ロシアによるウクライナ東部への介入が深刻化している。
親ロシア派勢力に高性能の兵器を渡しているうえ、1千人を超す軍部隊を侵入させた。
米欧などでつくる北大西洋条約機構(NATO)が、その証拠として衛星写真を公開した。
この介入で、ウクライナ政府軍が優勢だった戦況は一変した。親ロ派の武装勢力による拠点の制圧が相次いでいる。
欧州連合(EU)の首脳会議は、ロシアの行為を「侵略」と非難した。軍の撤退を求めつつ、新たな制裁の準備を決めた。当然の対応である。
だが、プーチン大統領は国際社会からの警告に、ほとんど聞く耳を持たぬかのようだ。さらなる強硬姿勢に傾いている。
驚く発言があった。「ロシアは最も強力な核大国の一つだ。軍事紛争で我々にかかわらないほうがよい」とし、「核戦力を強化する」意向も示した。
米欧への対抗姿勢を意図しているようだが、核戦力に言及するとはもってのほかだ。核の削減と不拡散を求める国際社会の努力を踏みにじるような暴言であり、遺憾というほかない。
またプーチン氏は、ウクライナ東部に「国家機構」の設立を検討する必要がある、との考えも示した。これも論外だ。
東部の安定化のために高い自治権を与える「連邦制」は語られてきたが、それでは飽き足らず、事実上独立させようというもくろみかもしれない。
軍事介入で国の基本的なあり方を隣国に押しつけるようなことが、許されるはずもない。
EU首脳会議は、ロシアが行動を変えなければ、1週間をめどに新たな制裁を科す方針だ。米国も同じ方向にある。今週開かれるNATO首脳会議も、ロシアの行動を欧州の新たな脅威と見て対応を協議する。
米欧の制裁に反発してロシアは、農産物の輸入を禁じた。そのためEUなどは多大な経済的損失を被っている。
だが、いまのロシアの振る舞いは、主権の尊重と領土保全という、戦後秩序の原則への挑戦である。国際社会は、そうした暴挙をやめさせるよう、決然と行動せねばならない。
紛争の平和的解決を国是に掲げる日本にとっても、看過できない事態である。
こうした不法ぶりに目をつぶれば、ソ連が力ずくで占拠した北方領土の返還を求める主張も、説得力を失う。
日本政府は、主要7カ国(G7)の枠内でしっかり足並みをそろえ、より厳しい制裁を考えるべき時である。
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