全審査で、原子力規制委員会は新規制基準への合格証となる審査書を決定した。全国の原発で初めてだ。九電は再稼働に向け、地元への同意手続きを本格化させる。しかし、多くの課題が残されたままで、なし崩し的に再稼働を進めることは認められない。

読売新聞 2014年09月11日

川内原発「合格」 再稼働へ課題の解決を急げ

長期にわたって停止している原子力発電所の再稼働へ向け、大きな前進だ。なお残る課題の解決を急がねばならない。

鹿児島県にある九州電力川内原発1、2号機について、原子力規制委員会が、安全審査の合格証にあたる「審査書」を決定した。

原発の規制基準は、東京電力福島第一原発の事故を踏まえて強化された。それに適合すると判断された初の原発である。

規制委が、福島第一原発のような事故の危険性は大幅に下がったと判断した結果だろう。地震や津波への安全対策は十分に講じられ、原子炉の冷却機能なども強化されたと認定した。

昨年7月に九電が安全審査を申請してから、今回の決定までに1年2か月を費やした。もっと速やかに審査できなかったのか。

規制委、九電とも新基準に不慣れで、どの程度まで対策を施せばいいのか、両者の主張がかみ合わないことが多かった。

他の原発の審査で、同じてつを踏んではならない。

規制委は今後、審査書に基づき、改良工事の妥当性を確認する。人員配置や緊急時の対応手順などもチェックする。

川内原発は火山活動が活発な地域にある。規制委は、火山対策の検討を本格化させたばかりで、今のペースでは、年内の再稼働は難しい。拙速は禁物だが、効率的に審査を進めてもらいたい。

再稼働について、政府と九電は、鹿児島県と川内原発が立地する薩摩川内市の同意を得ることにしている。原発の安全性と重要性を丁寧に説明せねばならない。

小渕経済産業相らが適切な時期に現地に出向くなど、誠実な対応が求められよう。

川内原発の周辺30キロ・メートル圏内にある9市町の住民避難計画を充実させることも課題である。

福島第一原発事故では、避難計画が不備だった。政府と地元自治体は連携を欠き、混乱に拍車をかけた。住民を安全に避難させるには、綿密な計画が不可欠だ。

9市町は既に避難計画を策定しているが、避難用バスの確保策などを疑問視する声がある。政府は、経産省から5人を鹿児島県などに派遣し、計画の改善を支援する。妥当な措置と言える。

規制委が安全審査を進めているのは、川内原発以外に、九電玄海原発や関西電力高浜原発など、18基に上る。川内原発の取り組みは、原発の再稼働が軌道に乗るかどうかの試金石となる。

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