日印首脳会談 幅広な安保協力の契機に

毎日新聞 2014年09月03日

日印首脳会談 広い視野で関係深めよ

インドのモディ首相が来日し、安倍晋三首相との会談で、経済と安全保障の両面で日印関係を抜本的に強化することで合意した。会談後、両首脳は「日印関係の新時代の幕開け」をうたった共同声明に署名した。

読売新聞 2014年09月02日

日印首脳会談 高次元の戦略的関係を築こう

安全保障と経済の両分野で協力を深め、日本とインドの関係をより高い次元に引き上げたい。

インドのモディ首相が来日し、安倍首相と会談した。日印の戦略対話を強化し、両国の「グローバル・パートナーシップの可能性を最大限に発揮する」との共同文書を発表した。

安倍首相は、日印関係について「世界で最も可能性を秘めた関係だ。あらゆる分野で抜本的に強化していく」と強調した。モディ首相は「外交関係で日本は大変高い位置づけにある」と応じた。

10年ぶりの政権交代を果たしたモディ首相が、5月の就任後に初めて訪問する主要国に日本を選んだのは、日本重視の表れだ。インド西部のグジャラート州首相時代に日本企業を誘致した親日家で、安倍首相とも親交がある。

首脳間の信頼関係を基に、双方が利益を享受できるよう、両国関係の発展を追求すべきだ。

会談では安保分野で、外相、防衛相らの対話強化や、海上自衛隊とインド海軍の共同訓練の定例化で一致した。日本製の救難飛行艇US2の輸出に向けた協議を急ぐことも確認した。いずれも着実に実施する必要がある。

日本にとって、インド洋は中東から原油を運ぶ海上交通路(シーレーン)に位置する。海上の安全を確保するうえで、インドとの安全保障協力は重要だ。

中国は東・南シナ海にとどまらず、インド洋にも強引な海洋進出を図っている。インドもこの動きに警戒感を強めており、協力は日印双方にメリットがある。

日印は、米国を交えた3か国協力を拡充し、中国に対し、国際法の順守や紛争の平和的解決を粘り強く働きかけることが大切だ。

経済分野で安倍首相は、今後5年間でインドに対し、約3・5兆円の官民の投融資を行うと表明した。日系企業の進出と直接投資を倍増させる目標でも一致した。

経済再建を掲げて政権を獲得したモディ首相は、日印経済関係の強化に期待を寄せている。

12億人の人口を有するインド市場の将来は有望だが、日系企業には、インドの法制度の不備や複雑な規制に対する不満が強い。両政府が協力し、この状況を改善しなければならない。

安倍首相は、インドの高速鉄道など社会基盤整備を支援するため500億円の円借款供与を表明した。日本の新幹線システム導入に向けて資金や技術面で支援する考えも伝えた。受注の実現には、日本の官民連携が欠かせない。

産経新聞 2014年09月02日

日印首脳会談 幅広な安保協力の契機に

安倍晋三首相が来日中のモディ・インド首相と会談し、対印投資を促進し安全保障で連携を強化することで一致した。

5月に就任したモディ氏は近隣国を除く初の2国間訪問先として日本を選んだ。滞在は安倍氏が夕食会で迎えた8月30日の京都訪問を含め5日間に及ぶ。日本重視の姿勢として、歓迎したい。

12億の人口を抱え新興国の代表格でもあるインドは、日本同様、軍事面で台頭する中国への懸念を有し、経済、安全保障の両面で日本の大切なパートナーだ。

日印はシン前政権時代に毎年、首脳訪問を重ね、信頼関係を築いてきた。モディ氏来日を、協力拡大の出発点にしてもらいたい。

会談で安倍氏は、日印を「最も可能性を秘めた2国間関係」と表現し、モディ氏も「両国はアジアの将来に大きな責任がある」と応じた。安倍氏はインフラ支援として500億円の円借款供与を表明した。道路や発電施設などのインフラ整備は、日本を含む外国企業の誘致に不可欠だ。

安全保障分野では、モディ氏が「両国は関係を格上げするときが来ている」と述べていた。日本の武器輸出新ルールの防衛装備移転三原則について、両首脳は技術協力を新たな時代に導きたいと積極的に利用する姿勢を示した。

両首脳は外務・防衛の閣僚級協議(2プラス2)の創設検討でも合意し、インドが関心を持つ日本の救難飛行艇US2の輸出協議を加速することを確認した。

中国はインドの周辺国であるパキスタンやスリランカ、バングラデシュなどで港湾開発に協力し、インド洋での拠点づくりを着々と進めている。

日本にすれば、インド洋は中東原油を運ぶ重要な海上交通路(シーレーン)であり、中国の海洋進出をにらむとき、インドとの協力強化は欠かせない。

ただ、モディ政権は、中国主導の新興5カ国(BRICS)の開発銀行にインドから初代総裁を送り、中国が目指すアジアインフラ投資銀行設立に理解を示す。中国とも良好な関係の維持に努めている点は踏まえておくべきだ。

安倍氏は6日からバングラデシュ、スリランカを訪れ、その後、習近平中国国家主席がインド、スリランカなどを訪問する。南アジアでの首脳外交で安倍氏は後れを取らぬようにしてほしい。

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