大阪・泉州沖の関西空港が4日、開港20年を迎えた。人工島で、24時間発着が可能――。多くの「世界初」「日本初」を冠した華々しいデビューだったが、浮沈を繰り返してきた。
13年度の発着は13万3千回。16万回という開港前の想定に遠く及ばない。建設に伴う借金は1兆2千億円近く残る。
2年前に大阪(伊丹)空港と経営統合し、運営権売却の準備が進む。ただ、過去の失敗を教訓にしておかなければ、明るい未来は見通せない。
最大の問題は、国と地元の場当たり的な対応だった。
初の民営空港といいながら、関空会社の社長は3代目まで国の天下り。03年から民間登用に切り替わったものの、国と自治体の出向組が主要ポストを握り、経営に機動性を欠いた。
社員らの努力でも巨額の借金はどうにもならず、ついに運営権を売る異例の展開になった。
地元も足を引っ張った。騒音問題などで関空建設の理由となった伊丹だが、周辺の要望で存続した。かつて新空港に反対した神戸市は06年、神戸空港を開いた。あおりで関空は国内線の就航が少ないままだ。
運営権売却で国が承認した最低価格は45年間で2兆円を超す。借金完済という思惑が優先された格好だ。
関空は近年、格安航空会社(LCC)の拠点をめざす戦略に転換した。就航便数は伸びており、収益も堅調だ。それでも、国内外の投資家からは「高すぎる」との不満が相次ぐ。
国や関空側は「採算はとれる」と強気だが、高すぎるのは考えものだ。落札されても、事業者が新規投資に回す余力が乏しくなる。もとをとろうと過度の合理化に走り、空港の機能が損なわれるリスクもあろう。
伊丹、神戸両空港との関係も未整理のままだ。
関空側は伊丹を重要な収益源とみているが、東京―大阪間のリニア中央新幹線ができれば打撃は必至だ。廃港論がくすぶる一方、周辺からは近距離国際線の復活を求める声も根強い。
乗客数が伸び悩む神戸空港の周辺では、関空、伊丹との統合論が強まってきている。
3空港のあり方はこれまでも繰り返し議論されてきたが、地元の利害が対立し、つねにあいまいな決着に終わってきた。
人口減が加速すれば、空港の経営環境はますます厳しい。国が音頭をとり、地元とともに3空港の長期戦略を改めて固めておく必要はないか。
運営権さえ売れれば、と希望をつなぐだけでは、甘すぎる。
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