「イスラム国」 テロ拡散阻む国際連携を

朝日新聞 2014年08月24日

イラク新政権 「最後の機会」の覚悟で

崩壊の危機にひんしたこの国に、一筋の光がようやく差してきた。イラクでアバディ国民議会副議長が首相に指名された。情勢はなお混沌(こんとん)としているが、新政権への準備が始まる。

イスラム教シーア派、スンニ派、クルド人の三つに分裂しかかっている国内をまとめ、挙国一致の態勢を築けるか。それがこれからのかぎになる。

国家の分裂は、民族や宗派間の大規模な虐殺や避難民の発生を招きかねない。中東全体の混乱につながる恐れもある。新首相が担う責務は大きい。

国内の各勢力も小異にこだわることなく、国家再建に向けて力を合わせてほしい。

8年間にわたって政権を担ってきたマリキ前首相は、自らのシーア派に偏った人事を進め、軍や行政の重要ポストから他派を排除した。不満を強めたスンニ派部族は、過激派「イスラム国」への支持に走り、クルド人は独立志向を強めた。

議会の最大会派であるシーア派連合が、マリキ氏の下にいたアバディ国民議会副議長をあえて首相候補に選んだのも、イラクが統一国家として生まれ変わるうえでマリキ氏の退任が不可欠と判断したからだ。政権を手放そうとしなかったマリキ氏は結局辞任に追い込まれた。

アバディ氏はバグダッド出身のシーア派で、イラク戦争後に亡命先の英国から帰国した。調整型の実務家だ。欧米との交渉に手慣れている一方で、地元社会での基盤は薄く、軍や行政機関をどれほど掌握できるかわからない。

何より急がれるのは、軍や警察から排除されてきたスンニ派を統治システムに取り込み、国家の建設に参加させることだ。

手間と時間がかかる作業で、難航が予想される。しかし、イラクが国家としての枠組みを保つには、欠かせない営みだ。

近隣諸国との関係改善も望まれる。そのためには、米国、国連のほか、イランやトルコなどの周辺国が、自らの利益に固執することなく、新首相を支える必要がある。

日本はこの地域への直接のかかわりは薄いが、そのぶん調整役として適任ともいえる。積極的な貢献への道を探りたい。

イラクがこのような状況に追い込まれたのは、マリキ氏ひとりのせいではない。国内各派がそれぞれ党利党略を追い求めた結果である。

過激派が伸長し、宗派間の溝が深まるいま、対応に猶予はない。イラクの政治家たちには、今回が最後のチャンスかも知れないとの自覚を促したい。

読売新聞 2014年08月27日

「イスラム国」 凶暴な武装集団の跳梁許すな

凶悪な武装集団の掃討に向け、国際社会はあらゆる手を打つべきだ。

イスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国」のイラク、シリアでの勢力拡大が止まらない。シリア北部で、アサド政権軍を空軍基地から撤退させ、北部最大の都市アレッポ攻略も視野に入れたという。

「イスラム国」は、油田の強奪や誘拐などで不当に得た資金で戦闘能力を高める一方、巧みな宣伝活動で、過激思想に染まった戦闘員を世界中から集めている。勢力は約1万5000人に達したとの見方もある。

支配地域では、虐殺や性的暴行を繰り返している。約2年前にシリアで消息を絶った米国人男性を処刑し、その模様をネットで流した。日本人男性も拉致され、安否が心配されている。

残虐極まりない組織の跳梁ちょうりょうをこれ以上許さないことは、国際社会にとって喫緊の課題と言える。

米国は8月上旬から、イラク国内に限定して「イスラム国」への空爆を実施し、一定の効果を上げた。しかし、国境をまたいで勢力圏を広げる「イスラム国」は、シリア側に活動の重点を移し、米国人の犠牲者も出た。

米国は、自国民を守ることを空爆の目的に掲げており、シリア側での空爆も選択肢に入った。

シリアのアサド政権は、米国が事前調整の手続きを取ることを前提に、空爆を容認する構えだ。

だが、米国にとっては、空爆が対立するアサド政権の存続を利するジレンマがある。オバマ大統領は難しい判断を迫られよう。

欧米各国は、「イスラム国」と戦っているシリア反体制派武装組織「自由シリア軍」とイラクのクルド人部隊に武器を供与する方針だ。敵対勢力にてこ入れし、打撃を与える作戦である。

心配なのは、「イスラム国」が戦闘を優位に進め、結果的に、紛争地域に出回った大量の武器を手にしてしまうことだ。

「イスラム国」が強大化している背景には、産油国の富裕層などによる多額の資金供与があるとされる。国際社会は、こうした実態を徹底的に解明し、資金源を断つ必要がある。

要員集めの封じ込めも、急がなければならない。過激思想の拡散を防ぐため、ネットに流れた「イスラム国」の宣伝映像の丁寧な削除などが課題となろう。

中東などでテロに関与した人物が、欧米などへ帰国する例が目立ってきた。厳重な監視と摘発が極めて重要だ。

産経新聞 2014年08月23日

「イスラム国」 テロ拡散阻む国際連携を

シリアからイラクにかけて実効支配を広げるイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が、拘束していた米国人のフリージャーナリスト、ジェームズ・フォーリー氏を処刑した。

イラクで米軍が同組織に加える空爆への報復として殺害されたもので、その映像はインターネットで公開された。卑劣で残忍な行為であり、断じて許せない。

フォーリー氏は紛争地取材を重ね、約2年前シリアで消息を絶った。「シリアの人々の苦しみを伝えるため命をささげた」(遺族)氏に哀悼を表したい。

動画は別の米国人ジャーナリストの拘束状態も映し、オバマ米大統領に空爆停止を迫っている。日本人の湯川遥菜さんも同じ組織に捕まっているとされる。

オバマ氏が追悼声明で「米国人に危害が加えられたら処罰する」と、この過激組織に対し断固たる姿勢を示したのは当然だ。

「イスラム国」はシリア内戦で得た勢いでイラクに攻め込み、残虐な恐怖政治を敷いて両国の各3分の1にまで勢力圏を拡大し、レバノンやヨルダンなど他の近隣諸国をも脅かそうとしている。

今回の米国人殺害は、その組織が初めて公然と、米国に対して牙をむいたことを意味する。

「イスラム国」が他のテロ組織と違うのは、両国にまたがる広大な拠点と豊富な資金、兵器を手にしたことだ。欧米などの外国人を戦闘員として多数集めている。殺害を実行した覆面男も、その英語から英国人とみられている。

彼らが強大な組織を背景に米国など出身国でテロ攻撃に出ることは、世界の脅威である。絶対に阻止しなければならない。

そのためには、米空爆とクルド人部隊や政府軍の地上攻撃により「イスラム国」を弱体化させると同時に、関係各国がテロ防止策を強化する必要がある。連携作戦でイラク要衝のダムを奪還したことをその第一歩と歓迎したい。

オバマ氏は追悼声明で「イスラム国」を病巣にたとえ、「除去する共通の取り組みが必要だ」とも呼びかけた。

米政府は外国人戦闘員への対応を協議すべく来月下旬、国連安保理の首脳級会合を開く。フランスも常任理事国とイランを含む周辺国の国際会議を提案する。

国際社会全体で「イスラム国」包囲網の構築を急ぐときだ。

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