撃墜事件1カ月 真相解明を優先せよ

朝日新聞 2014年08月21日

ウクライナ ロシアは譲歩の時だ

孤立の深まりはロシアに打撃をもたらすだけだ。プーチン大統領はすぐさまウクライナ政策を転換し、世界との協調関係を取り戻さなければならない。

政府軍と親ロシア派武装勢力との間で衝突が続くウクライナ東部では、戦闘による死者が2千人を超えた。半数は、政府軍の攻勢で戦闘が激化した7月下旬以降の死者だ。

298人の命を奪ったマレーシア機撃墜事件も発生から1カ月が過ぎたが、現場付近の激しい戦闘に原因調査を阻まれ、真相の究明は進んでいない。

紛争激化の背景にロシアによる武装勢力への軍事的支援を見る米欧は、撃墜事件の後で厳しい制裁に踏み切った。

しかし、ロシアの政策が変わる兆候は見えてこない。

これ以上の犠牲の拡大を防ぎ、撃墜事件の調査を進めるため、国際社会はいまこそ一層の努力を傾けるべきだ。

折からロシアとウクライナの首脳に欧州連合(EU)の代表らも加わった国際会議が26日に開かれる。それをぜひ、事態打開の第一歩としたい。

ウクライナ東部は、ロシア語を話す住民が多いとはいえ、ソ連崩壊後もずっと深刻な民族紛争とは無縁だった。住民の分離独立志向や、ロシアへの編入願望もさほど強くなかった。

武装勢力は旧ソ連圏の民族紛争にかかわったロシアの元工作機関関係者ら、外部の人員を中心に組織された性格が強い。その結果起きた紛争は、暮らしを荒廃させ、地域の産業を破壊した。住民の支持は確実に減り、劣勢にもつながっている。

ロシアはこうした現状を正しく認識するべきだ。重要なのは米欧も納得できる形で武装勢力への軍事的支援を控え、紛争を収束へ向かわせることだ。

ただでさえ減速傾向が強かったロシア経済は、新たな制裁によって、エネルギーや金融などの基幹産業を中心に深刻な影響を受け始めている。

ソ連崩壊後にロシアは、グローバル化という世界経済の動向を受け入れた。世界と協調することで投資や技術を引き入れ、経済を成長させてきた。

いまプーチン氏は、自給自足的なソ連型経済への回帰すら口にする。だが国際的な孤立は、先端技術をそなえた産業の育成など、資源依存から脱して経済を現代化させるというロシアの重要課題に真っ向から反する。国内から強い懸念が出ているのも当然だ。

ロシア自身の将来のため、プーチン氏はウクライナ政策で譲歩を決断すべき時である。

毎日新聞 2014年08月19日

撃墜事件1カ月 真相解明を優先せよ

ウクライナ東部上空でマレーシア航空機が撃墜され、乗客乗員298人が犠牲になった事件から1カ月が過ぎた。だが親ロシア派武装集団とウクライナ軍の戦闘に妨げられ、国際的な現場調査は中断したままだ。一刻も早く活動が再開できるよう、双方の自制と関係各国による働きかけを改めて強く求めたい。

読売新聞 2014年08月20日

ウクライナ情勢 撃墜の真相究明へ停戦を急げ

ウクライナ東部で298人乗りのマレーシア航空機が撃墜されてから、1か月が過ぎた。

しかし、事件の真相究明は進んでいない。極めて問題である。

国際調査団を主導するオランダのルッテ首相は、「安全が確保できない」として、8月上旬以降、調査団を撤収させている。

親ロシア派武装集団が掌握する撃墜現場や、周辺のドネツク、ルガンスク両市で、武装集団とウクライナ軍が激しい戦闘を続けているためだ。死者は一般市民を含めて2000人を超えたという。

マレーシア当局者は、調査の進捗しんちょく状況を「半分以下」と説明する。犠牲者の身元特定は難航し、未回収の遺体も多いとされる。

ブラックボックスの解析を含めた調査結果は、9月初旬にも公表される予定だが、真相にどこまで迫れるのか、懸念される。

調査を再開させるとともに、民間の死者がこれ以上出るのを避けるため、ウクライナ軍と武装集団は早期の停戦を図るべきだ。

ウクライナ政府が頼みとする欧米と、武装集団を支援するロシアとの相互不信は根深い。

米国などは、武装集団が誤って民間機を地対空ミサイルで攻撃したと指摘し、衛星写真などの証拠も示した。これに対し、ロシアは、ウクライナ軍機による誤射だと主張し続けている。

欧米の不信の根底には、クリミア半島を一方的に編入したプーチン露政権が、水面下でウクライナ東部への軍事的な介入を続け、親欧的なポロシェンコ政権を揺さぶってきたことがある。

武装集団の幹部は、ロシアで長期間訓練された戦闘員1200人と多数の戦車や装甲車が武装集団に加わったと発表した。

ロシアは、ウクライナ東部向けに、大量の食料や医薬品、発電機などの人道支援物資を送った。この援助も、自らの影響力の拡大が目的と見られている。

プーチン大統領は先週、ウクライナ東部の停戦に向けて「できることはすべてやる」と語った。

それなら行動で示すべきだ。武装集団を本格的に説得し、戦闘停止と国際調査団への協力を実現させなければならない。

欧米が7月末に発動した対露経済制裁の影響は、ロシア国内のエネルギーや金融分野で着実に広がりつつある。

この圧力を維持しつつ、ロシアとの協議を重ねて、ウクライナの安定化に向け、事態の打開を図ることが重要である。

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