概算要求 「選択と集中」で歳出の抑制を

毎日新聞 2014年08月30日

概算要求101兆円 「水膨れ」にあきれ返る

各省庁が2015年度予算の概算要求を財務省に提出した。一般会計予算の要求総額は14年度の要求額約99兆円を大きく上回り、過去最大の101兆円台となった。政府は成長戦略や骨太の方針、地方創生といった重点政策を実現するため、概算要求基準で4兆円の特別枠を設けた。この枠で定められた各省庁の上限まで要求を膨らませたことが大きい。

読売新聞 2014年08月30日

概算要求 「選択と集中」で歳出の抑制を

国の借金が1000兆円超という厳しい財政事情を踏まえ、歳出の膨張に歯止めをかけなければならない。

2015年度予算の概算要求総額が、初めて100兆円を超えた。14年度当初予算の96兆円を大きく上回る規模である。

20年度までに国と地方の基礎的財政収支を黒字化する政府の目標は、消費増税などを見込んでも達成が難しい状況だ。財務省には、より厳しい査定が求められる。

政府は、公共事業などの「裁量的経費」の要求上限を、14年度予算より10%低い水準に抑えるルールを設けた。

一方で、成長戦略の推進など安倍政権の優先課題に重点配分するために設けた4兆円の特別枠に、上限いっぱいの要求が集まり、総額は膨らんだ。

特別枠には、地方活性化などを名目とした道路建設など、旧来型の要求も目立つ。思い切った絞り込みが求められる。

別々の府省から類似の施策が要求されるケースもある。総務省と国土交通省はそれぞれ、商業施設や病院などを集約する地方の拠点都市を設ける事業を要求した。

財務省は査定を通じ、各府省や特定の政策課題のために置かれた本部などに調整を求め、重複の解消を図る必要がある。

特別枠には、効果に疑問のある施策も紛れ込んでいるようだ。

厚生労働省は女性の活用計画を立てた企業に20万円程度の助成金を支給する制度の創設を求めた。広く薄くお金をばらまく仕組みでどんな効果があるのだろうか。

概算要求を分野別に見ると、公共事業の大幅な伸びが目立つ。

むろん、老朽化した道路や橋の改修、地震・津波や土砂災害に備える防災対策など、国民の命や財産を守る投資は大事だ。

ただ、人手不足による人件費の上昇や資材費の高騰のあおりを受け、公共事業のコストが増大している。不要不急の事業を大胆に削減する「選択と集中」の重要性は一段と高まっている。

社会保障費の拡大にもブレーキがかからない。厚労省の要求額は高齢化などによる1兆円近い自然増を含め約32兆円に上った。

歳出の3分の1に迫る社会保障費を抑制できるかどうかが、財政健全化のカギを握る。

割安な後発医薬品の利用拡大など地道な取り組みに加えて、医療や年金の給付削減など、痛みを伴う大胆な改革も避けられまい。社会保障制度改革推進会議などの議論を加速すべきだ。

産経新聞 2014年08月31日

概算要求 放漫許さぬ覚悟をみせよ

平成27年度予算編成に向けた各省庁の概算要求が、101兆円台に達した。社会保障関係費や公共事業費などが軒並み増加し、過去最大規模に膨らんだ。

27年度予算は、経済再生の動きを確かなものとし、人口減少社会に備えた安定的な発展につなげる布石にしなければならない。成長に資する施策に手厚く配分すべきなのは当然だ。

だからといって、野放図にお金をばらまく放漫は許されない。このままでは税収増頼みで予算を肥大化させた26年度と同じ轍(てつ)を踏むのでは、と心配になる。

今後の査定作業には、徹底した要求の絞り込みを求めたい。社会保障を含めて聖域を設けず、政策効果や優先順位を厳格に見極めることが肝要である。

何よりも重要なのは、経済再生と財政健全化の両立を果たす安倍晋三首相の覚悟と指導力だ。

来春の統一地方選をにらみ、予算獲得を競う政治からの圧力は確実に高まるだろう。これが省益を優先する官僚の思惑と結びつき、いたずらに予算を膨らませる愚は避けねばならない。歯止めをかけるのは首相の責務である。

要求総額が膨らんだのは、7月末に決まった概算要求基準で歳出総額の上限を決めなかったためである。基準では、成長戦略や地方創生につながる事業を既存経費に上乗せできる4兆円規模の特別枠を設けた。ここに各省庁は目いっぱいの要求を出してきた。

足元の経済は消費税増税後の消費回復が遅れ気味で、少し前までの勢いはない。再び景気に力強さを取り戻すためにも、特別枠を有効活用することは大切だ。

だが中身をみると、省庁ごとに似たような事業を要求する重複が目立つ。「成長」「地方」という名目で旧来型の経費をもぐりこませることに意味はない。省庁間で調整し、真に必要な事業に重点配分してほしい。

年末には消費税率を10%に上げるかどうかの判断が控える。気がかりなのは増税による税収増を見越し、財政規律が緩むことだ。

27年度は、国と地方の基礎的財政収支の赤字を22年度から半減させる目標年度でもある。今のところ達成が見込まれているが、楽観は禁物だ。32年度の黒字化目標は、まったく実現が見通せていない。これまで以上に、財政への目配りが必要となる。

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