福島の除染の加速、ひいては復興の促進へ、一つのヤマを越えたが、課題はまだ多い。
福島県の佐藤雄平知事が、中間貯蔵施設の建設を受け入れる意向を政府に表明した。東京電力福島第一原子力発電所の事故で生じた汚染土などを一括して長期保管する施設だ。
除染作業ではぎ取った汚染土は、福島県内の5万か所以上に仮置きされ、滞留している。多くが、民家や学校などの敷地内に積まれたままの状態だ。除染を進めようにも、汚染土の置き場所の確保が困難になっている。
16平方キロ・メートルに及ぶ中間貯蔵施設は、東京ドーム約20杯分の汚染土を保管できる。除染を加速させる上で、不可欠な施設である。
復興の遅れへの不満が強い福島県内では、中間貯蔵施設の早期建設を求める声が高まっている。知事には、建設受け入れしか選択肢はなかったとも言える。
一方で、建設地となる大熊、双葉両町にとっては、迷惑施設であることは間違いない。福島第一原発を抱える両町では、放射線量が依然として高く、避難住民が帰還できるメドは立たない。
両町が建設を容認したのは、福島県全体の再建を考慮した苦渋の判断だったと言えよう。
中間貯蔵施設での保管期間は、最長30年間だが、地元には、永続的に貯蔵する最終処分場になるのではないかという懸念がある。政府は、30年以内に県外へ汚染土などを運び出し、最終処分することを関連法に明記する。
政府は、最終処分場の選定にも重い責任を負った。
先祖伝来の土地を手放したくないという住民も少なくない。政府は用地のすべてを国有化する方針を転換し、地権者に所有権を残したまま、貯蔵施設として利用する方式も採り入れることにした。
住民の生活再建や地域振興の支援策としては、中間貯蔵施設交付金や福島復興交付金など、新たに計3010億円を支給する。
一連の対応は、地元の要望に最大限に配慮したものだ。
3日の内閣改造を前に、政府には、現体制で建設に道筋をつけたいという思惑があった。ぎりぎりまでずれ込んだのは、政府側責任者である石原環境相が6月、「最後は金目でしょ」と発言し、協議を停滞させた影響が大きい。
政府は、来年1月の搬入開始を目指し、2000~3000人とされる地権者との交渉に入る。施設の重要性を丁寧に説明し、理解を得る必要がある。
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