理研の改革 研究風土の健全化を急げ

毎日新聞 2014年08月29日

理研の改革計画 トップの責任どうした

これで組織を再生することができるのか、疑問を抱かざるを得ない。

産経新聞 2014年08月29日

理研の改革 研究風土の健全化を急げ

STAP論文の不正問題をめぐり、理化学研究所は研究不正の再発防止に向けた改革計画を発表した。

科学技術は日本の生命線である。理研の改革を健全な研究風土を築く契機としたい。

問題が起きた発生・再生科学総合研究センター(神戸市)は規模を半分程度に縮小し、幹部を一新して名称も変える。

新センターに外部有識者を交えた運営会議を設けるほか、理研本体に新設する経営戦略会議にも外部の目を取り入れるという。

理研に対しては、外部有識者から成る改革委員会が6月に同センターの解体を含む厳しい提言をまとめていた。センターは存続させるが、提言をほぼ受け入れた内容といえる。理研が「解体的な出直し」の方向性を示したことは一定の評価ができる。

STAP問題が日本の科学研究全体に及ぼした負の影響は、あまりにも大きい。理研は「研究不正を誘発した構造的欠陥」の解消に真摯(しんし)に取り組み、日本を代表する研究機関としての信頼を新たに確立しなければならない。

その意味で、センターの改称は考え直すべきだ。組織名の変更にはあしき前例がある。

高速増殖原型炉「もんじゅ」事故を起こした旧動燃(動力炉・核燃料開発事業団)などがその例で、不祥事の度に組織の再編、改称を繰り返した。改称は一時的に出直しの機運を高めるだろうが、長期的には過去の教訓が忘れ去られるデメリットの方が大きい。

改革の意思を持続させるためには、STAP問題の責任を負い続ける覚悟も必要だ。発生・再生科学の国際研究拠点としても現行の名称がふさわしい。

外部有識者の改革委は、STAP問題の背景の一つとして「成果主義の負の側面」を挙げた。

競争原理は科学の発展には不可欠な推進力だが、短期的な成果にとらわれ過ぎると、倫理観の喪失や研究不正の引き金になり、研究の多様性も損なわれる。

競争原理と科学の健全性を両立させることは、科学界全体の大きな課題である。理研以外の研究機関や大学にも、過度の成果主義に根ざした研究不正の芽が潜んでいるはずだ。理研の改革を傍観するのではなく、他の研究機関や大学も問題点を洗い出し、改革に取り組むべきである。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1928/