全国学力テスト 適度な競争が好結果を生んだ

朝日新聞 2014年08月27日

全国学力調査 順位より分析に目を

慎重な判断を支持したい。

全国学力調査の結果が公表された。今年度から自治体の判断で、学校ごとの成績を公表することもできるようになった。だが、公表を予定する市区町村は今のところ少ないようだ。

1年目だけに、様子を見た市町村も多いのかもしれない。ただ、成績がよくなかった学校にレッテルが貼られることは避けたい。そういう配慮が働いたことも確かだろう。

学力調査は、テストを行うだけではない。参加した小中学生と学校からアンケートも取り、どんな授業方法や生活習慣が学力を高めることに役に立つかを分析している。

点数や順位より、この分析を読んで行政や学校が政策や教え方の改善に生かすことの方が、ずっと大事だ。

なかでも、総合学習にきちんと取り組んでいる子や学校は国語や算数・数学の成績も良い、という点は注目されていい。

総合学習は、たとえば地理と化学で学んだことを使って環境問題を考えるような、教科横断型の学習だ。今の学習指導要領では学力低下批判をうけて主要教科の時間を増やすため、かわりに授業時間数を削られた。

批判の一因は国際学力調査PISAでの日本の順位低下だった。しかし、PISAは本来、教科横断型の学力を理想とするテストだ。文部科学省の中央教育審議会での大学入試改革論議も、同じ方向を向いている。

それは、知識よりも実社会で使える学力が世界的に求められているからだ。これからはむしろ総合学習のような学びが重みを増すに違いない。

次の指導要領で総合学習をどう位置づけるか。調査を参考に、意義を見直すべきだ。

保護者にとっても、参考になる項目はいろいろある。

調査から全体的に読み取れるのは、学ぶ動機づけや、社会に関心をもつことの大切さだ。

ニュースをよく見ている子、学校行事に対する関心が高い家庭の子は、学力が高い傾向があるという。机で勉強するだけが勉強ではない。そう実感させられる。

都道府県別の成績をみると、大半の都道府県が小さな点差の幅に収まっている。これまで下位だった県が、先生の授業研究や研修を増やしたり、上位の県のやり方に学んだり、努力してきた成果でもあろう。

どの地方に住んでも同じ水準の公教育を受けられる。日本の強みは健在といえる。わずかな点差に一喜一憂するより、地道な授業改善に役立ててほしい。

毎日新聞 2014年08月26日

学力テスト 「底上げ」を生かすには

今年度の全国学力テスト結果が公表された。文部科学省は全体的に成績の「底上げ」が見られるという。「順位」にとらわれず、柔軟な応用力につながるよう期待したい。

読売新聞 2014年08月26日

全国学力テスト 適度な競争が好結果を生んだ

成績の振るわなかった地域で、学力の向上が目立った。全国学力テストの成果の表れだろう。

文部科学省が4月に実施した全国学力テストの結果を公表した。

全国学力テストは、小学6年生と中学3年生の全員を対象に、国語と算数・数学の基礎的な知識と応用力を測るため、2007年度から実施されている。

民主党政権時代には、10年度と12年度に約3割の小中学校を抽出して行われたが、昨年度からは全員参加方式に戻った。

今回、成績アップが目立ったのは、沖縄県の小6だ。全国最下位の科目がなくなり、算数の基礎問題ではトップ10に入った。

昨年度、小6国語の基礎問題で最下位だった静岡県も、ほぼ全国平均に回復した。

こうした自治体では、児童生徒に、自分の考えを文章にまとめさせる授業に力を入れている。指導力向上のための研修会に参加する教師も増加した。

成績上位の秋田県や福井県などの教師との交流を通じて、指導方法を学ぶ試みも進んでいる。

文科省は、指導改善の取り組みが、学力の底上げにつながっていると分析している。全員参加の全国学力テストが、適度な競い合いを生み出した結果と言えよう。

ただ、小6、中3とも、図形の証明や、書き手の意図を文章で表現するような応用問題を苦手とする傾向が続いている。

今回のテスト結果を基に、文科省が来月配布する授業のアイデア例などを参考に、指導力の一層の向上を図ってもらいたい。

全国学力テストについては、今回から、自治体の教育委員会が学校別成績を公表することが認められるようになった。

文科省は学校の序列化や過度な競争を招かないようにするため、平均正答率などの数値だけでなく、分析結果や改善方法を併せて公表するよう求めている。

日教組は数値を示せば、序列化は避けられず、子供に過度なストレスを与えると反対するが、果たして、そうだろうか。

子供たちはどのようなところで学習につまずいているのか。学力アップには、どのような対策が必要なのか。テスト結果から、教師と保護者が共通の認識を持つことで、学校教育に対する保護者の理解が進むはずだ。

大半の教委はまだ、学校別成績の公表には及び腰だという。文科省は、公表のメリットを周知していく必要がある。

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