福島原発汚染水 リスク減へ知見を結集したい

毎日新聞 2014年08月21日

福島原発汚染水 国の姿がまだ見えない

東京電力福島第1原発2、3号機の海側トレンチ(配管などが通る地下トンネル)にたまった高濃度汚染水対策が難航している。

読売新聞 2014年08月20日

福島原発汚染水 リスク減へ知見を結集したい

東京電力福島第一原子力発電所の汚染水対策が遅々として進まない。

事故収束に向けた当面の最重要課題だけに、政府と東電は取り組みを強化せねばならない。

汚染水は1日300~400トンのペースで増えている。損傷した原子炉建屋に流れ込む地下水が、炉心を冷却する高濃度の汚染水と混じり、汚染されるためだ。

敷地内には約1000基の貯蔵タンクがある。汚染水は既に、貯蔵可能量の55万トン近くに達している。東電は今年度中に80万トン超に増やす方針だが、遠からず足りなくなるだろう。タンクが損傷して汚染水が漏れるリスクも増す。

対策として、東電は5月から地下水バイパスを開始した。建屋の山側にある井戸から、汚染される前の地下水をくみ上げ、海に放出している。だが、期待されていたほど汚染水の増加を抑えられていない。深刻な状況である。

東電は今月、建屋のそばにある「サブドレン」と呼ばれる別の井戸からも地下水をくみ上げ、安全性を確認したうえで、海に流す追加策を公表した。

漁業関係者は、放出による風評被害を懸念している。政府と東電は、安全対策を丁寧に説明し、地元の理解を得るべきだ。

事故の際に漏出した高濃度汚染水が、海岸脇の地下坑道に残っていることも心配だ。1万1000トンにも上る量で、原子力規制委員会は「(海洋汚染などの)リスクが大きい」と指摘している。

そのままくみ上げれば、建屋側から新たな汚染水が流入してしまう。東電は、流入部で水を凍らせ、止水を試みてきたが、うまくいかなかった。別の手法による止水を急ぐ必要がある。

今回の失敗は、凍結の技術的な難しさを浮き彫りにした。

現在、建屋周辺の地下に「凍土遮水壁」を築いて地下水の流入を封じる工事が進んでいる。汚染水対策の切り札とされる。土木工事のノウハウを結集し、着実に作業を進めてもらいたい。

汚染水を浄化する装置「ALPS」を安定的に稼働させるのも重要な課題である。高度な浄化が可能になれば、汚染水を処理して海に放出することが有力な選択肢となるのではないか。

廃炉作業や汚染水対策を、技術的な観点から監視・指導する政府の「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」が18日に発足した。

国内外の幅広い知見、人材を有効に活用し、汚染水対策を前に進めることが求められる。

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