国の借金が1000兆円超という厳しい財政事情を踏まえ、歳出の膨張に歯止めをかけなければならない。
2015年度予算の概算要求総額が、初めて100兆円を超えた。14年度当初予算の96兆円を大きく上回る規模である。
20年度までに国と地方の基礎的財政収支を黒字化する政府の目標は、消費増税などを見込んでも達成が難しい状況だ。財務省には、より厳しい査定が求められる。
政府は、公共事業などの「裁量的経費」の要求上限を、14年度予算より10%低い水準に抑えるルールを設けた。
一方で、成長戦略の推進など安倍政権の優先課題に重点配分するために設けた4兆円の特別枠に、上限いっぱいの要求が集まり、総額は膨らんだ。
特別枠には、地方活性化などを名目とした道路建設など、旧来型の要求も目立つ。思い切った絞り込みが求められる。
別々の府省から類似の施策が要求されるケースもある。総務省と国土交通省はそれぞれ、商業施設や病院などを集約する地方の拠点都市を設ける事業を要求した。
財務省は査定を通じ、各府省や特定の政策課題のために置かれた本部などに調整を求め、重複の解消を図る必要がある。
特別枠には、効果に疑問のある施策も紛れ込んでいるようだ。
厚生労働省は女性の活用計画を立てた企業に20万円程度の助成金を支給する制度の創設を求めた。広く薄くお金をばらまく仕組みでどんな効果があるのだろうか。
概算要求を分野別に見ると、公共事業の大幅な伸びが目立つ。
むろん、老朽化した道路や橋の改修、地震・津波や土砂災害に備える防災対策など、国民の命や財産を守る投資は大事だ。
ただ、人手不足による人件費の上昇や資材費の高騰のあおりを受け、公共事業のコストが増大している。不要不急の事業を大胆に削減する「選択と集中」の重要性は一段と高まっている。
社会保障費の拡大にもブレーキがかからない。厚労省の要求額は高齢化などによる1兆円近い自然増を含め約32兆円に上った。
歳出の3分の1に迫る社会保障費を抑制できるかどうかが、財政健全化のカギを握る。
割安な後発医薬品の利用拡大など地道な取り組みに加えて、医療や年金の給付削減など、痛みを伴う大胆な改革も避けられまい。社会保障制度改革推進会議などの議論を加速すべきだ。
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