ハイチPKO 復興に日本の経験を

朝日新聞 2010年01月27日

ハイチPKO 長丁場の支援の始まり

大地震で壊滅的被害を受けたハイチの国連平和維持活動(PKO)に、政府は自衛隊を派遣する方針を決めた。

人道復興支援が目的で、陸上自衛隊の施設部隊を中心に約300人を派遣する計画だ。震災の前から展開している国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)に参加する。

15万人以上の遺体を埋葬した。200万人が家を失った。現地から伝えられる被害は想像を絶する。発生から2週間近くたっても、食糧も行き届いていない地域が残っているようだ。テントやシートも足りず、路上生活を続けている被災者が50万人もいるという。

発生直後の緊急支援では、日本が出遅れた感もあった。だが、復興支援はこれからが本番だ。

鳩山首相は「がれきを撤去して、住宅を建てる仕事がある」と述べた。復旧・復興に人手はいくらあっても足りない。派遣部隊には被災民キャンプの建設などの役割が予想される。早く実施計画を立てて、現地入りしてほしい。

ハイチの国連PKOは、混乱した政情の安定と民主化が、本来の目的だった。現地警察が機能していなかったので、国連部隊は身代金目的の誘拐を繰り返すスラム街のギャングの取り締まりまで担当していた。

地震で国連PKO本部も倒壊して、要員に多数の犠牲者を出した。それでもPKO部隊は、現地入りした各国部隊と協力して捜索や救援、治安の確保などにあたってきた。ブラジルなど中南米諸国が主力で、軍人約7千人、警官約2千人、文民も含めて1万人以上のマンパワーは貴重だ。

国連安全保障理事会は、今後の救援活動に不可欠として、軍人2千人、警官1500人の増派を決めた。自衛隊の派遣は、それにこたえるものだ。

自衛隊が初めて国連PKOに参加したのは、1992年のカンボジアだった。だが、部隊規模の参加は、2004年までの東ティモールで途絶えていた。日本からのPKO参加は現在、中東のゴラン高原などの39人にすぎず、世界で85番目。いかにも少ない。

日本には参加にあたって「受け入れ国の同意」などの5原則がある。今回もその枠内の活動となるが、武力紛争への対応とは次元が異なる。武器の使用にしっかりした歯止めは必要だが、治安が悪いことを理由に活動を渋っていては、人道支援はできない。NGOなど民間の援助は先行している。現地の状況が許すならば、警察官や文民の派遣も考えて良いのではないか。

人口の半数が貧困層という国の再建には、長期にわたる国際支援が必要になる。PKO参加はその最初の一歩に過ぎない。日本は約7千万ドル(約63億円)の拠出を表明した。地震国ならではの支援を目指していきたい。

毎日新聞 2010年01月27日

ハイチPKO 復興に日本の経験を

政府は、ハイチ大地震の復興支援のために、国連平和維持活動(PKO)協力法に基づく陸上自衛隊約300人の派遣と、7000万ドル(約63億円)の無償資金拠出を決めた。PKOでの自衛隊派遣は、カンボジア(92年)、東ティモール(02~04年)に次ぐ大規模なものとなる。

国連安保理の国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)への増派決議を受けた措置だ。派遣される施設部隊は、がれき撤去や道路補修などインフラの復旧活動に当たる。活動内容は日本が得意とする人道復興である。今回の政府の決定を歓迎する。部隊には、安全対策に留意しつつ活動に全力を挙げてもらいたい。

ハイチは、20世紀後半から独裁政権の悪政や軍事クーデター、武力衝突が相次ぎ、西半球の最貧国に転落した。政府に十分な統治能力はなく、04年から展開するMINUSTAHが治安維持などを支えてきた。

今回の大地震は首都や周辺地域に壊滅的被害をもたらした。大統領宮殿をはじめ政府庁舎は大部分が倒壊して行政機能がまひし、被災者救助や食料供給なども米国をはじめ海外からの支援頼みとなった。被災者は約300万人と推定され、15万人以上の遺体を収容、数十万人が路上生活を続けている。水や食料、医療など基本的な生存条件も十分に確保されず、国際支援が必須である。

同国では地震前から反政府デモが頻発し、地震後には一層の治安悪化が伝えられる。しかし、鳩山政権は、武力紛争には当たらず、停戦合意などを条件とする「PKO参加5原則」には反しないと判断した。

日本のPKO要員は現在、中東のゴラン高原など3地域で計39人に過ぎず、国連加盟国中85番目にとどまっている。民主党内には国連中心の国際貢献活動参加に積極的な意見が強い。鳩山政権が自衛隊派遣を即決したのは、こうした事情に加え、インド洋からの自衛隊撤収という事態を踏まえて、人的貢献を国際的に印象づける狙いがあったのだろう。

また、米国は、裏庭とみなすカリブ海に位置する旧占領国ハイチと深い関係を持つ。同国の復興に積極関与することが、普天間移設問題などでぎくしゃくする日米関係改善への一助になるという考えもあるとみられる。

復興支援について、関係国閣僚級会合では、少なくとも10年間の関与が必要だという認識が示された。政府機能も不十分な実情を勘案すれば、建国にも似た作業が必要になりそうだ。ワルストロム国連事務総長特別代表(防災担当)は、日本に期待する支援として耐震技術提供や災害復興の経験伝授などを挙げた。地震国・日本の特徴を生かした長期的視野に立つ支援が求められている。

読売新聞 2010年01月26日

ハイチ大地震 復興には長期的支援が必要だ

カリブ海の小国ハイチを襲った大地震から2週間になる。

死者は15万人に上るという。300万人が被災し、50万人が路上生活を強いられている。

インド洋沿岸国に大きな津波を引き起こし死者28万人以上を出したスマトラ沖地震(2004年)や、10万5000人がなくなった関東大震災(1923年)にも匹敵する大災害だ。

首都ポルトープランスでは、大統領官邸、国会議事堂、裁判所など主要な建物が倒壊した。国家機能がマヒし、半ば無政府状態となったハイチを、国際社会全体で再建していかなければならない。

日本政府は、自衛隊の医療チームを含め国際緊急援助隊を現地に派遣した。日本の民間活動団体(NGO)も活動中だ。さらに、ハイチの国連平和維持活動(PKO)へ、陸上自衛隊の施設大隊を派遣する準備に入った。

現地では、物流・配給、通信網の整備、治安確保などなすべき課題が多い。国連や各国と協力し、支援を効率的に進めてほしい。

ハイチは、人口960万人の半数が、1日1ドル(約90円)以下の生活費で暮らす最貧国だ。

慢性的な貧困のもと、政情はなかなか安定しない。2年前には、食料品価格の高騰が原因で暴動が起き、首相が更迭された。毎年のように襲来するハリケーンも大きな被害をもたらしている。

今回の大地震は、こうした窮状に追い打ちをかけるものだ。

国際社会は、地震被害への援助だけでなく、ハイチが自立化できるよう、中長期的観点に立った開発援助を行う必要がある。

中心的役割を担う国連も大きな被害を受けた。6年前から駐留しているPKO部隊は、トップの国連事務総長特別代表ら70人が死亡、約150人が行方不明だ。

痛ましい犠牲だが、現地では、これまで以上に治安維持の必要性が高まっている。国連安全保障理事会は3500人の増強を決定した。引き続き、復興へ向けて責任を果たさなければならない。

米国は、空母や病院船、兵力1万人以上を急派した。ハイチの不安定化を何としても阻止する構えだ。十数年前、数万人のハイチ難民が船で押し寄せてきた混乱の再現は避けたいのだろう。

PKO派遣の警官8人が死亡した中国は、救助隊派遣など迅速に対応した。国際平和協力活動に貢献する姿勢を誇示した形だ。

日本も、腰を据えてハイチ復興支援に取り組む必要がある。

産経新聞 2010年01月27日

陸自ハイチ派遣 PKO協力の次を考えよ

ハイチ大地震の人道復興支援として、政府が陸上自衛隊約300人を現地で国連平和維持活動(PKO)にあたる国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)に派遣する方針を決定した。

自衛隊のPKO派遣は1992年のカンボジア以降、7回を数える。汗を流す日本の国際貢献を示す意義は大きい。

ハイチでは死者がすでに15万人にも達し、「史上最も困難な人道危機」になる懸念がある。今回派遣される陸自施設部隊は、がれきの除去や道路補修など復興への本格的な支援を行う。阪神・淡路大震災の際の出動などで蓄積した経験が活用できると期待したい。

ハイチへの緊急支援には各国・機関などから約5億724万ドル(21日現在)が集まった。日本は当初全体の1・1%にあたる532万ドルしか拠出せず、32%超の米国はもちろん、英独仏などよりもはるかに少なかった。

国連幹部は「日本の経済規模や国連予算への分担率からいって少なすぎる」と苦言を呈した。陸自の派遣決定と同時に改めて拠出を表明した7000万ドルは妥当な額ではないか。

陸自の派遣は、MINUSTAHに3500人を増派する国連安保理の決議を受けてすんなり決まった。民主党が元来国連PKOには積極的なことが背景にある。

派遣の根拠法となるPKO協力法には(1)停戦合意(2)紛争当事者の参加同意(3)武器使用は要員の生命保護など必要最小限−などの「参加5原則」がある。反政府勢力との衝突が続くハイチ情勢だが、平野博文官房長官は「5原則は満たす」とし、武力紛争ではなく治安の悪化とみる判断を示した。

民主党は昨年の衆院選の際の政権公約に「PKOに参加して役割を果たす」と掲げた。岡田克也外相もPKO協力法の5原則について講演などで「憲法の枠内という前提で見直してはどうか」と、国連PKOへの自衛隊の参加促進に前向きな姿勢をみせている。

民主党は野党時代に政府の新テロ対策特別措置法案の対案を参院に提出したことがあった。アフガニスタンの人道復興支援に限り自衛隊を派遣する内容だった。

テロが続くアフガンへの支援は日本の国益にとって死活的に重要だ。PKO協力の次には、あらゆる事態に対応できる自衛隊派遣のための恒久法を制定すべきではなかろうか。

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