南アジア外交 海洋安保協力を拡大したい

朝日新聞 2014年09月10日

南アジア外交 対中牽制の苦い現実

「真珠の首飾りにくさびを打ち込む」

安倍首相が活発に進める南アジア外交を、そんな牽制(けんせい)の意味に受け止める向きがある。

真珠の首飾りとは、この地域での中国の戦略をさす。中国は近年、スリランカ、バングラデシュ、パキスタンなどの港湾整備を支援してきた。真珠にあたる港を線でつなぐと、インドを囲む弧をえがく。

胸元にあたるインドは、中国が将来、これらの港湾を軍事拠点にするのでは、と警戒している。インド洋の海上輸送路(シーレーン)を脅かす首飾りを日米も座視できない。

南アジア経済の高い将来性を見越した動きでもあろう。インドのモディ首相の来日に続き、安倍首相はバングラデシュとスリランカを訪ねた。

バングラデシュとはインフラ支援で合意し、15年秋の国連安全保障理事会の非常任理事国選挙で、日本への支持を取りつけた。スリランカには巡視艇の供与を申し入れ、海上自衛隊と同国海軍の訓練など協力を強めることでも一致した。

とはいえ、手放しで日本に傾くわけではあるまい。

スリランカ、バングラデシュは中国から経済協力や武器支援を受けてきた。中国と日本のバランスをとりながら、実利を得たいとの思惑も働くはずだ。

インドのモディ首相との会談では、日本が望んだ外務・防衛閣僚会合(2プラス2)の開催が合意に至らず、日本の救難飛行艇US2のインドへの輸出も最終合意しなかった。

特に2プラス2の見送りは日本とインドの微妙な温度差を映し出した。今月中旬には中国の習近平(シーチンピン)国家主席がインド、スリランカなどを訪問する。インドにとって中国は最大の貿易相手国でもあり、無用の刺激は避けたいのが本音ではないか。

そんな苦い現実を見据える必要がある。地域の事情に配慮しながら、少しずつ多国間の安全保障協力を進めるべきだ。

将来的にはインド洋のシーレーンを舞台に、中国を信頼醸成の建設的な取り組みに巻き込むことが目標になる。

必要なのは、真珠の首飾りへの対抗だけではない。

読売新聞 2014年09月09日

南アジア外交 海洋安保協力を拡大したい

高い経済成長を続けるインド洋沿岸国との関係強化は、日本の国益にかなう。相互利益を拡大するため、長期的かつ戦略的に取り組むべきだ。

安倍首相がスリランカとバングラデシュを訪れた。日本の首相の訪問は、スリランカが24年ぶり、バングラデシュは14年ぶりだ。

安倍首相とスリランカのラジャパクサ大統領は、海洋安全保障面での協力を強化することで合意した。安倍首相は、スリランカの沿岸警備隊の能力向上のため、巡視船を供与する方針を伝えた。

海上自衛隊とスリランカ海軍の合同訓練を行うことも決めた。

スリランカは、中東と日本を結ぶ海上交通路(シーレーン)の要衝に位置する。両国の海洋協力は中国を牽制けんせいする意味を持つ。

中国は、将来の軍事拠点化も視野に入れ、パキスタン、スリランカ、バングラデシュなどの港湾整備を支援してきた。インドを取り巻く各拠点を結んだ形状から「真珠の首飾り」と呼ばれ、インドや日米などは警戒を強めている。

スリランカでは2009年まで民族対立による内戦が続いた。欧米が内戦期の人権状況を批判する中、中国はスリランカ支援を強化した。09年には、日本を逆転し、最大の援助国となった。

シーレーンの安全確保は自由な経済活動の基盤だ。日本は、米国や沿岸国などと連携し、中国に独善的な海洋権益確保の自制や、国際法の順守を促す必要がある。

安倍首相はバングラデシュのハシナ首相との会談で、日本企業の投資を促進し、両国間の貿易拡大を図ることで一致した。5年間で最大6000億円の政府開発援助(ODA)を投入し、基幹道路整備などを行うことも確認した。

人口1億5000万人のバングラデシュの経済的な潜在力は大きい。官民連携により、協力を着実に進めることが重要だ。

ハシナ首相は、来年10月の国連安全保障理事会の非常任理事国選挙に立候補せず、日本支持に回る方針を表明した。これで、日本が当選する公算は大きくなった。任期は16年から2年間だ。

日本は、国連加盟国で最多の過去10回、非常任理事国に選出されているが、唯一の敗北がバングラデシュとの選挙だった。今回の同国の不出馬決定は、日本の多角的な外交努力が実ったと言える。

来年は国連創設70周年で、安保理を含む国連改革が焦点となる。日本は、新しい様々な国連のルール作りに積極的に関与し、発言権を確保することが大切である。

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