ガザ停戦合意 楽観できぬ和平実現への道

毎日新聞 2014年08月29日

ガザ停戦合意 国際協力で和平実現を

めでたさより先行き不安を覚える停戦合意ではないか。先月8日から約50日にわたって戦闘を続けたイスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスが無期限停戦に合意した。流血がやむのは喜ばしいが、情勢は極めて不安定だ。しっかりした和平につなげるには、仲介したエジプトはもとより米オバマ政権の積極的な関与や支援が欠かせない。

読売新聞 2014年08月29日

ガザ停戦合意 楽観できぬ和平実現への道

恒久的停戦を実現し、和平への道を探らなければならない。

パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム主義組織ハマスとイスラエルが、50日の戦闘の末、ようやく無期限の停戦に合意した。

ガザ地区の死者は2100人を超え、その大半が女性や子供など一般市民だった。双方は、停戦維持を最優先すべきである。

7月上旬の戦闘開始以来、エジプトの仲介による時限付きの停戦が何度か発効したが、いずれも長続きしなかった。

無期限停戦が成立したのは、イスラエルによって軍事部門の幹部3人を暗殺されたハマスが、危機感を強めたためだ。イスラエルにも、犠牲者の増加でネタニヤフ政権の支持率が急落し、早期収拾を迫られていた事情がある。

今回の合意を受け、イスラエルは、2007年のハマスによるガザ制圧以来続けてきた経済封鎖を緩和した。人道支援物資や、復旧に必要な建築資材の搬入なども認められることになった。

国連の世界食糧計画(WFP)は食糧援助を開始している。

ただ、復旧への道は険しい。

ガザは、前例のない規模で破壊された。失業率が50%に達するなど経済も破綻状態で、60億ドルと見込まれる復旧費用を自力で調達するのは困難だ。国際社会による支援が課題となろう。

欧米やエジプトには、イスラエル打倒を掲げるハマスに多額の援助をすると、戦力増強に転用されかねないと懸念する声がある。

実際にハマスは、イスラエルとの衝突が一段落する度に、ロケット弾などの武器を補充し、攻撃を再開してきた。

国際的な支援の枠組みを作るには、ハマスと暫定統一政府を組むパレスチナ自治政府が支援の窓口となり、援助物資や資金の流れの透明性を確保することが欠かせまい。アッバス自治政府議長の政治的指導力が試される。

一方、恒久的な停戦に向けた協議は、エジプトを仲介役とした間接交渉の形で、1か月以内に始められることになった。着実な交渉開始が和平への第一歩となる。

イスラエルは自国の安全保障を、ハマスはガザ封鎖の完全解除やパレスチナ囚人釈放などを要求している。いずれも、双方が鋭く対立してきた懸案である。交渉の行方は楽観を許さない。

仲介役のエジプトや、イスラエルへの影響力を持つ米国を中心に、国際社会が歩み寄りを促す努力を続けることが重要だ。

産経新聞 2014年08月29日

ガザ停戦 恒久和平への機会逃すな

血みどろの戦闘を7週間にわたって繰り広げてきたイスラエルと、パレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム原理主義組織ハマスが、無期限の停戦で合意した。

ハマスのロケット弾攻撃に対し、イスラエルが空爆、次いで地上侵攻に突入し、ガザ地区では2006年以降の大規模な戦闘で最多の2100人余の犠牲者が出ている。

黒煙と流血の惨事をこれ以上繰り返してはならない。双方が合意を順守し、恒久停戦に向けた抜本策を見いだしてもらいたい。

エジプト仲介の合意は、イスラエルがハマスに対する経済封鎖の緩和による人道物資や復興資材の搬入などを認めている。だが、イスラエルが主張するガザの非武装化、ハマスが唱える封鎖解除といった対立の核心部分には踏み込まず、戦闘停止と1カ月以内の間接交渉の再開を求めている。

ケリー米国務長官は合意を歓迎しつつ、「(無期限停戦の)確定ではない」との見通しを示した。交渉の本番はこれからで、前途は厳しいと見るべきだろう。

中東民主化への胎動だった「アラブの春」が原理主義的な過激派の台頭を招く中で、警戒感を強めるアラブ諸国は同じ原理主義のハマスに同調しなくなっている。

今回、流血拡大の責任はこうした情勢変化を背に、過剰な武力を行使したイスラエルはもちろん、多数の民間人の巻き添えを意に介さず絶望的な攻撃に出たハマスにもある。国連安保理も米国、周辺諸国も早期停戦へ有効な手立てを打てなかったことも問題だ。

停戦合意を受けて、国際社会は双方に一段と強い圧力をかけ、戦闘の自制を求める一方、歩み寄りを促さなければならない。

イスラエルが武器流入を警戒して敷く封鎖と、ハマスが拒否する非武装化という今後の交渉の焦点については、間を取った形での妥協点を探らなければならない。

イスラエル軍の攻撃で家を失ったガザの避難民約47万5千人の生活基盤の再建や、封鎖の緩和拡大を前提にガザ経済の立て直しを進めることで、ハマスの軟化を誘う必要もあろう。

中東は今、イスラム教スンニ派の原理主義過激組織「イスラム国」の勢力拡大という世界的な脅威をはじめ、さまざまな危機に揺れている。ガザの恒久停戦を実現し、危機を一つでも鎮めたい。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1929/