戦後70年に向けた「河野談話」の事実上の見直し要請である。
自民党政務調査会は、いわゆる従軍慰安婦問題に関する新たな内閣官房長官談話の発表を求める申し入れ書を、菅官房長官に提出した。
第2次大戦中に日本軍が多くの慰安婦を「性奴隷」として強制連行したとの誤解が、国際社会に広がっている。その要因の一つが河野談話である。
菅氏は新談話に消極的だというが、自民党の要請を重く受け止め、前向きに検討すべきだ。
河野談話は、宮沢内閣時代の1993年に元慰安婦へのおわびと反省の意を表したものだ。慰安婦募集について「官憲等が直接これに加担したこともあった」と、軍などによる強制連行があったかのように記している。
しかし、強制連行を裏付ける資料は確認されていない。
有識者による政府の検討会は6月、河野談話の作成過程に関する報告書をまとめた。韓国側が「韓国国民から評価を受け得るものでなければならない」と修正を求めるなど、日韓両政府が表現を調整した実態が明らかになった。
これを踏まえ、申し入れ書は、「検証作業を経ずに『政治的すり合わせの産物』としての談話を世界に発出した」と批判した。「当時の自民党政権の責任は重い」と指摘したのは、もっともだ。
申し入れ書は、「事実に基づかない虚偽を繰り返し喧伝し、日韓関係を悪化させた」として、「一部報道機関」の記事を問題視した。朝日新聞の慰安婦報道を指したものだろう。
朝日新聞は、82年以降、韓国・済州島で戦時中に多くの慰安婦を「狩り出した」などとする吉田清治氏の虚偽の証言を、繰り返し記事にした。
今月5日の紙面で、ようやく吉田証言に関する記事を取り消したものの、一連の報道が韓国の反日世論をかき立て、河野談話の伏線となったことは間違いない。
安倍首相は、河野談話を継承する方針を明らかにしている。日韓関係のこれ以上の悪化などを憂慮しての大局的判断なのだろう。
だが、戦後70年と日韓国交正常化50年の節目となる来年に向け、新談話の発表は、国内外に正しい歴史を伝える上で意義がある。
強制連行はなかったにせよ、戦時中に多数の女性の名誉と尊厳が傷つけられたことも事実だ。
自民党が提言しているように、史実に基づいた慰安婦問題の情報を世界に発信していきたい。
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