経団連再び献金 社会貢献とは言えない

朝日新聞 2014年09月10日

経団連と献金 民主政治に資するのか

経団連が、会員企業に政党への献金を呼びかけることを決めた。5年ぶりの「関与」再開である。

各党の政策と、与党については実績も評価して示す。あくまで参考資料であり、献金の判断は個々の企業に任せる。だから「政策をカネで買う」という批判は当たらない。自由主義、民主政治を守り、議会制民主主義を発展させるにはおカネがかかる。それを負担するのは企業の社会的責任であり、政治献金は社会貢献だ――。

榊原定征・経団連会長は記者会見でこんな説明を展開した。説得力はあるだろうか。

まず「自由主義、民主政治を守る」という主張である。

東西冷戦が過去の話となった今、国会で活動する主要政党のうち、自由・民主主義の価値を否定する政党はあるまい。

確かに、日々の政治で政党は大きな役割を担っている。経団連が「さまざまな意見を持つ政党が切磋琢磨(せっさたくま)することが大切」と考えているのなら、自らの主張と異なる政策を掲げる政党も支援するのが筋だろう。

「各社の自主判断」と言いながら、経団連の主張に照らして各党の政策への評価を示す。企業重視の「アベノミクス」への全面支持も表明していることを踏まえれば、民主政治のためというよりは、特定の政策がほしいだけではないのか。

企業がもうかれば国民も豊かになる。そんな図式が崩れていることは、国民自身がよくわかっている。多額の手元資金をため込みながら政権に言われるまで賃上げを渋った企業が目立ったことでも明らかだ。

経団連が経済界、企業全体を代表するという前提も怪しい。もともと「大企業・製造業」中心で、サービス業や中小企業との利益相反を抱えてきたが、今は法人税の減税問題であらわだ。税率引き下げの財源確保策とされる租税特別措置や中小企業特例などの見直しをめぐり、意見がまとまらない。

政治献金を考える時、「そもそも論」も忘れてはならない。政官業の癒着の温床となってきた企業・団体献金をなくしていくため、税金による政党交付金を導入したのではなかったか。

個人献金をどう増やすかという課題を含め、「政治とカネ」の全体の見取り図を欠いたまま、企業献金に力を入れるのは無責任だ。経団連の方針を「大変ありがたい」と受け入れる自民党も自民党である。

経団連の関与が民主政治にどう資するのか。そこがわからない。

毎日新聞 2014年09月10日

経団連再び献金 社会貢献とは言えない

経団連(榊原定征<さだゆき>会長)が会員企業・団体への政治献金の呼びかけを5年ぶりに再開する。政治と経済の連携を強め、企業の社会的責任を果たすためだという。

読売新聞 2014年09月10日

経団連献金関与 企業の政治参加を促す契機に

日本経済再生に向け、経済界と政治が連携を強化する契機としたい。

経団連が5年ぶりに政治献金への関与を再開することを決めた。会員企業に、自主的な判断に基づく政治献金を呼び掛ける。判断材料として、政党の政策評価を示す方針も明らかにした。

経団連の榊原定征会長は記者会見で、「経済と政治が手をつないで日本を立て直さなくてはならない」と述べた。

自民党の谷垣幹事長も、「民主主義の健全な発展のためには、社会貢献の一環として、企業も責任を果たさねばならないということだろう」と指摘した。

経団連と自民党は近く、幹部による政策懇談会を再開する。

経済の主役である企業が、ルールを守った透明な献金を通じ、政治に参加する意義は大きい。

政府が経済財政諮問会議の民間議員に榊原会長の起用を決めるなど、米倉弘昌前会長の時にぎくしゃくした経団連と安倍政権の関係は改善した。献金関与再開には、経済界の声を、さらに政策に反映させやすくする狙いもあろう。

経団連は戦後、企業・団体に献金額を割り振る「あっせん」を続けていたが、ゼネコン汚職などを受けて1994年に中止した。

2004年に、政策評価を目安に献金を促す方式で関与を再開したものの、09年の民主党政権発足を機に、これも取りやめた。

政党への企業献金は激減し、自民党本部の場合、年間収入140億円の1割ほどだ。代わりに政党交付金が約7割を占める。

政界には、企業献金は不要とする意見もあるが、政党の運営費を、政治が使途を決める税金に、過度に依存する現状は問題が多い。企業や個人による献金の比率を高める方策を考えたい。

気がかりなのは、経団連による政策評価の位置づけがあいまいなことである。

榊原会長は政策評価を、企業が献金を判断する「一つの材料にしてもらえばいい」と述べる一方、「献金と政策評価はリンク(関連)させない」と説明した。

「献金で政策を買うのか」といった批判をかわす狙いと見られるが、分かりにくい。多くの企業が対応に迷い、献金をためらうのではないか。

重要政策で主要政党がどのような主張を展開し、実現を図ってきたのか、分かりやすい評価を示す。それを目安に献金を検討するよう企業に働きかける。そうした明快な対応を取るべきだ。

産経新聞 2014年09月11日

経団連と企業献金 透明性高め国民の理解を

野党転落時の総裁として党財政に苦労しただけに「ありがたい」との言葉は本音だったろう。

自民党の谷垣禎一幹事長が、政治献金の呼びかけ再開を伝えた経団連の榊原定征会長に謝意を述べた。だが、再開には厳しい視線が注がれていることを双方ともに留意してほしい。

企業も社会的存在であり、自民党などへの献金が、自由主義経済や議会制民主主義に果たした役割は小さくない。しかし、政党助成金の導入に伴って企業献金は縮小・廃止し、個人献金の拡大を図るとされた課題は置き去りだ。

これに目をつむり、献金への関与を与党と経済団体の関係強化のテコにしようとするばかりでは、国民の理解は得られまい。

企業献金を一定期間後に廃止を含めて見直すというのは、20年余り前、ほかでもない旧経団連が示した考え方である。経団連と自民党は今後、政策的な意見交換を増やすという。政治資金の調達方法を改めて議論し、資金の透明度を高める努力を求めたい。

小選挙区比例代表並立制とともに政党助成金が導入され、企業献金の比率は低下した。自民党でも収入の6割以上を助成金が占める。経団連の呼びかけで献金額が急増するとはかぎらない。

だが政党、政策本位の政治の実現には、支持者の定着や党員の拡大が重要だ。企業献金の蛇口をひねるだけでは、個人献金拡大の取り組みに水を差すことになる。

経団連が一時ぎくしゃくした政権との関係改善を目指すことは理解できる。法人税減税や原発再稼働など経団連が期待する政策は多く、政治との連携は不可欠だ。

ただ、大企業中心の経団連だけが経済界を代表しているわけではない。経済再生を果たすには、税制や規制の見直しで既得権益に切り込む局面も出てくる。特定業界に利益を誘導する目的で資金をばらまくなら「政策を買う」との批判が高まることになるだろう。

経団連は献金への関与を「社会貢献の一環」と説明する。それにはまず、本来の社会貢献を充実させ、企業の都合ばかりではなく痛みを伴う改革も甘受し、国や国民全体の利益を考えて政党の政策を評価する必要がある。

政権復帰後、自民党には新たな政治資金の規制へ目立った取り組みがみられない。頬を緩めている場合ではない。

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