安全保障と経済の両分野で協力を深め、日本とインドの関係をより高い次元に引き上げたい。
インドのモディ首相が来日し、安倍首相と会談した。日印の戦略対話を強化し、両国の「グローバル・パートナーシップの可能性を最大限に発揮する」との共同文書を発表した。
安倍首相は、日印関係について「世界で最も可能性を秘めた関係だ。あらゆる分野で抜本的に強化していく」と強調した。モディ首相は「外交関係で日本は大変高い位置づけにある」と応じた。
10年ぶりの政権交代を果たしたモディ首相が、5月の就任後に初めて訪問する主要国に日本を選んだのは、日本重視の表れだ。インド西部のグジャラート州首相時代に日本企業を誘致した親日家で、安倍首相とも親交がある。
首脳間の信頼関係を基に、双方が利益を享受できるよう、両国関係の発展を追求すべきだ。
会談では安保分野で、外相、防衛相らの対話強化や、海上自衛隊とインド海軍の共同訓練の定例化で一致した。日本製の救難飛行艇US2の輸出に向けた協議を急ぐことも確認した。いずれも着実に実施する必要がある。
日本にとって、インド洋は中東から原油を運ぶ海上交通路(シーレーン)に位置する。海上の安全を確保するうえで、インドとの安全保障協力は重要だ。
中国は東・南シナ海にとどまらず、インド洋にも強引な海洋進出を図っている。インドもこの動きに警戒感を強めており、協力は日印双方にメリットがある。
日印は、米国を交えた3か国協力を拡充し、中国に対し、国際法の順守や紛争の平和的解決を粘り強く働きかけることが大切だ。
経済分野で安倍首相は、今後5年間でインドに対し、約3・5兆円の官民の投融資を行うと表明した。日系企業の進出と直接投資を倍増させる目標でも一致した。
経済再建を掲げて政権を獲得したモディ首相は、日印経済関係の強化に期待を寄せている。
12億人の人口を有するインド市場の将来は有望だが、日系企業には、インドの法制度の不備や複雑な規制に対する不満が強い。両政府が協力し、この状況を改善しなければならない。
安倍首相は、インドの高速鉄道など社会基盤整備を支援するため500億円の円借款供与を表明した。日本の新幹線システム導入に向けて資金や技術面で支援する考えも伝えた。受注の実現には、日本の官民連携が欠かせない。
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