自国の利益を優先した資源の輸出規制は国際的なルールに反する。その原則が確認された。
世界貿易機関(WTO)は、中国政府によるレアアース(希土類)の輸出規制などが、WTO協定に違反するとの最終判断を下し、中国の敗訴が確定した。
中国は今回のWTO決定に従い、不当な輸出規制を直ちに是正すべきである。
レアアースはハイブリッド車の高性能モーターやスマートフォンなどに使われる貴重な素材で、中国は世界シェア(占有率)の9割超を占める最大の生産国だ。
中国は2010年にレアアースの輸出枠を大幅に削減した。一部のレアメタル(希少金属)とともに輸出税も導入している。
日本と米国、欧州連合(EU)は、こうした措置がWTO協定に違反するとして、12年に共同で提訴していた。
中国は審査で「環境や天然資源を守るための規制だ」などと反論したが、輸出制限の一方で、国内企業への供給は従来通り続けてきた。自国産業を優遇していたのは明らかだろう。
WTOが、輸出規制は保護主義的な措置だとする日米欧の主張を全面的に認めたのは当然だ。
中国はこれまで、自国の資源を外交的な圧力をかける手段としても利用してきた。
10年に尖閣諸島沖で中国漁船が衝突事件を起こし、日中関係が緊張した際は、レアアースの対日輸出を一時停止した。
こうした行為は、特定国に対する差別的な扱いの禁止など、WTOの基本原則に反する。
中国は01年にWTOに加盟し、自由貿易の恩恵を享受しながら高い経済成長を遂げてきた。経済大国としての責任を自覚し、ルールを順守すべきだ。
日本は今後も、レアアースをはじめ希少資源のほとんどを輸入に頼らざるを得ない。外国による輸出規制などで、経済活動が深刻な打撃を受けないようにすることが重要である。
日本の政府と業界はレアアースやレアメタルについて、調達先の多様化のほか、資源権益の確保などを進めてきた。さらなる取り組みが求められる。
使用済みの機器から有用な資源を抽出するリサイクルの促進や、レアアースの代替品の開発などに力を注ぐことも大切だ。
「資源小国」の逆風をバネに、官民を挙げて技術開発を加速してもらいたい。
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