様々なレベルで対話を重ね、双方が歩み寄ったうえで、中国、韓国との関係改善を図りたい。
岸田外相はミャンマーで、中韓両国の外相と個別に会談した。
日中外相会談の開催は約2年ぶりだ。中国が尖閣諸島の国有化などに反発し、会談を拒否していた。楽観は禁物だが、現状打開への一歩となり得るのではないか。
岸田氏は会談後、記者団に「これをきっかけに、関係改善を進めていきたい」と語った。中国の王毅外相は、関係改善について「日本側が誠意を示し、実際の措置をとれるかどうかだ」と述べた。
尖閣諸島について領土問題の存在を認めさせたいのだろう。だが、一方的に日本に「誠意」を迫るだけでは、関係は好転しない。
中国は、11月に北京でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を主催する。今後の焦点は、中国がその際に、日中首脳会談を実現させたいかどうかだ。
議長国としてAPECの失敗は許されない。日本との“絶縁状態”を放置しておけないはずだ。
安倍首相は、APECでの習近平国家主席との首脳会談に意欲を示している。福田康夫元首相が7月に訪中し、習氏と会談したのも、その環境整備の一環だろう。
日中の政治対立は、経済関係に大きな悪影響を与えている。環境問題や食の安全など、日中協力が必要な分野も多い。両首脳は「戦略的互恵関係」の大局に立って、歩み寄らなければならない。
一方、11か月ぶりの日韓外相会談は、対話の継続では一致したが、主張の隔たりは大きかった。
岸田氏は「良好な日韓関係は相互の利益だ」と強調した。
だが、韓国の尹炳世外相は、首相の靖国神社参拝や、いわゆる従軍慰安婦問題に関する河野官房長官談話の検証に言及し、「両国関係は損なわれた」と批判した。
慰安婦問題などで「日本の政治リーダーが知恵と政治力を発揮してほしい」とも要求した。日本側だけに譲歩を求める強硬姿勢は、今回も変わらなかった。
日韓関係の悪化は、李明博前大統領の竹島訪問や朴槿恵大統領の反日姿勢など、むしろ韓国に起因する面が大きい。日本に一方的に問題解決の努力を期待するのは、無理があろう。
日韓間の溝を埋める努力は双方に必要だ。北朝鮮の核・ミサイル問題が深刻化する中、米国は一貫して、日韓関係の改善を強く求めている。日韓自体が地域の不安定要因になってはなるまい。
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