中間貯蔵の受諾 復興の新たな一歩に

朝日新聞 2014年09月02日

中間貯蔵施設 「福島の問題」にするな

福島第一原発の事故で出た福島県内の汚染土などを保管する国の中間貯蔵施設の受け入れを同県と大熊、双葉の2町が決めた。政府は今後、用地取得に向け、地権者との交渉に入る。

福島県内では汚染土などの仮置き場が満杯に近づき、除染作業の遅れにもつながっている。中間貯蔵施設は、事故の後始末に不可欠なインフラだ。どこかが受け入れないと、福島の生活再建や復興にも響く恐れがあった。施設建設に向けて動き出したことをまず、評価したい。

しかし、これまでの経過を振り返ると、今後に向けて危惧も抱く。負担を特定地域にまかせきって事故処理、さらには原発を持つことの意味を国民全体で共有できるだろうか、と。

政府の最初の受け入れ要請から3年。政府は最終的に、住民の生活再建や県の復興対策に3千億円超の交付金を提示した。用地の買い取り価格も東京電力の賠償とは切り離して市場価格をもとに算定し、事故前との差額は県が相応分を支援する。

受け入れを求める以上、地権者や自治体に手厚く補償するのは当然だ。しかし、お金は人を分断する。「お金をもらっているのだから」と多くが特定地域の負担に目を向けない。被災地と被災地以外、福島県内の避難地区とそれ以外、さらには同じ町内でも金額の多寡で人々の間に複雑な感情をもたらした。原発をつくるときも、事故後、東京電力の賠償金をめぐっても、繰り返されたことだ。お金は万能の問題解決策ではない。

さらに政府は要請から半年後には事実上、2町に的を絞って交渉を進めた。2町は線量が高く帰還困難区域が大半を占める。汚染物を広げない意味で、線量が高いところで保管することに合理性があったとしても、問題を特定地域との交渉ごとに封じ込めることにならなかったか。

本来、原発の潜在的なリスクや後始末に伴う負担は国民全体が考えるべき問題だ。中間貯蔵施設を巡る住民説明会で「できれば東京に持っていってもらいたい」「電力消費地とで分かち合うべきだ」との声があがった。負担を受益と見合う公平なものにしようと考えれば、当然の発言である。

今後私たちは、老朽化した原発や使用済み核燃料の後始末でも、誰が負担を引き受けるのか、今回と同じ問題に向き合わざるをえない。

分断を伴う解決ではない、別の道筋を模索すること。中間貯蔵施設ができたとしても、挑戦すべき課題は残っている。

毎日新聞 2014年09月02日

中間貯蔵の受諾 復興の新たな一歩に

東京電力福島第1原発事故の除染で出た汚染土などを保管する中間貯蔵施設の建設が、具体化に向け大きく前進した。福島県の佐藤雄平知事と候補地の双葉、大熊両町長が受け入れを承諾し、政府に伝えた。

読売新聞 2014年09月02日

中間貯蔵施設 復興の加速へ課題はまだ多い

福島の除染の加速、ひいては復興の促進へ、一つのヤマを越えたが、課題はまだ多い。

福島県の佐藤雄平知事が、中間貯蔵施設の建設を受け入れる意向を政府に表明した。東京電力福島第一原子力発電所の事故で生じた汚染土などを一括して長期保管する施設だ。

除染作業ではぎ取った汚染土は、福島県内の5万か所以上に仮置きされ、滞留している。多くが、民家や学校などの敷地内に積まれたままの状態だ。除染を進めようにも、汚染土の置き場所の確保が困難になっている。

16平方キロ・メートルに及ぶ中間貯蔵施設は、東京ドーム約20杯分の汚染土を保管できる。除染を加速させる上で、不可欠な施設である。

復興の遅れへの不満が強い福島県内では、中間貯蔵施設の早期建設を求める声が高まっている。知事には、建設受け入れしか選択肢はなかったとも言える。

一方で、建設地となる大熊、双葉両町にとっては、迷惑施設であることは間違いない。福島第一原発を抱える両町では、放射線量が依然として高く、避難住民が帰還できるメドは立たない。

両町が建設を容認したのは、福島県全体の再建を考慮した苦渋の判断だったと言えよう。

中間貯蔵施設での保管期間は、最長30年間だが、地元には、永続的に貯蔵する最終処分場になるのではないかという懸念がある。政府は、30年以内に県外へ汚染土などを運び出し、最終処分することを関連法に明記する。

政府は、最終処分場の選定にも重い責任を負った。

先祖伝来の土地を手放したくないという住民も少なくない。政府は用地のすべてを国有化する方針を転換し、地権者に所有権を残したまま、貯蔵施設として利用する方式も採り入れることにした。

住民の生活再建や地域振興の支援策としては、中間貯蔵施設交付金や福島復興交付金など、新たに計3010億円を支給する。

一連の対応は、地元の要望に最大限に配慮したものだ。

3日の内閣改造を前に、政府には、現体制で建設に道筋をつけたいという思惑があった。ぎりぎりまでずれ込んだのは、政府側責任者である石原環境相が6月、「最後は金目でしょ」と発言し、協議を停滞させた影響が大きい。

政府は、来年1月の搬入開始を目指し、2000~3000人とされる地権者との交渉に入る。施設の重要性を丁寧に説明し、理解を得る必要がある。

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